第10話 ミリアVSクロエ



「狩技…7'sマシンガン…!」


異様な力が籠った、クロエの折り畳まれた右足が、開かれた刹那、ミリアの盾に7発の蹴りが叩き込まれる


恐らく動体視力が向上している俺以外に、盾に7発の蹴りが叩き込まれたことは見えてはいないだろう


「………………」


「ミリア!」

「……っ!」


俺とクーデリカはミリアに駆け寄る、盾が力なくへたり込むミリアに覆いかぶさっていた


「ずびまぜん…負げてじまいまじだ…」


ボロボロと大粒の涙を零しながら、小刻みに震えている


「命の恩人のユーキさんをバカにされたのに…勝でまぜんでじだ…」


「ミリアさん…俺の為に…」


俺の為に闘ってくれたのに、情けねぇ…


「興醒めだな…皆の者!訓練の準備だ!」


俺たちを一瞥し、ひらりと体を仲間の方へ向いて歩いていってしまう


「待ってくれ」


「あ?」


首だけをこちらに向けとんでもない睨みを効かせてくる


「俺とも1戦やってほしい」


なんだろうな、人と争うのとか好きじゃないし、争いなんて起きない方がいいと思ってる平和主義な俺だけど


仲間の仇討ちをできない方が…嫌いだ…


「腑抜け面にしては威勢がいいな、いいだろう、さっきのじゃ不完全燃焼だったからな…相手をしてやろう」


俺の誘いを買って、再び対峙する


「フラン!」とだけ呼ばれた少女が、またも宣言者に抜擢された


「また私かよぉ〜…それでは、クロエ対腑抜け面の模擬戦闘を行います!……始め!」


おいいぃぃぃい!あのくせっ毛失礼過ぎんだろぉ!!


「余所見をするとは余裕だなっ…!」


またも距離を詰めてくる、が、俺にはあんたのその自慢のスピードも、余裕で見えちゃうんだな〜これが


打ってくる拳をすんでのところで躱す


「何っ!?」


休みなく打ち込んでくる拳を躱しながら、どんな展開が1番いいか、脳内異世界転生シュミレーションしていた


(よし、この展開に決めた)


右の拳が打ち込まれると同時にしゃがみ込み、そのまま足払いで体制を崩す


「なっ…!?」


拳を突き出した勢いも相まって、クロエは一回転して地面に叩きつけられる


「ぐぅ…!」


足払いした俺はそのまま倒れるクロエの真上へ跳躍、空中で右足を腹前に折り畳む


「まさか!あれはクロエの!?」


前のめりに驚愕するフラン


「ミリアのお返しだ!!


狩技…7'sマシンガン…!」


折り畳まれた右足から、目にも止まらぬ7発の蹴りが放たれた


砂煙が立ち上り俺たちの姿を隠す、その間にミリアとクーデリカの元に駆け寄り、2人を抱えあげてその場を離脱


「クロエ!」


フランが駆け寄ると、クロエは無傷で横たわっていた


「やられたよ……」


当たりを見渡すと、クロエの周りに穴が7箇所空いている


「あいつ、クロエじゃなく地面に蹴りを当てて逃げたのか!?」


「逃げた…というより、見逃してもらったというのが正しいだろうな…」


してやられたと言うのに、クロエの表情は明るいものである


「あいつ、何者なんだ…?」


「わからん…いずれにしても、面白い男だ」


不気味にほくそ笑むクロエだった



ーーーーーーーーーーーー


アカデミアを飛び出した俺たちは街の公園で一息ついていた


「すみません、また抱えてしまって」


露店で購入した飲み物を2人に渡しながら謝る


「いえ、おかけで助かりましたから」


顔を背けたどたどしい様子


「んー…出来れば……オレンジが…良かったかな……?」


こいつは相変わらずである


「そんなことより!何で貴方があの技使えるんですか??」


「あの技?あークロエさんの技のこと?あれはなんというか、見よう見まねというか」


頭をかきながら返答する


しかし本当に見よう見まねなのだ、ミリアとの闘いの際に見たクロエの技を、脳内でシュミレーションして、それをぶっつけ本番でかまして…


あれ?もしかしてこの脳内異世界転生シュミレーションも結構なチート性能なのでは??


「ふふふふふ」


「なんだか気持ち悪いですよ、ユーキさん」

「…割と通常運転…………」


とんでもなく失礼な発言が飛び込んできたが、気にしたら負けだ、己の新たな力の発見に喜びを隠せるものか


「ユーキさん少しよろしいでしょうか?」


浮かれる俺に、真剣な表情で割り込んできた


「どうしました?」


「私を強くしてくださいませんか」


クロエとの闘いで、何か思うことがあったのだろう、表情だけで本気であることが伝わってくる


「先ほどの闘いで、自分自身の弱さを痛感致しました…同時に、ユーキさんの強さも再認識しました」


拳を握りしめ、唇をきゅっと噛み締める


「貴方の元で特訓すれば強くなれる、そう確信しております」


「分かりました…人に教えた経験はあまりないですけど、アカデミア入学までに猛特訓しましょう!」


もちろん快諾、選択肢的にも正解だろうし、ミリアが強くなることは、今後パーティーを組んでいく上でもメリットしかない


「私も……強く…して……」

「もちろん!」


てなわけで、アカデミア入学に向け、ミリア&クーデリカの代特訓の日々が始まるのであった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る