不穏な気配…はしなかったわ!!ごめん!

ショーテルが夢の中に居る時、家の外で足音が聞こえる。

「…ここらへんに…あれ…?」

コツコツと硬質な靴を履いているのか結構デカイ足音が聞こえる。めっちゃ近所迷惑…。

「…流石にもう居なくなってるか…?」

ブツブツ独り言を言って何処かへ行く。

と思ったら懲りずに家の周りをぐるぐる回る。

「流石に…迷惑か。」

その通り。とても迷惑だ。すでにところどころ明かりがつき始めている。

それに気づいたのかビクッと体を震わせて靴を脱ぎ、静かに、小走りにその場を去る。


朝。近所の人の話の中心人物はショーテルから深夜にいた怪しげな男の姿だ。

目撃情報も多数ある。ざっとまとめると

体格的に男で、髪の毛はボサボサ。気配的に底辺スキル。

この3つの情報が出ている。


そんなこともつゆ知らずショーテルは魔法使いのようなローブを着て朝食を食べる。

今日のご飯は、サクサクとしたクロワッサンっぽいなにか。

パルフェがいなくなってすっかり食欲が減ってしまったらしい。

不意にコンコン、とドアを叩かれる。

朝からなんだよ…と思いながらも「はーい」と返事をして玄関に向かう。


カチャッ


ドアを開けるとパーレが一人。

「朝早くからすみません…。護衛隊に入りたい方が朝早くに私のところに来たので、お知らせに参りました。」

新人が1人来たことを喜ぶべきなのに、ショーテルは素直に喜べない。

理由は明確だ。

「パーレさん。」

「…はい?」

「なんで嬉しそうじゃないんですか?」

「実は…」


天の声がパーレが言いたいことをまとめるねっ

1.朝からストーカーまがいのことをされて消耗してしまったから。

2.その犯人が新人だったから。


「…大変でしたね。」

「今もつけられている気がして…。」

その時コンコンッドアをノックする音が聞こえる。

「はーい」

「ショーテルさん。気をつけて。」

それだけ言うと目の前にあるクッキーをかじる。

「…美味しすぎる…!!」


ガチャッ


「貴方が採掘師のショーテルさん?」

20代男性のごくごく平均の背丈。

顔はパーカーのフードで見えない。

声は少し高め。

わんこ系の可愛らしい声だ。犬耳がついててもおかしくな…おっと失礼。

「そうだが…。お前は?」

「申し遅れました。僕はトラッカと申します。」

パーレさんがひょこっとショーテルの後ろから出てくる。

「ショーテルさん。この子です。入社希望者」


話をしていくとトラッカ…通称「トラ」の人物像がわかってきた。

性別は男。

年齢は23歳

スキルは「追跡者」周りにある不穏な気配を感じ取ったり探している人の気配を辿ったりすることができる。真偽は不明。

ちなみにショーテルの家の周りを探っていたのはこいつだ。

犬系男子で甘え上手。

ボサボサというよりかはふわふわとした髪の毛で、白に近い茶髪が似合うかわいい男子だ。


「んで、パーレさんを追っかけ回した理由は?」

「その節は本当に恥ずかしい…。」

「で?理由は?」

パーレの圧がすごい。

「…風の噂で護衛隊のことを知り…。その…僕は底辺スキルなので働き口も探そうにも探せないし…。」

「なるほどね。つまりは護衛隊の設立者。私パーレに話をして雇ってもらおうとしたのね。」

「面目ない…。」


不意にぴょこっとトラの髪の毛の一部が立った。

「なにか…不穏な気配が…?」

「「!?」」

ショーテルとパーレは素早く身構える。

1分…2分…5分…7分…

いつまで経っても不穏な気配の主は現れない。

「あ。」

トラが声を上げる。

「僕の勘違いみたい!!なーんかごめんね!」

二人の目に一瞬の殺意が宿った。


初めてのショーテルの後輩…同期?はとても曲者でとても可愛かった。

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