第9話 ハンターアカデミア



ー翌朝ー


物置小屋での目覚め、最高の気分とは到底言い難く、周りには備蓄してある野菜たちが散見している


「庭に倉庫でも作って移動させないとな」


部屋を出て1階の台所へ向かう、朝食作りだ


今日から3人分の食事を用意しないといけないが、不思議と嫌な気持ちはなかった


恐らく昨日の【アルバニア食堂】での3人での食事が楽しかったのが大きいんだろう


慣れた手つきで朝食の準備をしていると、階段を降りてくる音が聞こえてきた


「…ユーキ…おはよう……」


眠そうに目を擦りながら、クーデリカが降りてきた


「おはようクーデリカちゃん」


当たり前の話ではあるが、寝起きはツインテールじゃないんだな


「うい……」


物珍しそうに眺める俺を他所に、洗面所へと歩いてくクーデリカ


その間に完成した朝食をテーブルへと運んでいく


「クーデリカちゃん、朝ごはん出来てるからね」


洗面所で支度するクーデリカに声を掛けつつ、未だ降りてこないミリアを気にするように、2階に目を向ける


「どっちかというと、ミリアさんの方がパッと起きてきそうなイメージだったんだけどな」


人は見た目によらないとはよく言ったものだ、等と考えながら、ミリアを起こすため階段を上がり2階へ


「ミリアさ〜ん朝ですよ〜」


声をかけながら寝室のドアを開ける、間違っても着替え中に入る、なんて事にはなりたくないからな…


「ほえ、朝でふか…?」


どうやら俺の入室で目覚めたようだ


「朝ごはんも出来てるから早く降り…っ!?」


ベットの上の無防備であられもない姿に思わず声が出る


寝ぼすけミリアのシャツのボタンははだけており、たわわな膨らみが見え隠れするチラリズム状態、ズボンは履いておらず黒いセクシーな下着がこんにちはしていた


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(見ちゃダメだ見ちゃダメだ見ちゃダメだ)


そんな理性の精神とは裏腹に、脳裏にこの素晴らしい映像を焼き付けんと、目はしっかりと開き集中している


「ん?ユーキさん?」


まずい


「………………」


自分のあられもない姿を一瞥し、伏したままわなわなと肩を震わせている


「なんでそこにいらっしゃるんですかぁ?」


顔は笑顔、だが笑っていない、これは怒り、俺はこの後死ぬだろう、だが後悔などしていない、最高の景色を拝めたのだから…


「いやああああああああ!!!」


ミリアから放たれた何かが、俺の面前に来た以降の記憶が飛んでいるが、気づくと俺は1階に転生していた


「……鮭…うまうま……」


うなだれている俺などお構い無しに、焼き鮭に舌鼓を打つ非常なるツインテール


この同居生活がいつまで続くのかは分からないが、終わる時は死ぬ時かもしれない…



「ほんっとに最低ですっ!」


何とか落ち着き3人で朝食を食べている、ミリアはぷんぷんしているが…


「ほんとにすみません…」

「まぁまぁ…これでも…食べて…元気出せ……」


俺が作ったんですけどぉぉ?


どうにかミリアをなだめて、アカデミア入学手続きのために【ハラシア】へと向かう


ーーーーーーーーーーー


街に着くと、俺たちと同じく、アカデミア入学手続きに来たのであろう人物がチラホラ見受けられた


「俺たち以外にも、ハンター志望の人結構居そうですね」

「ハンターになるには、この国ではここだけですから、志望者が多いのは必然かもしれませんね」


なるほど、確かに今年からハンターになる為にはアカデミア入学が必須だもんな


「……到着…」


「学校とは思えない大きさだな…」


ハンターアカデミアはとんでもなく大きい、勉学に励む教室、訓練用のフィールド、遠方から入学した学生の為の寮など、全てがひとつの敷地に収まっている


「早速参りましょう」


ミリアに先導され、俺たちは門をくぐり中へと入っていく

門から校舎までが長いのなんのって…


数分歩いたところで、手続きを行っている受付に到着


「すみません、入学手続きをお願いいたします」

「入学手続きをしたいんだが」


「「ん??」」


どうやら別の志願者とドンピシャで被ってしまったみたいだ


「悪いが君らは後にしてくれるか?」


そう言った威圧感満点の志願者は、銀髪の長い髪に紫色の瞳、褐色肌がよく分かる腹出しの装備を身に纏っている綺麗な女性


「いえ、私たちの方が少し早かったので、貴方たちこそ後にして貰えますか?」


ミリアと銀髪褐色肌の間にバチバチと火花が見える、ミリアって意外と好戦的?


