初陣⑥

瓦礫の影からライフルを構える。と同時に追ってきた2体のアライフの姿が見えた。


(……!思ったよりも速い……!)


すぐに撃たなくては!まずは1番大き目な柱に2発。もちろん簡単に命中。続けて見える限りの柱に向かって銃弾を撃ち込む。


大きな音を立てて数本の柱が崩れたかと思うと、そこからは一気に建物全体が傾いた。予定通り狭い路地を押し潰す様に崩壊する。その音は大きく、さらに大きくなり2体のアライフを飲み込んでいく。


(これは……!いったでしょ!)


立ち込める粉塵の中、前を走っていたアライフが落ちてくる瓦礫の中を駆け抜けて来るのが見えた。


(くそ……!1体抜けて来たのか……!)


出来ることはただ一つ。瓦礫を抜けて迫ってくるアライフに向けて何度も引き金を引いた。


何発も放った銃弾の内、1発は左肩に、さらに1発は右太ももをかすめた。銃弾を受けたアライフは体制を崩しながらも、なおも突っ込んでくる。しかしスピードは目に見えて落ちた。


またさらに引き金を引いたが銃弾が出ない。ライフルに装填した弾丸が空になったからか!

すぐに予備のマガジンを弾丸用のポシェットから取り出し空のマガジンと交換する。


いくらスピードが落ちていたとは言え、マガジンを交換する間にかなり距離を詰められていた。


くそっ……!


照準もほぼ合わせていないけど引き金を何度も引いた。

接近戦はやばい!かなりやばい!

こっちの装備ライフルひとつ。あっちは接近戦にめっぽう強そうな両手の鋏だ。


でも当たらない!1発も当たらない!


もはやライフルである必要も無いほど接近したと思った途端、アライフは驚くほどの跳躍でこちらに跳んできた。


「……っ!来いよ!」


飛び掛ってきたアライフは右手の鋏を勢いよく突き出してくる。


「左腕……!くれてやるよ!」


迫り来る鋏に向かって薙ぎ払うように左腕を叩きつける。

鋏を振り払うよりも速く左腕は挟まれ鈍い音を立てて軋み潰れる。


それと同時に右手1本でライフルの銃口をアライフの眉間に押し付ける。


「くらえ!」


0距離から放たれた銃弾はアライフの頭を粉々に吹き飛ばした。


頭を失ったアライフはそのまま両膝から崩れ落ち地面に突っ伏した。


まだ挟まれたままの左腕を引っ張ると、肘から先がバチバチショートしながら千切れた。


「参ったな……今日手に入れたゲノムだけじゃ修理するのに足りないかも」


そのまま尻もちをつくように地面に座り込んでしまった。なんだか一気に疲れたよ。

ドローンを降ろしゲノムを回収し始める。


後はネストに帰らないと……


と呆然と考えていると、瓦礫の山となった路地から大きな音が響き瓦礫が崩れ落ちた。その崩れた瓦礫の向こうからもう1体のアライフが這い出てきた。


「まじで……?ちょっと無理でしょ……」


とりあえず立ち上がったが、もう打つ手が見当たらない。這い出てきたアライフは思いの外ダメージを受けていない様子。それに対してこっちは片腕。どうしよう……。


アライフは先ほどの個体とは違い、ゆっくりと歩み寄ってくる。おそらくこちらの消耗度合いを理解しているのだろう。


これはかなりやばいな……。

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