第7話
あまりにも唐突な発言に、そこにいた誰もが困惑した。愛香ちゃんが「何かあったんですか?」と尋ねた。早乙女さんは「特に何もないですけど…」と、明らかに何か隠しているような言い方をしていた。
そのことに対し、ある人物が怒った。蟹江さんだ。
正治「何も無い?ふざけたことを抜かすな!なんで俺たちがそんなことをしなければならないんだ!説明しろ!」
それでも、早乙女さんは黙っていた。
正治「何か言えよ!それとも、何か言えない理由でもあるのか?お前が蠍火を殺して、そのことを外部に漏らさないために、俺たちから連絡手段を取り上げようとでも思ったのか!?」
怒号を受け、早乙女さんはようやく口を開いた。
奈緒子「私は殺していません。ただ、言われたようにしただけです」
智恵「言われた?一体誰から?」
弓木さんがそう言った。それに対して、早乙女さんは想定外なことを言った。
奈緒子「あまり詳しくは分からないのですが…自分のことを侵略者(インベーダー)と名乗っていました」
侵略者…今回の事件の犯人だろうか?あまりにも唐突な発言に理解ができなかった。きっと、他の人たちも同じだろうと思っていた。しかし、その予想を上回ることをする人がいた。
花「そういうことね。じゃあいいわよ。はい、預けるわ」
航平「アンタ何してんだ!?」
魚川さんが驚いた様子でそう言った。もっとも、私だって驚いたし、他の人たちも何となく同じように思っていただろうという態度だった。
そんな空気を無視するかのごとく、水田さんは話をした。
花「あら、そんなに怖いの?蠍火が死んだのは事実だとしても、私が殺される確証なんてどこにもないわ。そもそも、自分のことを侵略者と称するような奴が、ここまでバラされたのに殺人を繰り返すわけがないのよ。そういうことだし、皆もさっさと預けちゃいなさいよ」
彼女に諭されてしまう感じで、全員が預けることになってしまった。それでも危険な状態ではあったのだが、ここからがさらなる危険を招くことになった。
その原因は、日辻さんだった。おそらく、誰も顔を挙げることすらままならない空気に嫌気が差したのだろう。
慶太郎「一度、自分のコテージに戻って落ち着きましょうか」
その一言のせいで、一人、また一人といなくなってしまった。
メインコテージに残ったのは、私、一織ちゃん、愛香ちゃん、計さん、牛飼さんの五人だった。長い沈黙を経て、計さんが事件の確信に迫ろうとしているようなことを言った。
一輝「蠍火さんの死亡、何か意味を隠していそうですねぇ」
一織「意味?」
一織ちゃんが疑問を持った言い方で返した。
一輝「そうです。意味です。あのコテージがスコーピオン、すなわちさそり座で、足には注射器。あれが毒薬入りのブツだったら、『サソリに刺された』という風に連想できます。つまり、十二星座に見立てた殺人の可能性があるのですよ」
理解が追いつくことはあまり嬉しくないのだが、一切の根拠がないわけではないため、納得できてしまった。そして、私の頭に嫌な考えがよぎった。もし連続殺人が起きたら、他の星座に見立てた犯行をするのだろうか。
計さんの持論により、メインコテージという密室で緊迫した空気が流れた。そういえば、現場のコテージも密室だった。
どうやって蠍火さんを殺したのだろうか?本当は侵略者は関係なくて、他殺ではなく、蠍火さんによる自殺なのだろうか?考えをまとめる余裕を失った状態で、そんなことを考えてしまった。
こんなことばかり考えてしまう自分が嫌いになりそうだった。
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