「受付は2組同時に出来ますから、落ち着いてください」


受付の男性が、今にもバトりそうな2人を宥め、2組に書類を書くように促す


こちらも「なんですか!あの失礼な人!」と荒れるミリアを落ち着かせ、3人で書類を記入していく


「とりあえずこの3人でパーティ申請出して大丈夫ですか?」


2人とも問題ないと頷く


「装備の貸出しについてか…学生は学生服の装備があるらしいけど、2人はどうします?」


「私たちは学生服装備を借りようと思ってます」


2人とも装備は持ってるはずなのに、わざわざ借りるのか


「学生服……とても優秀…」


「学生服装備は、見た目の柔さと違い、防御性能は重装備並に高く、伸縮性も優れていて壊れにくいんです」


あ、俺のスーツと似たようなもんなんだな、確かにそれなら借りるのも納得だ


「そういう理由なんですね、俺は今の装備がしっくりきてるので、このままでいっちゃいます」


貸出希望の2人は、採寸のため奥の部屋へと案内されていく


「学生服はちょっとな…」


この世界での俺の見た目なら、学生服を着ても問題ないんだろうけど、中身は30歳だからな…

メンタル的にキツい…


2人を待ち、ボーッとしていると


「おい、そこの腑抜け顔」


先程受付でミリアと一悶着していた、銀髪褐色肌が声をかけてきた


「はい?」


「親切で言っておいてやるが、お前のような腑抜けではアカデミア卒業など不可能だと知れ」


おいおい、この銀髪褐色肌は誰でもかれでも攻撃してくんのか??


「それは、やってみないと分からないじゃないですか」


「ふんっ、戯言を抜かす、ハンターアカデミアは生ぬるくは無い、1ヶ月で生徒数が入学時の半分になるほどにな」


うわ、そうなんだ、めっちゃ厳しいじゃん


「ちょっと貴方!何か用ですか?」


銀髪褐色肌に詰められている俺をミリアが助けに入ってくれる


女の子に詰められてる所を、女の子に助けてもらうって情けなさすぎるだろ…俺


などと感傷な浸っていると


「よろしい、ならば決闘だ」


「いいでしょう、望むところです」


なんとも血気盛んだこと


こうして、急遽ミリアと銀髪褐色肌の決闘が始まることになった


ーーーーーーーーーー


「ここは私たちが訓練の為に借りた、学生用のフィールドだから安心して闘えるぞ」


「ありがとうございます」


対峙する2人、バチバチの雰囲気の中、俺とクーデリカはミリアの後方で観戦する


「まずはお互い名を名乗るとしよう、私の名はクロエ!己の拳と脚で闘うファイターだ」


拳を突き出し凛としている、恐らく戦い慣れてるなあれは


「私はミリア!槍と盾を操るランサーです!」


新装備学生服に身を包むミリア、僅かに震えているように見える


「フラン!開戦の宣言をしろ!」


そう声を掛けられたのは、クロエのパーティーメンバーの1人で、くせっ毛緑髪のローブを纏った小柄な少女だ


「ったく、人使い荒いな全く…これより、クロエ対ミリアの模擬戦闘を行います!それでは…始め!」


上げた右手を振り下ろすと共に開始の合図が言い渡される


「決闘と言えバカものが」


合図とともにクロエが前に詰め寄り拳を突き出す、ミリアも盾で応戦する


「おらおらぁ!守ってるだけじゃ…勝てんぞ!」

「くっ…!」


クロエの放つ拳が重すぎて、攻撃に転じれないミリア


クロエのやつ、やろうと思えば盾以外にも攻撃を当てられるはずなのに…敢えて盾だけに攻撃を集中させてるように見える…


「やれやれ、もう楽しめそうにないな…」


拳を振りつつ溜息を漏らす


攻撃の手を止め、右足を腹前に折り畳む


「まずい!ミリア避けろっ!!」


クロエの右足に異様な力を感じた俺は思わず叫んでいた


俺の声は届いているはず、だがミリアは動かない、いや疲弊し動けない


「狩技…7'sマシンガン…!」

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