【療養中だけど】ホラゲーする配信

・待機

・この待機画面久しぶりに見た気がする

・ダンジョン配信者が療養期間中にやるゲームやらドッキリやらの配信でしか得られない栄養素は確実に存在してます


「こんばんは、最近髪の毛を魔力タンクとして運用してみたら、夜にうっすら光ってまぶしい白雪です」


・アホ?

・何それ気になる


「せっかくだしちょっと見せるわ……ほら、こんな感じ。わかる?」


先程座ったばかりの椅子から立ち上がり、部屋の入り口まで電気を消すために移動する。パチッと音を立てて電気を消すと、ぼうっと光っている髪の毛がよく見えるようになる。


・想像以上に明るくて草

・ヤリチンの部屋においてある間接照明みたいやな

・それ今はなんか白っぽいですけど色変えられたりとかするんですか?


「どうだろ……やったことないから多分安定はさせられないと思うぞ……う~ん、やっぱむずいわこれ」


・ゲーミング白雪になってて草

・これじゃ白雪ちゃんじゃなくて虹雪ちゃんだよ・・・

・オタクの部屋においてある公式が悪ふざけで作ったフィギュア型スタンドライトみたいになってしまった


「誰が箱から出した時には電池切れだコラ」


・そこまで言ってないじゃん

・捏造すんな

・そんな白雪ちゃんも好きだよ


「そいつはどうも」


もう十分見せたし、そろそろ電気をつけても大丈夫だな。大分話も散らかってしまったし、そろそろ……。


「そんなことは置いておいて、今日の本題な、本日は、魔力不足のせいで満足にできないダンジョン探索の代わりに、中編ホラーゲームをやっていこうと思います!想定クリア時間は1時間半!いつもの俺の配信時間の2倍くらいかかりますね!」


・普段の配信がアホ短いだけでは?

・正直もっと長時間配信してほしい

・ひめいだ!!


「それではさっそく始めていきましょう、OPムービーとかは……ない感じなんですね。チュートリアルもなし、プレイ中に必要になったらって感じなんですかね?……ってこのゲーム主人公向いてる方向しか見えないの!?」


・ちょっと昔のはそういうゲームもあるらしいね

・リアル志向ってやつやな

・より現実に近いゲーム体験を云々みたいな


「こちとら現実でも後ろ側認識できるんだわ、見えないと怖いよ〜」


・例外すぎて

・いまも索敵してるん?


「今は魔力不足で索敵できないから……しばらくお外出てないんですよね、全身まだちょっと痛いし……自宅だと普段は索敵切って、身体能力強化も内臓と頭と足の裏だけに回してます。魔力なしのみぞおちキックくらいならダメージ全然ないし、レゴ踏んでも痛くない最強のからだですよ」


・羨ましすぎる

・子持ちの身としてはありがたい反面逆にそうだったとしても壊さないか心配で結局警戒量は変わらなそう

・今は?


「今は……多分悶絶しますね……」


・草

・レゴ踏んで悶絶する白雪ちゃん草

・健全ランドの足つぼマット踏んでるおっさんじゃん


「やだなぁ〜もう〜こんなピチピチで若いのに〜もうこんな女子小学生みたいなのがね、足つぼマットなんかで悶絶するわけ……」


・本当に若い人はピチピチなんて言わないよ

・女子小学生(成人済み、2年程前に日本酒一升瓶1本飲み干したザル)

・やーいやーいおばさんやーい


「キレそう……おばさんじゃねぇよ?」


正確にはおじさんだしな!ガハハ!


・たしかに、区分的にはどっちかと言うとロリババアですもんね

・ごめんなさい、年齢の話は禁句でしたよね・・・で実際いくつなんですか?


「永遠の20歳です、酒が飲めるギリギリの年齢なので」


・酒カスがよぉ・・・

・デビューした時と見た目変わってないからガチで年齢不詳なの笑えるんだよな

・デビュー時のダンジョン探索の年齢制限が12歳中学生以上だったし確実にもう高校生より上ではあるはずなんよな・・・その年からエロトラップダンジョン配信してたとは思えないし飲酒してたしでもっと上な気はするけど


「俺の年齢なんてどうでもいいんだよ、今はゲームだゲーム。……なるほど、スティック移動、AでアクションBでダッシュXでメニュー……アクションって何?」


・物拾ったりとかドア開けたりとか

・移動以外の行動全部?

・とりあえず困ったらアクション


「なるほど」


ひとまず、画面の下の方にでてきた目標の通りに動いてみるか。今は、下の方に行く……


「えっ!あっ!……ふむ、ここでOPムービーが入る、と……」


・今更すまし顔してももう無理だよ


画面には、スローモーションで崖を滑落した少女……だいたい10歳くらいの、見た目で言えば俺と同じくらいの女の子が、着地した場所で不気味なトンネルを見つける映像が流れた。


「落下は怖いよねぇ……」


・しみじみと言ってて草

・経験者さん・・・

・言葉に重みがあるな


「うーむ……わかってて言うんだけどさ?俺これくらいの崖なら普通に登れるんだけど……」


・草

・リアルがゲームを越すな定期

・パッと見傾斜80°くらいありそうだけど行けるん?

