初陣①

もそもそもそ……。


相変わらずカロリーバーはイマイチ美味しくない。お母さんの野菜の味が入っててこれだ。ボクがジェネレートしたアライフが集めて来て作ったカロリーバーに手を付けるのは時間の問題だ。


今日は早起きした。もちろん目覚まし時計がなったらすぐ起きた。ボクの本体の体で寝るためのベッドと布団。わざわざお父さんとお母さんはこんな物まで持ってきてくれたんだ。このふかふかの布団なんて……。なんでも鳥の羽で出来ているっていうふかふか布団はかなり貴重な物だ。おかげで朝になっても布団から出たくなくてしょうがない。


外の世界に出たらこんな貴重な物も手に入るだろう。


外へ出なくては。


そしてそれは今日にしようと思ってる。


「行くかぁ……」


チラッとSAを見る。


「頼むよ、相棒」


ネストを出る扉の前に立つ。もちろんSAにコンバートして。手にはジェネレートしたライフルと、筒状の容器に収まったドローン。

扉にこのSAを個体登録する。

個体登録終了後、静かに操作パネルに手を置く。


瞬く間にどう見ても壁だった場所が扉に姿を変えていく。


「……よし……」


ひとりになってから初めての外の世界。実際ここがどこなのかも分かっていない。これからたくさんの事を知らなければ。ここがどこなのか、何があるのか、何をすべきなのか。これからは全て自分でやらなければ。


1歩。


踏み出す。


ドアが聞き慣れた音を発して両側にスライドした。


1歩。


外の世界へ踏み出した。


扉を出るとそこには真っ直ぐな通路。数メートル先に鉄製の扉が見える。取っ手が付いている所を見ると手動なのかな?


振り返るとネストの扉は完全に周囲の壁と同じに擬態している。


「行くかぁ……」


眼前の通路を進み鉄製の扉の取手に手をかける。

扉の重みがSAの手を伝ってボクの脳まで伝わる。

徐々に力を加え扉を押す。

軋むような音を立てて扉が開いた。


扉から慎重に外へ出るとすぐに強い光を感じる。


久しぶりの太陽だなぁ……。相変わらず眩しいや。


まずは周囲がどうなってるか知らないとな。


左肩に担いでいた筒状の容器を取り出す。


中に入っているドローンと同期する。


同期が終わるとすぐに筒の片方が開き勢いよくドローンが射出された。そのまま空中で変形し、羽根を回転させてホバリングした。ドローンの下部に筒状の容器が収まる。これがそのまま回収したゲノムなんかの容器になる訳だ。


「じゃよろしく頼むよ」


上空高く飛び立ったドローンになんとなく手を振ってみる。


ほどなくしてドローンからの情報が送られてきた。


天候は快晴

気温25℃

湿度40%

南南東の風、風速5メートル


周辺の地形のスキャン開始。どうやらこの辺一帯は廃墟ビルが多くあるらしい。その中のひとつにボクのネストがあるみたいだ。これならスナイパータイプのボクが身を潜めて狙撃する場所には困らないだろう。


ほんの数分で周囲1kmの大まかなマッピングは終了した。


そしてその範囲ギリギリにアライフの反応が3つ。


ボクの初戦の相手は決まったみたいだ。

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