第5話 出会い




真の異世界転生ライフを謳歌するための、本日のプランを発表する


その1

クリョチ森林の未探索のエリアを巡る


その2

街に出て【アルバニア食堂】へ行く


その3

街のギルドでハンター登録をする


こんな感じだ、正直ギルドは外から見かけた事はあるが、中に入るのは初めてで若干緊張する


しかし、そんなこと言っていられない、何のイベントも発生しない転生ライフとおさらばするのだから




自宅で支度を済ませて、クリョチ森林へ向かった



行き慣れた道を避け、行ったことのない道を進んでいくと、俺の進路を遮るように魔物が現れた


「キー!キー!」


《》

猿に似た魔物【モキー】

・体長2m、攻撃的な性格、木の実や果物から、小動物時には人間をも喰らう魔物

・顔は可愛らしいのだが、すばしっこい上腕力も強いため、手練のハンターでも手こずるほど

《》


全身の毛を逆立たせ、分かりやすい敵意を向けている


「話し合う気は……ないよなぁ〜」


俺はその辺に落ちていた石ころを拾い上げ

「ピッチャー振りかぶってぇ……投げた」

セルフ実況しながら、モキーに向かって投げつけた


「キェー……」


石は見事に命中し、モキーは力なく倒れた


そう、これが俺の実力

その辺の石ころが、俺のスキルにより銃弾に変わる


スーパーパワーをお披露目した所で、この1年間で判明した、スーパーパワーについて周知しておく


【スーパーパワー】

・筋力・腕力・脚力・握力・動体視力・跳躍力・投擲力が超向上

・能力の微調整可能、飛行は不可

分かりやすく言うと優しいスーパーマンだな、空は飛べないし目からビームも出ない


以上がスーパーパワーの説明だ、え?誰に言ってるのかって?それは君たちの想像にお任せするよ


説明も終えたので、いつも行かない北側の探索を進める


いつもと違う行動が、新たな流れを産むと本で読んだことがあるようなないような気が……する


探索を進めていると、岸辺の方から争うような声が聞こえて来た


どうやら選択は間違いなかったようだが、それにしては雲いきが怪しい


気づけば声のする方へ駆け出していた


ーーーーーーーーー


「クーデリカ!絶対私が守るからね…!」

「…………」


木陰に隠れ声の方を確認すると、魔物【オーク】に襲われている少女2人がいた


1人は盾と槍を装備した金髪の少女で、もう1人の少女を庇うように魔物に対峙している


庇われている少女も金髪で、ツインテール

背中には弓の矢が見える


うん、2人とも可愛い←


いやいや、そんな事を考えている場合じゃない、2人の装備は遠目から見ても分かる程ボロボロになっている、大分追い詰められているようだ


魔物の奥には2人が乗っていたであろう馬車の様な乗り物が破壊されており、その傍らには護衛と思われる騎士風の人物が力なく倒れている


このまま走って2人の前に出るにも、魔物はもう少女2人の目の前に迫っていて間に合わない


秘剣を使うしかない


走りながら鞘から刀を抜き、目一杯右腕を左腰に巻き込んでいく


そこから跳躍をし、

「秘剣……〜月下氷刃〜……」


と発すると共に、思いっきり刀を振り抜く


振り抜いた剣筋から、氷の刃が放たれ魔物に向かって飛んでいく


「伏せろ!!」


俺の声に気づいた槍の少女が、ツインテールの少女に覆い被さる形で伏せてくれた


伏せずとも攻撃は魔物に命中するだろうが念には念をだ


放たれた氷の刃がオークに直撃、氷刃が当たった部位からみるみるオークを氷漬けにしていく、数秒もかからず見事なオークの氷塊が完成した


華麗に着地を決め、うずくまっている少女2人の元に駆け寄る


「大丈夫ですか…?」


屈んで声を掛ける


「私たちのことは大丈夫です…!それよりもオークを…」


と言いかけた所で、雪まつりの展示となった氷塊オークを見て驚愕していた


