第16話ㅤただただかみ合わせが悪いことってあるよね
「みなさまどうもこんにちは、2日たっても全身痛い、現在魔力不足で身体能力一般人な白雪です」
・開始の挨拶がちょっと卑屈だぁ・・・
・身体能力一般人なのに配信……ひらめいた
・どれくらいなん?
「今日の配信はあまり体を使わないので……今の身体能力はせいぜい細マッチョ成人男性くらいですね、集団でリンチされたら勝てる気がしません、あとみずなにも勝てませんでした」
髪の毛が戦闘で使えるかは分からないし……というか使えたとしても人目がある場所や配信中は使わないが。見た目の問題もあるし、いざと言う時の隠し球として取っておくことにしたということもある。奥の手は不意打ちがベストよ。
・一般人の中でも上澄みの方じゃねぇか
・集団じゃなければ勝てるのかよ・・・いやまぁたしかに対サキュバスちゃんの避け方とかだいぶ手慣れてたけども
・みずみずには勝てなかったんだ・・・
「ああ見えて結構強いですので、魔力がすっからかんの状態だとさすがに……さてさて、本日の配信はそんなみずなに関するものになっております。先日みずなにめちゃくちゃ痛い思いをさせられましてね、割と怒ってるので今日は仕返しをします」
・なるほど?
・ドッキリ配信?
「それで、本日の内容ですが……色々考えたんですけどね、トイレットペーパーに唐辛子スプレーとか、寝てるみずなの鼻にわさびチューブとか、お風呂の温度が49℃とか」
・それじゃだめなん
・ちょっと過激だけどまぁ……ってくらいじゃない?
・べつにいいんじゃないですか?
「みずなが俺と同じ状況ならそれでもいいんですけど、魔力で強化されてると効かないんですよね……かと言って、強化されてる前提でやったら気が緩んでた時に大事故が起きかねませんし」
・なるほど
・みずみずから白雪ちゃんのドッキリは普通の感じだったけど
・強化されてる前提だとどんな感じの内容になるん?
「腹部キックはお互い魔力無しでしたし、それ以外は精神攻撃系ドッキリでしたからね。魔力強化含めてドッキリを組むとなると、眼球デスソースとか肛門エアコンプレッサーとか湯船に120℃の油張るとかになってしまうので、やれないんですよねぇ……」
・しんでしまう
・そりゃたしかに・・・・
・失敗した時のダメージがさすがに無視できないですね
そう、俺はあくまでみずなにお仕置がしたいのであって、みずなに傷を負わせたいわけでは無いのである。マッサージだって死ぬほど痛かったが、終わったあとはちょっと楽になったし……
・そもそもみずみずどっかで白雪ちゃんを心配してるみたいな投稿してなかったっけ
「え、何それ詳しく。場合によってはお仕置+仕返しから仕返し単品になるかもしれないぞそれ」
・今探してる
・仕返しはするのねw
・どっかで見た気がする・・・
・あった、これ。 https〜
優秀。内容は……。
『雪ちんがもう無理しないように私のモノだって身体に教え込んでます
ボロボロで社長に運び込まれて私のメンタルに即死攻撃を仕掛けた罪は重い
これでちょっとは無理しなくなるといいな』
百合営業フィルターが邪魔すぎる……。が、まぁ、なんとなくはわかったような気がする。
「なるほどねぇ……よし、今回のドッキリの内容は軽めのにします」
それはそれとしてドッキリはするけど、もう枠立てちゃったし。俺の意思じゃないんだよ〜ホントダヨー。
・これで許そうって思うの思考回路イカレてる?
・ちょっっっっっっっっっr
・もはや落ちてるから内容に関係なく許してしまうんやね
〈《》〉
「雪ちんただいま〜、またなんか変なことやってたりしないよね?」
結局、みずなへのドッキリは何もしないということにした。
ああいや、ドッキリをしないということではなくて、「何もしないドッキリ」を仕掛けるということである。
みずなには先程ドッキリするから配信見ないでというメッセージを送り、いつ来るかいつ来るかとビクビクしてる姿を楽しむドッキリだ。性格わっる。
「おかえり〜、風呂湧いてるし飯もできてるぞ~」
みずなが帰ってくる前にいろいろと準備をしておいた。湯船にドライアイスと入浴剤を入れて見えない恐怖を煽る構図にしたり、夕食に真っ赤っかで滅茶苦茶辛そうなトマトスープを作ったり。とにかくみずなを怖がらせるためのセットだ。準備してたときはここまでするつもりではなかったのだが、楽しくてつい……
みずなは一見何ともなさそうだ。事前にドッキリするよと言っておいてこの普段通りっぽさを出せるのはなかなかすごい。さすがに付き合いが長いし俺的には少し不自然だが、本当にドッキリを伝えても問題なさそうなくらいだ。
・さぁ、始まって参りました
・みずみずの演技力大したモノやね、今回に関しては意味ないけど
「え~っと、それじゃあ先にお風呂に……」
「そうだみずな、世話してくれたお礼に背中流すよ」
「……わかった、ありがと!」
・めっちゃ躊躇してて草
・そらこわいわな・・・
みずなと一緒に風呂に入るのは、最後に入ったのがお泊り会2日目だから2週間ぶり、くらいだろうか。
一緒に風呂に入って、煙と真っ黒なお湯にビビっているみずなを見て楽しんで。
真っ赤なトマトスープをよそって、ビビっているみずなを見て楽しんで、電話が来たといって離席して、ビビっているみずなをカメラ越しに見て楽しんで、そのまま少し外出して、さらにビビっているみずなを見てまた楽しんで……。
後々、俺はこのドッキリをやらなければ気づけたんじゃないか、もっと早いうちに問題を解決できたんじゃないか、こんなことが起こる前にすべてを終わらせることができていたんじゃないかと後悔することとなるのだが、それはこの時の俺が知るはずもないことである。
〈《》〉
「17番さん、撒き餌の活用はうまくいきそうですか?」
「もちろんです、あれだけターゲットに近しい人間を使えるのですから……まだ少し開花するまでに時間はかかるでしょうが、1週間以内に使えるのは確実かと」
「それは素晴らしい。今のうちに他の者たちにも準備を進めさせましょう。ボスにイイ報告ができる日が……18番さんの仇を打てる日が、とても、とっても楽しみです……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます