第18話ㅤ信頼されすぎると少し気負いしちゃうよね

「はいはいどうもー白雪で〜す。本日は俺の人生2度目のコラボ配信でーす、やったー」


・わーい

・やったー棒読みじゃん

・友達少ないん?


「なんて酷いことを言いやがる……視聴者含めたら200万人くらいいるよ」


・含めるな

・視聴者は友達じゃないぞ

・この時、白雪の友人の人数を求めよ。ただし、視聴者及び業務連絡が50%を上回っている相手は友人として数えないものとする。


「うーーーーーーーーん……1年くらい連絡取ってない相手もカウントしていい?」


・直近3ヶ月以内に1度でも連絡を取った相手のみとする

・ダメ


「じゃあ一人しかいねえや!というわけでその一人こと本日のコラボ相手の水樹みずなさんで〜す!わー!ぱちぱちー!」


「こんにちは〜!水樹みずなで〜す!私の方は友達だと思ってませ〜ん!」







・えっ

・えっ

・白雪ちゃんすごい目してるけど大丈夫そ?


「とりあえず今は半分家族みたいなところまで来たので、ここから恋人とかを……「ペット枠でいいから捨てないでくれみずなぁ……」


「……いや、冗談だからね!?友達だと思ってるから、そもそもなんでペット!!??」


……おれはしょうきをとりもどした!


いやいや、冷静に考えれば冗談だってすぐわかっただろ。みずなはそういう冗談を言わないタイプだったはずだが……配信としておいしいネタになりそうならやったって不思議な話では無い。


・白雪ちゃんフリーズしてて草

・壊れちゃった・・・

・おめめぐるぐるで草


というか、そのあとの発言から考えれば配信用の百合営業フィルターがかかっていた可能性が濃厚だろう。つまり、どういうことかと言うと……


俺がみずなの軽いジョークに爆弾発言をしたヤバいやつになってしまったということである。なんだよ、ペット枠でいいからって、本当になんだよ……。


「お〜い、ゆっきち〜ん???」


いや実際もし今みずなに捨てられたら俺は割とマジめに終わるのだが……戸籍が無いため家を借りることも出来ず、まともに寝泊まりできる場所がなければ24時間ダンジョンの中で食事も睡眠も魔力で代用するバケモンになってしまう。


何でダンジョンの中限定かって?外だと魔力が足りなくて飢え死にするねんな。魔力は万能だが、無限に使えるわけではないのだ。俺はここの休止期間でそれをよく思い知った。


そうなるくらいならみずなのペットの方がまだマシという寸法だ。ダンジョンの中で変わらない風景と孤独にゆっくり発狂して自我が壊れるくらいなら尊厳を失っても人間性が残るペットの方を俺は取るのである。みずなならそこそこまともな扱いをしてくれるだろうし……


……


………………


俺は一体何を考えてたんだ……?今度こそ、俺は正気を取り戻した。……はずだ。セルフチェックで軽めに掛けられてた催眠も解除したし……にしてもまたか。連続ということはなにか原因があるとは思うのだが……。


「……なんか知らんけど催眠食らってたっぽい、全部忘れてくれ」


とりあえず、今はこの凍った空気を何とかしたいところである。


・あ、直った

・さすがに言い訳として無理があるだろ


「……めちゃくちゃ言い訳っぽいのは自覚してますのでね、とりあえず何もなかった体で企画説明でもしていこうと思います」


・おいこら

・なかったことにするな

・逃げるな卑怯者


「さて!というわけで今回の企画はですね、みずなからの持ち込み企画となっております!実は企画の内容は俺も知らなくて今初めて聞くんですけども、どんな変なことをやらされるのかというドキドキで胸がいっぱいでございます。というわけで説明どうぞ!」


「はい!それじゃあ今日の企画を発表します!……題して![白雪ちゃんの指示通りに動けば、モンスターが出てこないタイプのエロトラップダンジョン踏破出来ちゃう説]~~~!!!」


・ほむ?

・えっとつまり?


「今日の配信は、私が目隠しをして白雪ちゃんの指示通りに動くだけという単純なものとなっています!」



「私は出来るだけ指示にあった行動を迅速に、そして白雪ちゃんは出来るだけ私にわかりやすい指示を的確に、二人の絆が試される企画で~す!」


「待て待て待て待て待て待て待て待て待て!!!!!!!重い重い重い重い重い!!!」


・うわうるさ

・まぁ落ち着けよ


え、何この反応俺がおかしいの?


「重いって……なにが?」


「責任と信頼が重すぎるって……!コラボで出す企画ってもっと緩いやつだから、な?昆虫食と生ゴミ入れて1週間放置した生卵食べるくらい違うから。というかみずなは怖くないのか?俺が失敗したら女子として致命的な傷を負うことになるんだぞ?」


「信じてるからね」


おっっっっっも……。


「正直やりたくないんだけど……俺だって一応自分がヤられる覚悟は出来てるけどさ?自分のミスでみずながってなるとさすがにちょっと……」


「大丈夫大丈夫!」


暗に明に苦言を呈しても、みずなは何故かやる気に満ち溢れているようだった。


・本人がいいって言ってるんだし別にいいんじゃない?

・白雪ちゃんが失敗しなければええねん

・いざと言う時に助ければええねん


心なしか、コメントにまで違和感を覚えてしまう。


とはいえ、配信は配信だ。始めてしまった以上、急にここで止めるというのも難しい。理想を言えば俺がフォローする前提でバレないようにミスをし、ダメだったねと〆ることだが……。


底知れない不気味さと恐怖を隠しながら、俺はみずなとダンジョンに潜るのだった。

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