初陣⑦
ゆっくりと距離を詰めてくる。もはや自分が負ける事は無いと確信しているからだろう。残念ながらボクもそう思ってる。
なにか……、どうにか……。
辺りを見回してみる。でも瓦礫が転がってるだけだ。
そうこうしてる間にアライフとの距離は近くなってくる。
後少しで……さっきのアライフが飛び掛って来た位置まで到達する。
くそっ……。
アライフの歩みが一段とゆっくりになり、ほんの少し体を沈みこませた。
その瞬間、弾かれたように飛び上がり襲いかかって来た。
一瞬だった。瞬く間にアライフの鋏が目の前まで来ていた。
反射的に右腕で防御した。なんの意味も成さないのは分かっていたけど。
鋏が間近まで迫り、挟まれるその直前に目の前のアライフが左方向に激しく吹っ飛んだ。
「???」
何が起こったんだ?とりあえずアライフは吹っ飛んだ。その吹っ飛んだ先を見てみると地面に転がるアライフ、そして1体のSAが立っていた。
吹っ飛んだアライフはおそらくこのSAに攻撃されて吹っ飛んだのだろう。何を食らったかは分からないけど、たぶん接近戦用の鈍器、もしくは格闘技で吹き飛ばされたのだと思う。
そんな事より今はSAの方に意識が集中している。
お父さんとお母さんのSA以外のSAを見るのは生まれて初めてだ。
そのSAはどことなく華奢に見えて全体的にパーツが細い。顔立ちもフォルムも女性を模した物なんだろう。何より頭部についている頭髪のアクセサリーが長く、柔らかくしなやかで美しい。そして腰辺りのくびれと臀部のパーツの丸みを帯びたフォルムと胸の辺りの膨らみは女性そのものだ。お母さんのSAより巨乳だな。やっぱそうだよな。
そのSAは驚きの表情のまま見とれているボクに一瞥をくれただけですぐに寝転がるアライフに向き直り、腰に装着していた装備を右手でを抜く。
右手を薙ぐように左上から右下へ振り下ろすと、フォン……と言う独特な音と共にフォトンの刃が伸びた。
咄嗟に身の危険を感じ取ったアライフは間髪入れずに跳ね起き、両手の鋏を最大限に開き女型SAに襲いかかった。
まずは右の鋏が女型のSAに迫る。しかし女型のSAは姿勢を変える事も無く鋏をフォトンソードで弾き落とす。
バヂィヂィッ!と言うフォトンソード特有の、アライフのフォトンフィールドを削り取る音が響き、右手の鋏はその半分を破壊され弾かれた。
そのまま返す手でアライフの左肘の当たりを切り上げる。
今度はバヂン!と言う短い音と共にアライフの左腕は綺麗に切断された。
アライフは何事が起きたか理解する間もないまま頭上に迫るフォトンソードを見ていた。
あっという間、一瞬の出来事だった。
何事も無かったかの様に女型のSAはくるりとこちらに向き直った。そして今の鬼神の如き戦闘をやってのけたとは到底思えない様なか細く、綺麗な声で呆然としているボクに話しかけてきた。
「ひとつ聞きたい。お前は『最後の椅子』について何か知っているか?」
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