【水樹みずなサブちゃんねる】打ち合わせと聞いてたのに実は全部配信してたら、白雪ちゃんはどんな反応をするのか!ドッキリ!!

「どうも~……白雪ちゃんが来たので、そろそろ配信はじめま~す」


インターホンが鳴って、小さな画面にリュックを背負いビニール袋を持った雪ちんが映ったのを確認すると、ドアを開ける前に配信をはじめる。


・ささやき声可愛い

・あれ、これさっきの触手服では・・・?

・これ視点リビングと玄関と寝室とキッチン?まんま監視カメラって感じする


あまり違和感を持たれないように手短に、でも、視聴者さん達がわからないまま始まらないように、今回の配信の概要が大体わかるように……


「早速イタズラでもしかけちゃいましょうか、違和感持たれないくらいに…………合言葉を言いなさい……」


『なんじゃそりゃ、そういうの良いから早く開けてくれ』


「合言葉を言いなさい……」


・RPGの名前だけしかないモブ?

・何か言うまで絶対に入れないという強い意志を感じる


『……荷物、割と重いから早めに開けてほしいんだけど……』


インターホン越しにこちらにジト目を向ける白雪ちゃんに少し申し訳ない気持ちになりつつ、配信中なのでこのまま続ける。


「合言葉を言いなさい……」


『水樹みずなは今から二年前、俺と行った旅行で温泉に入ろうとして、みずなの性別を間違った受付の人に男湯の方に案内され……』


・え

・エッ!

・ほう・・・その話、詳しく聞かせて頂こうか


え……うそ!?なんでそんなことまだ覚えて……


「……!!雪ちん!待って!待って!」


『なぜかそのまま気づかずに入って、その数分後に平謝りの受付の人と一緒に涙目でプルプルしながら……』


「わああああああああああああああ!!!!!!!!し……ご近所さんに聞かれちゃったらどうするの!!!???」


・ドアバコォン!って感じで開けてて草

・音聞こえない・・・ミュートした?

・詳しく!詳しく!きかせろ!


急いでドアを開けて、雪ちんの口を塞ぐ。……コメントを見る限り、何とか無事にミュートは出来たみたい。


「よっこいせっと、そんじゃお邪魔しまーす」


「ねえ!?雪ちん、雪ちんってば!!」


・あ、音聞こえるようになった

・白雪ちゃんが何言ったのか気になるねぇ

・いたずら仕掛けて返り討ちにされてるの笑えるな


「あ、そうそう、とりあえずおやつにクッキー買ってきたけど食うか?」


「………………たべる……」


とはいえ、そもそもドッキリをしようとしている負い目がある以上そんなに強く言うこともできず、結局そのタイミングで文句を言うのは終わりにする。


・ちょろい

・かわいい

・草


「じゃーとりあえず買ってきたもの冷蔵庫の中入れとくな…………それで、企画会議っつってもアイデアないけどどうするよ?」


「う~ん……時間あるしちょっと遊んでから考えればいいんじゃない?」


企画会議……は、できれば視聴者さんたちには見られたくないし……うん。ここは雪ちんの気をそらす方針かな?


「だったら……今が16:00だから、とりあえず17:30辺りから晩飯を作るとして、その間にみずなは風呂でも沸かしといてくれるか?いろいろ終わってから気楽に考えよう」


・白雪ちゃんの手料理!?

・おふろ!!!


「たしかに!そーしよ、雪ちん!」




〈《》〉




ふわあぁ……あれ?なんで私雪ちんとおんなじ布団で寝て……?


・おはようございます

・昨夜はお楽しみでしたね

・白雪ちゃんのおなかにダイビング頭突き決めてたよ、あとで謝ろ


「おはよう……うぇ!?私そんなことしてたの……?」


カメラに映らないように布団にもぐり、雪ちんの腹部を確認する。……すべすべでぷにぷにで真っ白だ。特に痕とかはついてないみたいで安心したよ……


「コホン、とりあえず昨日は白雪ちゃんのオフモードをたくさん見れたからね、今日は逆に、白雪ちゃんにどれくらいいたずらしたらドッキリって気づくか検証してくよ~!」


・お~

・白雪ちゃんわりとその辺緩そう


「ひとまず、今日の朝は寝てる白雪ちゃんを蹴っ飛ばして起こします!」


・ひとまず・・・?

・俺がやられたら100%切れるが?

・飛ばすねぇ


「それじゃ、いっきま~す!……えい!雪ち~ん!!朝だよ~!!!おきて~!!!!!スマプラやろ~!!」


「ぐえっ!!!!……ふわぁ、ふぉりあぇふめひとりあえずくおう」


・いともたやすく行われるえげつない行為

・割とケロッとしてるの草

・昨日の夜と合わせて二回腹にがっつり食らって平気なのおかしいよ




〈《》〉




「雪ち~ん!あれとって~!」


「はいよ、バターね」


・あれだけで通じるの草

・昨日から思ってたけど結構仲いいんやな・・・


「あっ……忘れてた、あれもおねが~い!」


「バターナイフなら食器入れの中に刺さってると思うぞ」


・エスパー?


