初陣③
実弾特有の薬莢が爆発する音が響く。
何度聞いても思う。本当に乾いた音だな。
放たれた銃弾は標的に向かい空間に穴を穿つ。
ほんの少しの時間、ボクにとっては一瞬時が止まったかの様な瞬間。世界でこの銃弾だけが動いているかの様な感覚。世界の時が再度動き出したかの様に、銃弾が着弾するのをSAのスコープがボクの脳に映像を送って来た。
ボク一人での初めてのハントの初めての銃弾は、呆気なく標的の頭を吹き飛ばした。
銃弾は標的のアライフの頭、正面やや右斜め上に着弾。そのまま標的の大きな体の中で止まった様だ。小さな銃弾、そのたった一発だったがこの大きな体のアライフの生命活動を停止させるのには十分過ぎる程だった。
頭を吹き飛ばしたアライフはピクリとも動かなくなった。突然の出来事に事態を全く把握出来ない残りの2体のアライフは姿の見えない敵に大して大きな鳴き声で激しく威嚇する。
自分の身に迫る危険だけを察知し、半狂乱で走り回りその巨体を周りの建造物に激しく打ち付ける。
(さすがにあんなに動いたら当たらないなぁ)
しばらく様子を見ていると、数分後には少しずつ大人しくなってきた。
大きく頭を振りながら、ゆっくり辺りをぐるぐる回り出す。そして疲れたのか、2体とも肩で息をしながら立ち止まる。
「よし……今がチャンスだな……」
再度ライフルを構え、引き金にかけたままの指の感覚を確認する。
すると手前側のアライフが頭を下げ、動きを止める。
絞る様に……
引き金を引いた。
次の銃弾もさっきと同様に空間に穴を穿ちながらアライフまで飛ぶ。
スコープで拡大された映像に銃弾が目標を破壊した映像が映る。
銃弾は狙った場所を僅かに右にずれ、アライフの左肩に着弾した。
突然の衝撃とダメージから、銃弾を受けたアライフは大きく吠えながら斜め前に体制を崩し地面に突っ伏した。
「あぁっ!外れた!」
いや、焦るな。ここは冷静に。
自分に言い聞かせる。
外れたならもう1発だ。
ふたたびライフルを構える。
次はすぐに引き金を引いた。もちろん冷静に、十分狙いを定めてだ。
ほんの一瞬の後、次の銃弾も無事着弾。しかしまたしても狙っていた頭部には当たらず、今度はアライフの右肩を吹き飛ばした。
「あー……」
外れたな……、でも前足の両方が機能しなくなったアライフはそのまま地面に横転しジタバタしている。
「お?これならいけるな!」
再度頭部に照準を合わせ素早く引き金を引く。
3発目の銃弾は見事横転したアライフのこめかみを捉えた。
( 後1体……)
残り1体となったアライフは動揺を隠すこと無く暴れ回る。だが混乱しているのか、その場から逃げる事も無く周囲に体当たりを繰り返す。
(とりあえずどこでもいいから……!当たれ……!)
暴れ回るアライフのだいたいの位置へ向けて照準を合わせ引き金を引く。
幸運にも銃弾はアライフの左後ろ足の付け根に着弾。たまらずアライフは崩れ落ちる。
「よし……!」
何となくいけると思った。
迷わず頭部に照準を合わせ素早く引き金を引いた。
予感は的中、見事アライフの頭を吹き飛ばした。
最後のアライフも動かなくなり、3体の残骸となった。
「オッケーェーィ」
思わずガッツポーズ。
急いでドローンでゲノムを回収しなきゃ。
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