第40話 デート・プラン

 その後、私はバイリィの勧めるがまま、様々なものを食べて歩いた。


 パリふわの生地の野菜パイのようなものや、肉つみれの入ったあっさりスープ、モチモチの皮の中に甘い果物が入った饅頭もどきなどなど。


 総じて、一口目はその独特な味付けに面食らったものの、食べ進めていくうちに旨さがわかり、結果的には満足だった。


 胃袋のキャパがいっぱいいっぱいになりかけた頃、腹休めとして、野外に椅子と机を置いた喫茶店に立ち寄り、我々はそこでお茶を飲んだ。


 私は口の中をリフレッシュしたかったので、ミントのようにスーッとするお茶を頼んだ。バイリィは、どぎつい甘い匂いを放つ、どろりとしたお茶を、美味そうに飲んでいた。


 私は言った。


「なんだか、申し訳なくなるな。こんなに、食べ物や飲み物を提供してもらって。君に、どんな対価を支払えばいいか、わからない」


 バイリィは言った。


「気にしないでいいよ。あたしにとってみれば、こんなの、タダ同然なんだし」


「しかしだな」


「イナバだって、あたしに、珍しいお菓子とか食べさせてくれたじゃん。それと同じだよ」


 バイリィが本当に何も気にしていなさそうであったので、私もこれ以上、彼女に罪悪感を感じるのはやめることにした。


 過剰な罪悪感は、時として反転し、刃になることもある。過去の恋愛経験から学んだ教訓の一つである。


 相手がそれでいいというのなら、その意見は尊重すべきだ。


「そうか。ありがとう」


 私はそう言って、静かにお茶を飲んだ。


「次は、何食べたい?」


「いや、もう胃に何も入らん。たくさん食べたよ」


「あ、そう?」


 バイリィは少し物足りなそうな表情をしていたが、私の意見は尊重してくれるようだ。


 彼女は、にんまりと笑って言う。


「それじゃあ、そろそろ、あたしの一番オススメのところに連れて行ってあげようかな」


 いかにも聞いてほしそうな目線であったので、私は合いの手を入れた。


「どんな店なんだ?」


 焦らすように、彼女は茶を一服してから、言った。


「符を、売ってるお店!」


 どうやら、この世界の本屋のようである。

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