最初に挑む者

はるむら さき

最初に挑む者

大昔。空と海には境目がなかった。

それは「あお」と呼ばれていた。

「あお」に住む鳥たちは、上を下を、縦横無尽に、てくてく、どたどたと移動していた。

そんなことだから、彼らはしょっちゅう、あちらでこちらで、ぶつかりあって、日課みたいに、たんこぶを作っていた。

ある日、一匹の鳥が言った。

「〈あお〉を上と下の二つに分けて、それぞれに道を作ろう。そうすれば、このたんこぶも減るかもしれない」

みんな、それに賛成して、すっぱり真ん中辺りで線を引いた。

そうして「あお」の上を「空」、下を「海」と呼ぶようにした。

多くの鳥たちは「上の方が遮るものがなくて良い」と、空に住むことを決めた。

だがその時「全員が上に移動しては意味がない。ぼくは、下に住もう」と言って、勢いよく海に飛び込んだものがいた。

もちろんその鳥の名は、ペンギンだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最初に挑む者 はるむら さき @haru61a39

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