初陣④

最後のアライフを仕留めた後すぐにドローンをそこへ向かわせる。


急がないと。特に最初に倒したアライフのゲノムはすぐに回収しないとな。


ゲノムは通常、コアと呼ばれる部分に蓄えられている。そのアライフの生命活動が停止すると、その瞬間からコアはゲノムを保持出来なくなっていく。簡単に言うと、少しずつ漏れ出していく。


ゲノムとはそもそも色々な形状で存在する。コアの中で保存されている時はゲル状の物質。アライフの生命活動が停止した後はその姿を徐々に気体へと変えていく。と聞いた事があるだけで、実際ゲノムがどう言う物なのかは良く知らない。


ドローンがコアから吸い出す様にしてゲノムを回収して行く。無理矢理コアをこじ開けて一気に回収する事も出来るが、このアライフだとそこまでするほどゲノムの量も多くないだろう。


狙撃場所からスコープで見ていたが、何となく初めて倒したアライフの側まで行ってみたくなった。


とりあえず行ってみよう。


廃ビルの階段を駆け下り少し走るとすぐに倒したアライフの近くまで来れた。そこにはゲノムの回収を終えたドローンがホバリングしたままだった。


ボクが回収したかったのはゲノムだけで、このアライフの残骸、死体と言うべきなのかな?は、このままここに置いて行こう。この残骸を少しずつ分解して食べる小さなアライフ達がこれを新しいゲノムにしてくれる。いわゆる食物連鎖と言うやつだ。


3体の残骸をまじまじと見る。何となく遠くからスコープで見るのとは印象が違うな。思ったよりも大きい。そして一番最初に倒したアライフを見る。


我ながら素晴らしいな!見事に1発で仕留めてるじゃないか!すごいな!ボク!


ふとアライフの残骸が横たわる地面を見てみると、そこに小さな花が咲いているのに気がついた。


「あ、花だ……」


なんて言う種類の花なのかは全く分からない。

調べたら分かるのかな?


「てかこれ、食べれたりするのかな?」


調べたら分かるのかな?


なんだか急に興味が湧いてきたぞ。


花の周りの地面ごと持ち帰ったらネストの中でも育つのかな?持って帰ろうかなー?


いやまぁ、今度にしよう。今日は初めての狩りが目的だ。そして目的は完全に達成出来た。


また横たわるアライフを見るとなんだかいい気分だ。


これがお父さんが言ってた、自慢げってやつかな?


まだ他に植物は無いかな?


何となく周囲をキョロキョロしてみた。


辺りを見回すといくつかの種類の植物があった。


植物は多くの種類が残っているってお父さんが言ってたな。中には美味しい果実を実らせる物まであったらしい。めちゃくちゃ食べてみたい。でもどうやらこの辺りには果実を実らせるような植物は無いらしい。


植物の他にもいくつか発見があった。どうやら外の世界にはまだ動きそうな機械がある。おそらく長い年月が経っているからすぐに起動出来ない物ばかりだとは思うけど、完全には死んでいない物もありそうだ。


そして気が付くと、さっき倒したアライフの残骸にもう小さな虫サイズのアライフが群がりだしでいた。外殻から小さく噛みちぎって自分達のネストまで持ち帰るのだろう。そうしてそれを体内で分解し、新しいゲノムに変換する。そしてこの小さなアライフ達を捕食する事で、一回り大きなアライフが体内にゲノムを蓄える。食物連鎖、だな。


たくさんの新しい発見と、たくさんの興味を見つける時間はあっという間に過ぎていたらしい。たったこれだけの場所を調べて回るのにもこんなに時間がかかる。もっと遠く、もっと広い場所に行ったら、一体どれだけの時間が必要だろう?でもまぁ、時間はたくさんあるか。


さて、そろそろネストに戻るかな。


ドローンを再び上空へ飛ばす。


すぐに上空からの周囲100メートル四方の情報が届いた。


ん……?


丁度100メートル先にアライフの反応がふたつ。


しまった…、ここは危険な外の世界だったのを忘れていた。

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