【閑話】裏ルート初見


 俺は今猛烈に興奮している。今にも叫びたい気分だ。


 それは何故かって? 「じぇねしす☆くらいしす」という恋愛ゲームで長年見つかってなかったとあるキャラの攻略法を見つけたからだ。


 そのキャラの名はマリーベル。かなり序盤から主人公一行の仲間になる平民で聖女の称号を持つ。今まで何故か攻略法が見つかっていなかった。


 俺は今回3年も見つかってなかったマリーベルの攻略法を見つけてしまったのだ。


 方法としてはストーリー中盤までに5回以上協会に行くことだと思う。多分、おそらく。他にも試して見たことが多すぎて判断付かないしな。


 複合条件とかかもしれないし。


 まぁとにかく今は新しく見つかったルートを楽しもうと思う。


◇◇◇


 マリーベルとのデートイベント、マジで今までと違った雰囲気でめっちゃよかったなぁ。


 もう魔王も倒したし、ラストの主人公から攻略対象への告白のシーンかぁ。


 まーじ最高だった。ラストシーンのスクショと共にSNSに公開するときが楽しみである。


 俺が主人公のお決まりのセリフを待っていると、画面が変化して、ストーリー映像が流れ始めた。


 あれ、俺まだ告白セリフ選択してないんだけど。最後の告白シーンは選択したセリフによってストーリー映像が変化するはずでは?


 そのストーリー映像で、主人公とマリーベルが二人きりになったその時、突然天から豪華な衣装をまとった初老の男性が降ってきた。


 ……どういう状況なんだ?


『カイト君。君は数いた女性の中から、その女性を選ぼうというのですか』


 その初老の男性は主人公に向かってそう聞いた。やべぇ、ボイス付きだ。このキャラもしかして重要キャラ? めっちゃイケてんじゃん。


『当たり前だ! 俺はマリーベルを愛している!』


『カイト君……』


 すごい王道の答え方するじゃん。なんでこれが裏ルートなのか意味わからん。


『そうですか、では仕方ないですね。個人的な事情ではありますが、その娘の幸せを認めるわけにはいきません。ここで……殺します』


 なんで!? 唐突過ぎじゃない!? というかこのタイミングでの戦いって……まさか裏ボスか!?


 唐突に初老の男性とのバトルが始まった。しかもパーティーは主人公とマリーベルのみ。魔王とは4人で戦ったから戦力不足感が否めないが。


 取り合えず行動を選択しよう。主人公には様子見で攻撃させて、マリーベルには防御魔法の展開をさせる。


 そのコマンド入力が確定すると同時に、行動が始まる。


『あの日、12年前の事でした』


 おいこいつ戦闘中にしゃべりおるぞ。めっちゃいい声しとる~。というか先制取られたの素早さ早すぎん?


 しゃべりながらの攻撃で主人公のHPが3割ほど削れる。技名は<暗黒流剣術>ね。初めて見る技だ。


 いてぇ。小手調べの通常攻撃でこの威力か。すると、こちらに順番が回ってきた。


 ん? もしかしてこいつボスじゃない? この「じぇねしす☆くらいしす」に置いて、ボスは2回行動である。絶対に単体で出現するボスが4人に対して1回しか行動できないと結構封殺されるからな。


 でも、その辺で出現するエネミーは基本1回行動だ。この初老の男性の行動はそれに準ずるものだ。


 俺が育てた主人公の攻撃によって、初老の男性にダメージが入る。10分の1も減ってないな。クリア後に登場する敵だけあってさすがに硬い。


 その後、マリーベルが防御魔法を展開してこのターンは終了だ。


 先手が相手なのは痛いな。というか相手の能力が分からないんじゃ、どうしようもない。次のターンはマリーべルに解析魔法を使わせよう。


◇◇◇


 苦労した。ずいぶんと苦労してあの初老の男性……ハーズ・シュナイダーを倒した。名前は解析で判明した。


「はぁ、はぁ……ふぅ、こいつはやべぇ」


 勝つために相当頭を回した。おかげでハーズが言っていたセリフの半分近くを覚えていない。魔王レベルの相手だったし、なにより二人での戦闘なのがキツかった。


 ストーリー映像が始まる。


 マリーベルの支援を受けた主人公がハーズと剣をぶつけあい、そして押し切る。剣をはじかれてできたその隙を主人公は見逃さなかった。


『ぐっ……やはり魔王を倒した英雄の力は伊達ではない、か……』


 この映像を見て、俺は少し嫌な予感がしていた。


 ハーズが第一形態のまま戦いが終わったからである。


 ラスボス、裏ボスは第二形態等があるのがセオリーだ。魔王は第二形態がちゃんとあった。


 ここでハーズが何かをするんじゃないか、そういう疑惑があった。


 その疑惑は別の方向で外れることになる。


『ハーズさん!?』


 カメラが急に移す方角を変える。そこには、黒髪で、金と黒のオッドアイを持つ青年が立っていた。


 俺は息をのんだ。彼が……圧倒的イケメン過ぎて。おい、主人公をあの容姿にしろよ。


 そんなことをつっこんでいると、ハーズの元にかの青年がいつの間にか移動していた。


『私は、シェリィの仇を……』


『もうしゃべらなくていい、ハーズさん。もう……最後だ。楽にしてくれ……』


 倒れ伏すハーズの手を取った青年はハーズの最後の言葉にそう答え、ハーズの目を閉じさせる。


 ハーズ、死んだんか……。


『シェリィに加えて、ハーズさんまで……。お前ら……お前ら!! 楽に死ねると思うなよ!!!』


 俺の予想は半分的中、ついに激怒する本当の裏ボスとの闘いが幕を開けた。

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