壁を越えて③
幸運な事にアライフには1体も遭遇しないで済んだ。日頃の行いだな。今日はツイてる。
順調に来れたお陰でドラゴンはまだネストで寝てる。見つからないようにかなり距離を置いてスコープで見張る。おそらく後10分程度で狩りに向かうんじゃないかな?
その間、じっと見つめててもしょうが無いので、後ろのショッピングモールを観察してみる。
よく考えたら肝心のショッピングモールをほとんど調べて無かったな。
外観はかなり良い状態に見える。崩壊もそれ程進んでいない。さすがに窓ガラスは割れている所も多いが、それも全てって訳じゃない。ボクが今まで見てきたどの建造物よりも原型を留めている。というより、これはもしかしたら内部は動力すら生きているのでは?
それもこのドラゴンのお陰だろう。かなり前からここをネストとしていたため、他のアライフ達がここで戦闘する事が無かったんだろう。さすがにこのドラゴンに敵うアライフは居なかったんだろうな。そして何より、ドラゴン自身がショッピングモールに興味を示さなかった事が大きい。ボクなら絶対ショッピングモールの中にネストを作るんだけどなー。
羨望の眼差しでショッピングモールを見ていると不意にドラゴンの首が持ち上がった。
少し首を左右に降ったかと思うと、気怠そうに立ち上がった。
「よし、きたこれ」
思わず言葉が口に出た。聞く人なんて誰も居ないけど、誰にも聞こえないようにすごく小さな声で。
ドラゴンはゆっくりと天を仰いだと思うと、いきなり凄い勢いで一度翼を羽ばたいた。
それは空へ飛び立つにはおそらく必要無い動作なのだろう。でもこれは周囲に自分と言う存在を知らしめるために必要な動作なんだろう。つまり威嚇だ。
その後はあっという間だった。両翼に付いている、左右それぞれ2対、計4個の噴射口から爆発的な空気を吐き出しその大きな体を一瞬で空高くはね上げた。
上空で一度、ゆっくりと旋回した後、東の方へ飛び去った。
よし。ここから約3時間はこのネストへは戻ってこない。最後の仕掛けをこのネストの、それもドラゴンがいつも眠る位置、つまり一番油断する場所へ設置しなくては。
大丈夫、時間にはかなり余裕を持っているはずだ。
ドラゴンのネスト、それもピンポイントでドラゴンが寝る場所の地面に設置型の罠を設置。
それから向かって右手側の地面に、やや斜め上に向けてランチャーを3個設置。そのままそのランチャーから後方、ドラゴンのネストの対角線に下がり小さな建物の瓦礫に身を隠した。ここからならダッシュすればすぐに手持ちの武器の射程まで移動出来る。
後はドラゴンの帰りを待つだけだなー。
思ったよりも作業が順調に進んだおかけで、設置には1時間しかかからなかった。まぁいい事だけど。
暇だなー。
ショッピングモールの外観も十分見たしなー。
とりあえず今は待つしかない。ドラゴンが戻ってきたらすぐに戦闘開始。緊張感はほどほどに持っていないと。
ドラゴンのネストをじっと見つめながら待ち続ける事約2時間。几帳面なドラゴンはほぼほぼいつも通りの時間で帰ってきた。
まさにいつもの定位置に降りようとしている。予定通り罠を設置したど真ん中に。
ボクの中は緊張と興奮でいっぱいになった。
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