壁を越えて④
静かにドラゴンが地面に落ち着くのを待つ。いつもの様に丸くなって地面にうずくまったら戦闘開始だ。
いつでも設置型の罠を起爆出来るように凝視する。ここらかの遠隔操作で発動させるから、タイミングは重要。罠はSAと同期してるから、特に体を動かさなくても起爆出来るけど、なんとなくこめかみに右手の人差し指と中指を当てる。必要無いんだけどね。なんか様になる。
ドラゴンが静かにうつ伏せに。
ゆっくりと頭を下げる。
翼を小さく折りたたみ、なんとなく全体が縮まって見える。
そして頭を巻き込む様に左の肩の下に潜り込ませる。
いつもの様に。
今だ。
SAと同期してある設置型の罠を起爆。
それまでほとんど音の無かった周辺にけたたましい爆発音が轟く。
それに驚くアライフはこのドラゴンだけ。後この爆音を聞いているのはボクだけだ。
それはまさにふたりだけの戦闘開始を告げる合図だ。
ボクはまだ隠れている瓦礫から身を乗り出さない。おそらくドラゴンは今、何がどうなってるかすら理解してないだろう。
さらに仕掛けた罠を起動。少し離れた場所に設置したランチャーだ。
それは全部で5つ。ドラゴン目掛けて一斉射撃開始。またしても空気が震えるほどの爆発音が鳴り響く。
ランチャーの設置場所はドラゴンの左側面。今ボクが身を潜めている方角。そこからの一斉射撃。狙いはひとつ、ドラゴンの左翼だ。
このポイントでの目的はドラゴンの左翼を機能させなくする事。おそらく片方でも翼が機能しなくなればバランスが取れずに空へ飛び上がる事は出来なくなるはずだ。空から攻撃されてはこちらがかなり不利。まずは地上戦に持ち込まないと。
着弾から約10秒。爆発によって生じた煙が風に乗って少し薄くなる。
そこから見えたドラゴンの左翼は確実にダメージを受けている。
いいぞ!いけるな!
ボクは瓦礫から飛び出し、手持ちのランチャーを構えダッシュ。すぐさま射程圏内に入り左翼目掛けてランチャーを打ち込む。
このランチャー、連射はそんなに出来ないけど、着弾してから約5秒後に爆発する。その際近くにある他の弾も一緒に誘爆する。
初弾が着弾。
それが爆発するまでに3発近くに着弾させた。
そしてまた、空気を震わせながらランチャーの弾が一気に爆発した。
この手持ちのランチャー、かなりゴツイ。右腕で抱え込む様に持ち上げながら、さらに左手で上部に付いているバーを引き上げないと構える事が出来ない。なので打ちながら移動するのはちょっと苦しい。
初弾が爆発してからドラゴンは少し暴れたがすぐに体制を整えつつある。さすがはこの辺最強のアライフだ。
2、3度両翼をバタつかせたかと思うと1度ギュッと身を縮めた。
その後すぐに怒りをあらわにして両翼を勢いよく広げ、天を仰いで大きな雄叫びをあげた。
周辺の空気がビリビリと震えたのがSAの外殻からボクの脳へ電気信号となって伝わってきた。
だけど怯んでる場合じゃない!
自分が圧倒されていた事に気が付き、ハッと我に返る。すぐさま次の弾をランチャーに込める。このランチャー、威力はすごいが1度に装填出来るのはたったの6発。焦ってたせいか最初の6発の内、4発しか当てられなかった。
次は!全弾!
再度左翼目掛けてランチャーを発射。反動でブレた照準を1発毎に修正しながら全弾左翼に打ち込む。
今度は6発全て左翼に命中。6発目が着弾するのと同時に初弾が爆発、6発全てが誘爆し辺りはまたしても煙に覆われた。
どの程度ダメージを与えただろう?
その確認をする前に次の弾を装填だ。
焦らず、確実に、だ。
手間取る事も無く無事に装填完了。まだ煙はドラゴンの左翼付近に漂ったままで確認出来ない。けどこれから移動を開始しなくては。ドラゴンを次のポイントまで誘導しながらさらにダメージを与えなきゃならない。
とりあえずドラゴンの前面に走りながら遠巻きにドラゴンのダメージを確認。
よし、思ったよりも左翼を破壊出来ているな。これならさすがに空へ飛び上がる事は出来ないだろう。
うん、たぶん大丈夫。
てことはここから地上戦。まずは次のポイントまで可能な限りランチャーを打ち込みながら誘導だ。
大丈夫、こいつは意外に走るのは遅いんだ。ちゃんとリサーチ済みだからな。
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