「あのオークを……?」


どうやらオークを倒すことは珍しいことのようだ


「オークは倒しました、でも他にも仲間がいるかもしれないので、ここから離れましょう」


俺の提案に槍の少女は表情を歪める


「そうしたいのは山々なのですが、負傷して2人ともスグには動けそうにありません…」


確かに2人の体には沢山の傷が見受けられる、足にも痛々しい傷があり動ける状態では無さそうだ


しかし、オークは複数体で行動するので、他の仲間が来るのは時間の問題である


「わかりました、では少し失礼させてもらいます」


不思議そうな顔で俺を見つめる2人をよそに、おもむろに2人を抱えあげた


「え…!?ちょっと…何を!?」


装備のおかげで直接的な接触が避けられたのはありがたい

え?これって痴漢とかになりませんよね??


戸惑う少女には悪いが、一刻も早く離れるべきなのは間違いない


少しの間我慢してもらおう


「何か回収したいものはありますか??」


「あ、いえ、もう持って行けるものはないですが、それよりこれからどうする…キャーー!!」


槍の少女が話終える前に、2人を抱えて走り出した


「近くに俺の家がありますので、一旦そこへ避難させてもらいます!」


「イヤッー!キャーー!!!!」


悲鳴をあげるだけで返事は無い


ジェットコースターか何かだと思って耐えてもらおう


にしても俺の腕力すごくない?

少女とはいえフル装備の人間2人抱えて走ってるんだぜ??


己の能力にうつつを抜かしている中、少し気になる事が


ツインテールの子、ぜんっぜん喋らない

無口とかそういうレベルでは無い


魔物に襲われている時も、抱えられている今この時も


右からは悲鳴、左からは無音というなんともシュールな映像をお届けしている


数分ほど走って自宅に到着し、2人を降ろした


「えっと…大丈夫ですか…?」


「は、はひ、大丈夫れす、ありがとうございましゅ」


うん、槍の少女は大丈夫ではないようだ


ふとツインテールの少女の方に目を向けると姿が見えない


辺りを見渡すと、部屋の中で水をゴクゴクと豪快に飲んでいる姿が見えた



ええぇぇえ!?何してんのあの子ぉぉお??

めっちゃ普通に水飲んでるんですけどぉぉお!


しかもめっちゃ他人の家のはずなのに我がもの顔で飲んでるんですけどぉぉお!!?



「っ!?クーデリカったら!本当にすみません…」


申し訳なさそうに槍の少女が謝ってきた


あのツインテールの少女…どんだけ肝が座ってるんだ


とりあえず部屋に入り話をすることにする


部屋に入るとすぐさま槍の少女がツインテールの少女に怒っている


まぁまぁとその場をなだめて3人でテーブルを囲む


槍の少女が真面目な顔で口を開いた

「改めて、先程は危ないところを本当にありがとうございました。私はミリアと申します」


緩い曲線を描く肩まで伸びた艶のある金の髪と、大きくキリッとした青い瞳、装備の上からも分かる出るとこ出て引き締まるとこ締まる抜群のプロポーションのミリアと名乗った槍の少女


「それから、先程失礼なことをしたこの子がクーデリカです」


ほら、クーデリカも挨拶して!とミリアがツインテールの少女を促す


「……クーデリカ……」


と名乗りペコッと頭を下げたこちらの寡黙な少女は、ミリアと同じ金髪で、青い瞳だがジトっとした目つき、両サイドを括ったツインテールで体格は小柄で線が細い


「すみません、クーデリカは色々理由がありこういう子でして…お許しください…」


心底申し訳なさそうにするミリア


「いえいえ、お気になさらずです」


どんな理由なのかは気になる所ではあるが、そこにズケズケと踏み込まないデリカシーは持ち合わせている


そこから何故魔物に襲われたのかを聞いてみた

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