第2話 憩いの一時とイジメ

「どうしてお前らがここに…」


「ん?あぁ黒金じゃ〜ん!!お前のことを探してたんだよね〜」


「そうそう!!お前のことを探してたんだよ。俺らのことを徹底的に避けるように動きやがって…本当に毎日毎日イライラしてたんだよ。昼休み以外は全く俺等の前に姿を見せないのはどうしてなのかきっちり説明してくれるんだよなぁ?」


「お前さ…昼休み以外いつも何処にいるんだ?お前が居ないせいで他のやつをイジメないといけなくなるじゃん?他のやつをイジメて欲しくなかったら従えよ。」


俺の名前は黒金叶斗だ。両親は店を経営しているが、家からは離れているため店が閉まる20時くらいまでは家に帰ってこないのだ。


俺の事をいつもイジメてくるこいつらは、全員先生から何故か信頼されているのだ。そのせいかたとえどんな事をしていても先生が擁護するのだ…例えば、授業中にスマホをいじっていても何も言われないらしいのだ。


「おい話を聞いてるのか?」


「…聞いてるよ。それよりも俺は早く家に帰りたいから、そこをどいてくれないかな?」


「どくわけ無いだろう?俺について来い。ついてこないなら…どうなるか分かってるな?」


「今日は絶対に早く帰らなくちゃいけないんだ。だから君についていくことは出来ない。」


「ふ〜ん…俺について来ないんだったらどうなるか分かるってさっき言ったよな?どんな事をされても良いんだな?」


「あぁそうだよ!!今日は絶対に早く帰らなくちゃいけないんだ。だから君たちのくだらない行動に付き合う必要はない!!」


「生意気だな〜てめぇは俺に従ってれば良いんだよ!!でも従わないんだったら、お前がこの学校に居られないようにしてやる。おいおまえら…そこどいてやれ」


「あぁ?良いのかよ!!」


「そうだぞ!!どうしてどかなくちゃいけないんだ!!」


「あぁ?俺の言うこと聞けないのか?こいつが早く帰りたいって言ってたんだから早く帰らせてやれよ。な?」


「でもよ…」


「…納得いかねぇ」


「こいつは学校に居られないようになりたいんだって言ってたからな。良いんだよ…そうだよな?黒金?」


「…」


俺はその問いに答えることなく、帰路についた。今日あいつらに従わなかったのには俺にとって今日が大切な日だったからだ。


今日はなのだ。俺の中で家族に関する行事を抜かすという考えはなかった。最近は家に居る意味をあまり感じられないけど、せっかくの誕生日なのだ…受験も近くなってくるのだし、応援してあげよう。


そうして俺は家に向けて全力で走った。そして妹の誕生日プレゼントも帰りに買って、ようやく家にたどり着いた。玄関を開けると、妹が目を輝かせながら俺に向かって話しかけてきた。


「お兄ちゃん!!今日がなんの日か覚えてるよね?」


「もちろん覚えてるよ。愛華の誕生日だろう?どうしてそんな事を聞く必要があるんだ?」


「あのね?お父さんったら私の誕生日のことを忘れてたの!!酷いと思わない?」


「そうだね…いつもよりも早く帰ってきてるみたいだし、誕生日の事で帰ってきたのかと思ってたけどなんとなく帰ってきてって感じなのかな?」


「そこはわかんない…でも体調悪そうだったからそれなのかも?」


「まぁ体調が悪いならしょうがないね。よし、じゃあお兄ちゃんが今日は料理を作ってあげよう。」


「お兄ちゃんが料理を作ってくれるの!?」


「なんだ?俺が料理できないと思ってるのか?」


「いや…お兄ちゃんが料理を作ってる所見たことなくて…」


「確かに言われてみれば、母さんには良く作ってたけど愛華には全く作ってなかったな。よし!!それじゃあめちゃくちゃすごいもの作ってやるから待ってろ!!」


俺は両親が共働きなため、中学校くらいの時から、今まで以上に朝早くから店の準備になった父さんのために、それ以上に早く起きて弁当を作ってあげたりしたのだ。それからというもの、料理にどっぷりとハマり、今では殆どの料理を作れるくらいには自分の腕を磨いたのだ。


「はい…召し上がれ。」


「お兄ちゃんすごいね!!やっぱり私の自慢のお兄ちゃんだよ!!」


「そっか〜そう言ってくれると嬉しいな。お兄ちゃんとしても自分が作ってくれたものを美味しそうに食べてくれるのは気分がいいからな。」


「うん!!」


「…それでだ。最近勉強はどうだ?」


「正直難しい所が多くなって詰まってきちゃった…どうすればいいの?」


「そうだな…一番良いのは自分以外にも頼ることだけど、同級生とかと一緒に勉強会でもしてくればどうだ?」


「確かに!!お母さんとかに言ってみよ!!」


「そんなに焦んなくても大丈夫だよ。俺よりも愛華は頭がいいからさ。」


「大げさだな〜あんなの一種の指標でしかないじゃん!!私はお兄ちゃんのこと頭が悪いだなんて思ったことないよ?確かに数学とかそういう基礎知識みたいのでは、お兄ちゃんはいい点数を取れなかったりするけど、お兄ちゃんは普通に生きていれば身につかないような技術だったりを習得してるじゃん?それだけでアドバンテージになると思うよ?」


「そうなのかもしれないな。でも世の中俺みたいに変な知識や技術ばっかり身につけてるやつは探せば意外といるかもよ?」


「そう卑屈にならないでよ!!お兄ちゃんはこの世で一番かっこいいから!!」


「はぁ〜そう言ってくれるのは愛華だけだよ…」


「お兄ちゃんって呼んでくれて褒めてくれる可愛い妹が居て嬉しいでしょ!!」


「はいはい…作ったもの早く食べとけ。片付けとかは全部やるから、勉強しな。」


妹は食事を終えた後、自分の部屋に戻り勉強を始めたようだ。俺は皿を片付けながら明日からの学校のことを心配していた。





そしてその心配は現実になってしまった。朝いつも通りに登校すると、周囲からの視線を感じた。なぜこちらに視線を向けてくるのか、わけが分からなかった…でもすぐにこんな視線を向けられることはなくなるだろうと思って席に着いた。


そして教師が教室に入ってきてホームルームを始めると、すぐに俺の事を教室の外に呼びだしたのだ。


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