第3話 街を探索、そして初陣

(にしても、活気があって明るい街だなぁ)


このハラシアという街、この国の第2都市ということもあってか、ありとあらゆる店が出店しており、ガッツさんから情報収集出来ていなければ大きく時間を取られていただろう


(この辺りのはずなんだけどな)


教えられたお店をキョロキョロと探す


(あ、あそこか!)


目的の店を見つけたは見つけたのだが…


(人のいいガッツさんが紹介してくれた店だから間違いはないと思うんだけど…)


決して綺麗とは言い難い外装、斜めになったま治されていない看板に、ちゃんと締まりきっていない襖型の扉


(この店…大丈夫なのか…)


一抹の不安を抱きながらも店内へ入ってみる


「いらっしゃい」


中に入り声をかけてきたのは、藍色の道着に草鞋といったみすぼらしい格好の、腰の曲がったおじいさんだった


おじいさんを見て更に不安が増す


「あのすみません、服と防具を買いに来たんですが」

「ほぉこの時期に珍しいのぉ」


この世界では服や防具を買う事が珍しいのか?


「どれ、あんたにオススメの装備を見繕ってやろう」


(え、選ばせて欲しいんだけどな…)


そんな俺の気持ちを華麗にスルーして、おじいさんは奥に引っ込んだ


数分後おじいさんがおすすめ?の装備を持ってきてくれた


「これなんかどうじゃろ」


おじいさんが俺に提示したのはスーツだった、

スーツと言ってもパワードスーツやモビ●スーツといった類では無い、サラリーマンのスーツだ


(てか、え?スーツなの?俺に合うの)


「あんた、とんでもない力持ってるじゃろ?だからこれがええと思ったんじゃが」

「えっと…それはどういう…」

「このスーツはな、鎧のような防御力はないものの、伸縮性抜群で滅多なことじゃ壊れん。あと普段の服としても着ればツーウェイ仕様にも出来るじゃろ?」


なるほどな、このおじいさん只者では無い

俺のチート級パワーを見抜き、面倒くさがりな俺の性格まで読んで、服と防具を一色単にこなせる代物を用意したのか


店構えはともかく、ガッツさんが勧めてくれた理由が分かった


「色々考慮して下さりありがとうございます、それをください」

「まいどあり」


その場でスーツに着替えさせてもらい、店を後にする


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俺が転生者だと分かったのかと冷や冷やしたが、いい買い物が出来て良かった

転生前のサラリーマン時代を彷彿とさせるスーツなのは多少引っかかるが、今の俺はサラリーマンではない


何者かを決めるのかは俺自身なのだから



装備を整えた俺は自分の戦闘力を測るべく、森林へと向かう




《クリョチ森林》

『ルギド王国北東に位置する大森林で、森林の北から南にかけて、大きな川が縦断している

自然豊かな場所の為、動植物が多く生息しているが、川の東側には魔物も多く生息しているので注意が必要』





街で購入した食材などを自宅に置いて、森林へとやって来た


探索の前に俺のスキルの確認をしておこう


【秘剣術】

・7つの秘剣術を扱うスキル、この世で誰も使用していない刀装備の者にのみ与えられる

(つまり俺の固有スキル)


秘剣

1、疾風迅雷

(疾風の如く斬りつけ、斬り痕に電撃破を発生させる)

2、月下氷刃

(振り抜いた剣筋から氷刃を放ち対象を氷漬けにする)

3、雲合霧集

(回転斬りで周囲の水蒸気濃度を高め霧を発生させ目を眩す)

4、威風堂々

(刀を上に薙ぎ払い風の盾を作り出す)

5、獅子奮迅

(振り抜い剣筋から獅子を放ち対象を拘束する)

6、狂喜乱舞

(高速移動で分身を出し2人がかりで連撃を行う)

7、不明

未習得


【スーパーパワー】

腕力・脚力など、あらゆる能力が向上


7つからなると言いながら、ひとつは使えないようだ…

もうひとつのスーパーパワーの方は戦いながら実感しよう



(しかし、スーツで森林徘徊するって中々にシュールな光景だよな…)


木々を掻き分け進んで行くと、黒い猪の様な生き物とエンカウントした


目が赤く光り、いかにも魔物ですと言わんばかりの体裁だ、本で読んだ記憶が正しければ、デスボアという魔物で、初心者ハンターの登竜門的存在らしい


「さてさて、異世界転生の記念すべき1戦目だ!お手柔らかに頼むぜ」


抜刀し意気揚々とデスボアに向かって走り出す


「プギィイイイ!!!!」


デスボアが敵意剥き出しに突進してくる、

が遅い…スロー過ぎてあくびが出るぜ状態だ…

小学生のかけっこの方がまだ早いぞ?


いや違う、これがスーパーパワーの恩恵なんだ、動体視力がとんでもなく上がってるってことか!?


「なら攻撃が当てやすくて助かるだけだ!


秘剣……疾風迅雷……!」


両手で刀を持ち、腕を左腰に巻き付ける、そしてデスボアとすれ違う瞬間に斬り抜く


デスボアの体の左側を斬り割いた


「プヒィーーー!」

デスボアが苦しそうな声を上げる


入れ替わる形で対峙し直し、追撃を加えようとした時、斬り付けた傷から電撃が走りデスボアを襲う


「プヒ……」


デスボアは黒焦げになって絶命した


いや……秘剣強ぉ……

スーパーパワーと相まって強ぉ……

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