第6話
次の日になり、人員点呼とかいうことをすると言われた。やることは、コテージを全て回って、起床時刻ということを伝えるだけだ。点呼とは何なのか。
人員点呼の担当は私と計さんになった。とりあえず、参加者七人のコテージをひとつずつ
回って、起床時刻になったと報告をしに行くことにした。
「○○さん、おはようございます。起床時刻になりました」という定型文を何回も言うだけの仕事だ。だから、最初の何人かは何とかなった。水田さんや蟹江さんが、寝起きで機嫌が良くなかったことぐらいか。
しかし、とあるコテージで事件は起こった。まるで起きてこない。どれだけ力強くドアを叩いても、どれだけ大きな声を出しても、まるで起きてこない。むしろ、うるさくしすぎて他のコテージの人が起きたぐらいだ。
どう考えてもおかしいと思った。どうしようもないから、ひとまず窓から中の様子を見ることにした。それでもだめだった。カーテンが閉められていて、中がほとんど見えなかった。
それでも、何とか中を見ようと試してみた。そして、ある事実に気がついた。カーテンに血がついていた。
驚いた私は、その場で転んでしまった。その一方で、計さんは余裕があるような態度をとっていた。反応こそ全く異なっていたが、二人の考えていることは同じだった。何とかして中に入らなければならない。
急げ、急げ、急げ。自分に言い聞かせた。ゆっくりしている余裕がない。もし中で何かが起こっていたら、取り返しがつかないかもしれない。私たちはメインコテージへ戻った。そして、早乙女さんを呼んだ。
響「早乙女さん、コテージの鍵、まとめた鍵束持ってますよね」
奈緒子「鍵?どうしていきなりそんなことを?」
響「いいから早くしてください!」
私はすっかり冷静さを欠いていた。
何も理解していない彼女のことなど気にもせず、ほとんど無理やり着いてきてもらった。焦りからか、それとも往復で疲れたのか、私は息が荒くなっていた。
早乙女さんに鍵を開けさせると、私、早乙女さん、計さんの三人でコテージへ入った。この時までは、予感が外れることを期待していた。
コテージの中は、さほど散らかっていなかった。財宝のようなものや、サボテンの苗など、コテージのモチーフとなるものはいずれも残っていた。ただそれだけにすぎなかったが。
私たちは、本人の様子を見るため、ベッドの方まで近づいた。そのせいで、惨状を直接目に焼き付けてしまった。
カーテンの下に、足に注射器を刺された死体が転がっていた。スコーピオンの宿泊者で、ツアーの参加者、そして舞台監督の蠍火 冬二だ。
何を思ったのか、私は近寄って、その死体に触った。すっかり冷えきっていて、もう助からないという事実だけを押し付けてきた。
星座山に悲鳴が響き渡った。その声を聞いて、気になって後をつけていた人たちが、続々と中に入ってきた。全員が死体を目にした。
誰も、何もできないという絶望感、人が死んだという現実が全員の心を殴ってきた。それだけの影響を残した。メインコテージに戻ることにしたが、誰も言葉を発さなかった。
そして戻ったところで、早乙女さんがいきなりこんなことを言い出した。
奈緒子「皆さんのスマホを、私に預からせてください」
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