第2話

「ナツ……クロに何を飲ませたの……」

「え? たまたま冷蔵庫に入っていたものをミキサーで混ぜたんだよ! 栄養ドリンクに、スポーツドリンクとゼリー、あとネギと生姜とそれからあの薬草!」

「薬草……? ナツ、危ない事するね。あれは――」

「分かってるって。あれが消えたはずの記憶が戻る可能性があるものだって理解して混ぜてるよ。でもさ、本当に危ない部分は中心の核の部分のほんの一部だよ。クロのためとはいえ、記憶を抑え込む為だけにクロがこんなに苦しい思いをしているのはどうなのよ」

「保険よ保険……。いざというときに大事な記憶を思い出しちゃうといけないでしょ……? だからどうでもいい記憶もまとめて消してるの……。問題の部分「のみ」の記憶を消しただけだと、ふとした瞬間に記憶が戻る時、高確率でクロはまた危ない状態に逆戻りよ……。周りの記憶もまとめて消すことによって、ふとした瞬間に記憶が戻ったとしても、一気に核の部分まで記憶が戻る確率は格段に下がる……。これはナツと一緒に確認したことでしょ……」

「でもちょっとくらい良いじゃん。そもそもさ、フユだって入れてるんでしょ?」

「入れてるって何を……?」

「しらばっくれなくていいよ。ハンバーグに何か入れたんでしょ。昼に動けなかった人間が、夜になって突然歩けるようになるわけ無いじゃん。ナツ、びっくりしたんだからね。眼の前にクロが居た瞬間、偽物だと思ったよ。いや、偽物だと思うことが普通じゃん。なのに、フユはクロを本物だと言い切った」

「……ナツも賢くなったんだね」

「任せてよ。で、何入れたの」

「……洗剤」

「フユ、嘘つくならまともな嘘をついてほしいかも」

「……記憶の洗剤」

「本気?」

「うん……」

「なにそれ。聞いたこと無いけど」

「洗剤はあくまで比喩……。ちょっとした化学物質だよ……」

「作ったの?」

「フユは作り方わからない……。記憶の洗剤はマスターがくれた……。あの眠っている黒髪少女が起きた時、もし人間活動に支障が出ていたら使ってほしいって……。ピンポイントで汚れた記憶を洗い流せるから……。でも貴重だから使い所は考えるようにって……」

「ナツはそんなの聞いてない」

「マスターからの信用じゃない……?」

「ナツはこんなにもマスターのことを信頼してるのに?」

「信頼だけじゃどうしようも無い時はあるよ……。記憶の洗剤だって、使い方を間違えたら記憶がリセットされる代物だし……」

「マスターにはナツが不器用に見えてるってわけ?」

「そうかも……」

「不当な評価だ!」

「運動は出来るんだから、そっちで頑張りなよ……」

「面白くなーい!」

「困った子……」

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