第6話 やんごとなき理由



「まずは私達の事からお話させてください」


かしこまった話し方に変わり謎の緊張感が走る


「私達はこの国【ルギド王国】の第2王女の位にクーデリカと共に双子として産まれました」


ええぇぇえ!!第2王女??

ってお姫様ってことぉぉお!!??

双子ぉ??全然似てないけど??


驚く俺を尻目に話を続ける


「しかし、王女という位に双子というのは、王族としては異質な存在なのです」

「なるほど…」

「はい、なので王室での私達は煙たがれる存在。今の今まで虐げられた生活を耐えてきました」


酷い話だな…

第2ということは第1がいて継承者は決まっている、そこに双子の、しかも娘となれば煙たがれる…てことか…


「そんな生活から抜け出すため、自身に力を付ける為、18歳になったタイミングでハンターになることを決めました」


「そこで訓練の為にあの森林にいたってことですか?」


「いいえ、ハンターアカデミアがあるハラシアに向かっていました」


確かにハラシアの街には、ハンターを育成する機関であるアカデミアはあるが…

この国を統治するルギド王国からはアカデミアまで森林を通る必要がない…



「ハラシアに行くのに森林を通る必要はないんじゃ?」

俺の質問にミリアは悲しく微笑み頷いた


「おっしゃる通りで、森林に行く必要はありませんでした」

「じゃあなぜ?」

「恐らく私達は消される予定になっていのだと思います」


言葉が出なかった

あれだけ繰り返した異世界転生シュミレーションも、この状況では何の役にも立たなかった


「襲われていた地で倒れていた護衛も、正規の王国騎士ではなく、捨て駒として遣わされていた兵で、森林で私達を魔物に襲わせるという任だったのでしょう」


だから俺が助けた時に、護衛は気にかけなかったのか


「なので、私達は王国から見放された姫ということになりますね」


ミリアは無理に笑ってみせていた

複雑に感情が渦巻いているだろうに、まだ18歳の少女だぞ


「話はわかりました、大変でしたね…」


「すみません…出会ったばかりの貴方にこんな話をしてしまって」


「そんなこと…こちらこそ話してくれてありがとうございます…でも何でそこまで話してくれたんですか?」


命を助けたとはいえ、初対面の相手にここまで話してくれる事が単純に疑問だった


「それは、ここまで気を許しているクーデリカが珍しかったものですから」

「珍しい??」


「はい、王室での生活の中で、クーデリカは心を閉ざすようになったんです…それ以来、私以外の人の前でここまでのことをするなんてなかったものでして」


クーデリカの不思議な行動はそういう事だったのかと合点がいった


「なので、この方は信頼が出来るんだろうと思い、お話もさせて頂きました」


「そうでしたか、俺に出来ることならなんでも言ってください!力になりますよ!」


信頼されるということが嬉しかったのもあるが、こんなにも辛い思いをしてきた2人に何かしてあげたいという気持ちが込み上げてきた


「ありがとうございます、お優しいんですね」


ミリアはにっこりと微笑んだ


「そんな、優しいだなんて!」


嬉しくて多分口元緩んでるなこれ




「ではお名前からお聞きしてもいいですか?」


うわなんかめっちゃ恥ずかしい…

俺名乗ってなかったじゃん…

うわ…はず……




コホンと咳払いをして

「申し遅れました、俺はユーキって言います!」


「ユーキさんですね!改めて私達を助けて頂きありがとうございました!」


深々とお辞儀をするミリア


「……ねぇ……ユーキ……」


これまで沈黙を貫いていたクーデリカが口を開いた


「どうしたの?クーデリカちゃん」


「……ここに住む……」







え?

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