初陣⑧

何が何だか分からないまま、いきなり質問。なんだこれ?

でもちょっと落ち着いてきたぞ。


女型のSAはやはり華奢なボディ。そして巨乳。おそらく本体の体型に似せて作られているのだろう。それはボクのSAと同じ理由だ。肩から背中には黒いマントの様な装備を付けている。あれにもたぶん何かしらの機能があるのだろう。ただの飾りには思えない。そして頭部の髪型のアクセサリー。あれもおそらく頭部を保護するフォトンフィールドが仕込まれているんだろう。お母さんのSAもそうだった。機能とオシャレを兼ね備えてるって言ってたな。


呆然としながらジロジロ見てるボクにもう一度聞いてきた。


「聞こえなかったのか?それともスピーカーが故障しているのか?もう一度聞く。お前は『最後の椅子』について何か知っているか?」


最後の椅子……?


「最後の椅子って……あのおとぎ話の……?」


「そうだ。お前が言う、おとぎ話の最後の椅子だ」


「え……?だってあれって……お話の中の物なんじゃないの……?」


女型のSAは静かにフォトンソードを腰に戻す。


「そうかも知れない。でもそうじゃ無いかも知れない。お前は実在する最後の椅子を見た事があるのか?それとも実在しない証拠を見た事があるのか?」


確かに。どちらも見た事は無い。でもあんなお話に出てくる様な物、本当にあるの?


「まぁいい、何も情報が無いなら用はない」


女型のSAはくるりと背を向けた。


「あっ!ちょ……!」


「なんだ?」


女型のSAは頭部だけ振り返る。


「あっと……、とりあえずありがとう」


「別に。必要がありそうだったから邪魔なアライフを排除したまでだ」


「いや……でも、とにかく助かりました。」


ボクはちゃんと頭を下げた。


「んで、『最後の椅子』を探しているんですか?なぜ……?」


女型のSAはまたボクの方に向き直り聞く。


「お前は何のためにSAで世界を歩く?」


「え……?いや、なんでって……」


「私は生まれ、今も生きている。ただ命を長らえる事に意味があるのか?生きる事、それには理由が必要だと思った。なんでも良かった。私は最後の椅子を見てみたいと思った。その瞬間から、私の生きる理由は最後の椅子を探す事になった。だから今も生きている。生き抜く力もつける。そしてまた少し最後の椅子に近づく。それが私の生きる、と言う事だ」


「生きる理由……?」


「お前には無いのか?生まれたから仕方なく生きる、では無いだろう。お前は、何のために生きるんだ?」


………………。


沈黙が答えになったようだ。女型のSAはまたボクに背を向けて歩き出した。


ボクはただ、それを呆然と眺めていた。


生きる理由……考えた事も無かったな。


「とりあえず美味しい食べものとふかふかの布団かな」


何より今はネストに帰らなきゃ。

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