壁を越えて⑥

ランチャーの砲撃が止み噴煙が立ち込める。その向こうに微かに見えるドラゴンを凝視しながら、近くの瓦礫に隠しておいた手持ちのランチャーの弾丸を装填。さらに予備の弾丸の入ったケースを左肩にかける。


立ち込めた噴煙が徐々に薄くなり始め、ドラゴンの姿がハッキリと見え始めた。


刺さったアンカーのほとんどが爆発と、爆発によってドラゴンが暴れた衝撃で外れてしまっている。その代わり両足にはかなりのダメージが入ったようだ。遠目でも分かる程、表面の装甲は吹き飛びボロボロになっているのが見て取れる。


ドラゴンは2度、大きく頭を左右に振り、両足にグッと力を込める。そして今度は全身を捻じるように激しく暴れた。それと同時に全てのアンカーを外す事が出来たが、そのままバランスを崩しよろめいた。ダメージが蓄積した両足ではその衝撃に耐える事が出来ず右斜め前の地面に顔から突っ伏した。


よし!これなら足へのダメージは十分だな!手持ちのランチャーはまた頭に叩き込もう!


そう、これ以上両足を破壊する訳には行かない。このポイントの目的は両足を適度に破壊して走る速度を落とす事。自分で走って次の最終ポイントまで移動してもらわないと困るんだ。


おそらくドラゴンはいくらダメージを受けてもボクを追う事を止めないと思う。こんなちっぽけなアライフに自分が負けるなどとは夢にも思っていないはずだ。

このドラゴンも夢って見るのかな?まぁいいや。


とにかく次のポイントまで追いかけつつ、でも追いつけず、ついでに攻撃を受けつつ、で来てもらわないと困る訳だ。

そうなるとこれ以上両足を狙う訳にはいかない。後はボディと頭に攻撃を叩き込むだけだ。


足取りはだいぶ重くなったが、まだまだ元気に追ってきている。


よぉし、いいぞぉー。その調子ー。


ボクも全速力で逃げる。ほんの数分走り振り返ると、たったそれだけで十分な距離が離れた。

これは思ったよりも足にダメージが蓄積してるなぁ。

それでもドラゴンは追ってくるのを止めない。自分が負けると言う発想は微塵も無いみたいだ。


十分な距離を確認後、振り返りまたランチャーを全弾発射。もちろん狙いは頭部一択。


もうそろボクも落ち着いて来たからか、初弾が見事ドラゴンの眉間に着弾。それに続き残りの5発も全て頭部付近に着弾。初弾の爆発に全ての弾丸が誘爆した。


ドラゴンは少しよろめいたがすぐに怒り全開の咆哮をあげたかと思うと、弾かれた様にこちらへ向かってダッシュして来た。


もちろん想定内。慌てず、焦らず、次の弾丸をセット。そうこうしてるうちに距離はだいぶ縮まったが大丈夫。ボクは振り返り、またしても全力疾走。数分後振り返りランチャーを全弾発射。もちろん全弾命中だ。


それでもまだまだドラゴンの活動を止めるには至っていない。

大丈夫大丈夫、想定内。


次の弾丸はもう持っていない。もちろん振り返り全力疾走。次は最終ポイントの少し手前、そこに必要な物がある。

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