第5話
ツアーの参加者について考えていたら、かなり時間が経っていたらしい。一織ちゃんに「今から夜ご飯作るみたいですよ」と呼ばれてしまった。
それだけの時間をかけても、不穏な考えしかまとまらなかった。しかし、その予感は当たってしまうのだ。行く先々で事件が起こるあたり、何かしらの呪いを抱えている気がしてならない。
私がメインコテージに着いたころには、他の人たちも集まっていた。ただし、私も決して遅刻はしていなかったらしい。要は、他のバイトの人たちが集合より大分早めに集まっていたということだろう。
そして、私が来たことを確認して、早乙女さんは私たちに指示を出した。もっとも、昼食の時と同じような作業だったため、あまり苦労はしなかった。
そういうこともあってか、かなり早いペースで夕食を作り上げた。この調子ならこれからのバイトも大丈夫だろう、と自信が湧いてきた。
その後は参加者のコテージをまわって、全員を集めたところで夕食開始だ。自分で言うのもあれだが、かなりいい出来だったと思う。
そして、ここであることがわかった。今回のツアーの参加者たちの関係性だ。夕食の時に参加者たちの会話を聞いていると、流れるような感じで言っていた。
冬二「いゃぁ〜慶太郎くぅ〜ん、よくこんなツアー見つけたねぇ〜」
慶太郎「そんな大したことはないですよ、蠍火さん。本当にたまたま見つけただけですので」
沙英「それでも、私たちの関係性を深める良い機会だと思います」
航平「そうだな。ありがとうな、日辻」
花「せっかくの旅行なんだし、楽しまなきゃ損よ」
智恵「そうそう。じゃ、乾杯といきましょうか」
正治「では、ここはこの天体サークルのリーダーである私が 仕切らせてもらおう。乾杯!」
ということで、天体サークルの仲間同士という関係性らしい。随分と仲が良さそうに見える。それにしても、天体サークルとは何をするのだろうか?横で聞いていてふと気になったが、正直わざわざ聞かなくてもいいかもしれない。
そんなわけで、楽しい一日目の夜も終わりに近づいていた。そうするとどうなるのか?それはもちろん、人が死ぬということだ。
夕食も終わり、私たちは食事の片付けをしていた。その時まで残っていたのは、日辻さんと牛飼さんぐらいだった。他の人たちは先にコテージに戻ったそうだ。
一輝「皆さん、年齢も職業も違うみたいですが、どうやって集まったんですか?」
沙英「私たちは、SNSを使って集まってます」
慶太郎「僕はたまたまSNSで天体観測仲間を探していた時に見つけたので、まさかこんなに年上だとは思いませんでしたね」
その後も私たちバイトと2人とで話をした。早乙女さんは途中までいたのだが、気まずそうな様子で自分のコテージへ戻っていた。
話をして分かったのだが、どうやら牛飼さんも参加したのは日辻さんと一年程度しか変わらないらしい。他のメンバーは、牛飼さんが参加する大分前からの知り合いらしいが、詳しくは知らないそうだ。
話しているうちに、すっかり日付も回ってしまった。ひとまず寝ることにして、一日目は解散した。
その帰りだった。私は早乙女さんを見た。こんな夜遅くに何をしているのか、どうしても気になってしまい、近くに行った。誰かと電話をしているようだった。
奈緒子「えっ、本当に今からやるんですか!?……そうですか…」
彼女は明らかに困惑していた。
奈緒子「…なんですか?……そんなこと、私が出来るわけ……っ!?…………分かりました」
彼女はそう言って、電話を切った。どことなく不安を感じているようだった。
盗み聞きした程度だったから、具体的な内容なんて、何も分からなかった。どうせなら分からないままでいたかった。
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