最後の椅子

むかしむかし、世界にはたくさんのイスがありました。

ひとりにひとつ、えらい人はふたつ、みっつ。


お金持ちのイス。

えらい人のイス。

わるい人のイス。


イスはどんどん増えていきます。

置ききれなくなった人々は地面に穴を掘ります。

海に船を浮かべます。

空に家を打ち上げます。


ある時イスは減っていきました。

少しずつ、少しずつ。


最初に空の家からイスが無くなりました。

次に海の船からイスが無くなりました。

次に地面の下のイスも無くなりました。


お金持ちのイスも。

えらい人のイスも。

わるい人のイスも。


そしてとうとうイスは最後のひとつになってしまいました。そのイスに座ったのは新しい人。

その人はひとりぼっち。

窓の外を見ても誰もいません。

その人は天井を見上げます。そこには満天の星。


その人は気がつきました。


『そうか、ひとりぼっちだから悲しいんだ』


そしてその人はつぶやきます。


『新しいイスを作らなきゃ』

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