・い、今は出来ないし・・・?


「よじ登りじゃなくてジャンプだから傾斜はそんなに関係ない……あーでもエロトラップダンジョンの中だと跳べても3mくらいが限界かも?全力ジャンプだけだったら一般ダンジョンの方が経験あるし分からんなぁ……」


・それでもワイらは勝てない、と・・・

・ただのジャンプ草

・1年以上前に50m素でジャンプしたニキもおるしダンジョン探索界隈どうなっとんねん


「とりあえずこんなとこでくだらないこと言ってても埒があきませんし、さっさとゲーム進めます。見るからに怪しいけどトンネルの中……くっら!!」


ゲームの進行のためにトンネルに入ると、画面が恐ろしく暗くなる。ついでに、さっき電気を消したままの部屋も、画面からの光が絶えたことによって―――暗くならんな。俺の髪の毛が今ゲーミングなことを忘れていた。


「気づいちゃったんだけどさ……この主人公も、髪の毛をゲーミングにすれば暗くないんじゃないか……!?」


・そんなのされたらもうホラゲーとして見れないw

・これは今出来ないじゃんが通じひんわ・・・

・ふざけてないで真面目にやれ


「いかにもって感じの雰囲気で怖いんだもん……」


・草

・ダンジョンでもゴースト系なんて出てくるじゃん


「ダンジョンで出てくる奴らなんて、倒し方もどこから来るかもわかってるんだから怖いわけないじゃん……ゲームで俺ができることなんてモニターパンチで強制終了するくらいだからな?」


・するな

・やめろ

・みずみずに怒られるぞ


コメントと会話することで恐怖を紛らわせつつトンネルを抜けると、四方を断崖絶壁に囲まれた古臭い学校のエリア紹介みたいな演出が入る。角度は先程落ちてきたのと同じくらいのものだが、その崖は上に何があるか見えない程高くまで続いている。


「なになに、『どこかに崖を上るのに使えるものがあるかもしれない』……あるかぁ?」


・うちの母校には7mくらいの伸縮式梯子が常備されてたよ

・鉤付きロープとかあるかもしれんやん!


お前の母校すげぇな……。


そんなことを思いつつ、少し探索してみると昇降口のガラス扉が1枚、フレームの老朽化か何かで外れていた。


「ここから入る感じか……梯子がある場所って言ったらやっぱり屋上とかかね?」


・4階のベランダとかもギリありそう

・防災倉庫とか?

・梯子じゃないけど体育倉庫に棒高跳び用の棒くらいはあるかもしれん


ほうほう、あ、ゲームに目的地の指示出てきたな。


「職員室……?『職員室に行って、出入りするための鍵をとってこよう』……なんかコイツ慣れてね……?」


とはいえ、目標が定まっている以上指示通りに職員室に向かう。そうして不用心に机の上に置かれた鍵束を拾うと、どこからか湿った足音が聞こえてきた。


「絶対これ今から逃げる奴じゃん……」


来た方向に戻ろうと手早く後ろを向いた瞬間、ローディング時間ゼロでムービーに入り、画面全体に口が大きく避けた黒い怪物が映り込む。


「!!!!!!!!!!?????????」


・ビクッてして草

・めっちゃビビってて正直おもろい

・初見はビビるよな・・・


職員室の中を必死に駆け抜け、入ってきた時とは反対側からの扉から出る。背後が見えないのに足音だけ聞こえるのが滅茶苦茶怖い。せめて見えればどれくらい余裕があるかわかるのに……。


「……何とか撒けたみたいですね……。とりあえずここの教室には……セーブポイントだ!」


・お~

・逃げてる間無言なの笑っちゃった


「……それでは、本日の配信はここで終わりとさせていただきます!」


・おい

・おい待て

・待てやおい


「少し早めでしたがね、視聴者の皆様方も見に来てくれてありがとうございました!それではまた、次の配信でお会いしましょう!」


・逃げんな

・1時間半くらいって言ってたじゃん

・まだ配信開始15分くらいしかたってへんぞ


「クリア想定時間であって配信時間とは言ってないです~ほなまた~」


・屁理屈すぎる

・そのうち続きをやるならまぁいいよ


(このライブは終了しました リプレイを再生)


・ガチで終わって草

・これでホントに終わるやつがいるか

・白雪ちゃんが初めて完全敗北したシーンがこれですか


負けてないが????


……


……負けてないが????

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る