「ほんとだ!気づかなかったよ……ごめ~ん!あれもおねが~い!!!」


・白雪ちゃんの察する能力と記憶力高すぎる

・あれだけで伝わると思ってるみずなも信頼度の高さがうかがえるな・・・


「おっと悪い悪い、ゆで卵なのに塩忘れてたわ


「雪ちん……」


「どうした?コーヒーなら今淹れてるところだけど。ミルクと砂糖多めでよかったよな?」


・もしかしてこの二人夫婦だったりする?

・ミルクと砂糖多めのみずみずかわいい


「ありがと~、それであってるよ~」


いやいや、配信中だからおいしいとは思うけどさ、あとあってるけどさ、それじゃなくて……


「……じゃなくて!!……なんであれで全部通じるの!!??」


「勘?」


「えぇ……」


・はい夫婦

・女の勘は鋭いってやつですね




〈《》〉




まったくもう、まさか雪ちんがそんなにひどい食生活だったなんて……


「視聴者のみんなもそう思うよね?」


・俺よりやばくてひええってなったよ・・・

・そんな生活してたらそりゃ身長も伸びんわなって感じだったよねぇ・・・


「とりあえず早く片付けて、白雪ちゃんができるだけ早く健康な生活をできるようにしないと……」


・こんな理由で同棲し始めるカップルがいるとは思いませんでした

・みずみずの目が浮気を咎める彼女みたいでガチで怖かった

5000『今月の上納金です、お納めください』


「姉御じゃないよっ!!??」


・くさ

・そんなにうるさくしたらバレるぞ

・あんなに怯えてる白雪ちゃんは初めて見たよ、いいもん見してくれてありがとう


……そ、そうだよね、静かに静かに………………


「みずな〜!!晩飯できたぞ〜!!!」


 いつの間にか随分と時間が経ってしまっていたみたいだ。片づけていた部屋を見ると、明後日には終わりそうなくらいにはきれいになっていた。


「わかった〜!!すぐ行くから先入ってて~!!」


「あいよ~!」


白雪ちゃんにそう返し、こそこそ声で視聴者さんに今からやることを伝える。


「というわけで、一緒にお風呂入らない?のいたずらがなんか許されちゃったのでお風呂入ってきま~す……!しばらくマイクオンリーで……!!」




〈《》〉




困ったことになった。


「白雪ちゃん、全然気づかないんだけど……??」


・朝の蹴り起こすいたずらが一番過激だったしなぁ・・・

・もうちょっとデカいの一発かまさないと気づかないと思う


当の雪ちんは、現在カノレピスで汚れてしまった体を洗うために三回目のお風呂中だ。正直最後の一回に関してはよくわからない……。


・大分ポンコツ感あったよね

・ダンジョン潜ってるときよりもかわいい


「視聴者のみんなは、どうすれば白雪ちゃんが気付いてくれると思う……?」


・襲え

・一緒の布団で寝るとか?

・相当やばいことやればさすがに気づくんじゃない?


……やばいこと、やばいことかぁ……。一緒の布団で寝るのはたぶん駄目だし、襲うって……その、そういうことだよね……?それはさすがに恥ずかしいっていうか……


・とりあえずパンツ被ってみたら?


……うん、やってみよう!カメラはないし、それならまだ……そっちよりははずかしくない、かもしれない?


更衣室と廊下を仕切るドアを開け、恐る恐る白雪ちゃんが脱いだ洋服を漁ってみる。……ドッキリ、ドッキリって後からネタバラシすれば、さすがに嫌われたりしない、よね……?


「ゆ、雪ちんっ!!」


「ん~?どうした?もう少ししたら上がるからちょっと待っててくれれば……」


浴室の中で反射し、少しくぐもった声が耳に入ってくる。


「パ、パンツ!被ってもいい!?」


い、言っちゃった……言っちゃった……!!私大分変なこと言ってるよね?もしかしたらこのまま急いで帰って、そのまま……


「……みずながいいなら別にいいけど……逆にそれ聞くの、バレて怒られるより恥ずかしくないか……?それでいいのか……?」


え????……ええい!もう引き返せないもんね!こうなったらやけくそだよ!


「……本当に被ったのか……。なんというか……今は若いけど、将来後悔すると思うぞ……」


そう言った雪ちんは、とてもかわいそうなものを見る目をしていた。




〈《》〉




まずい、そろそろさすがにまずい。なにがまずいって、このままだと私がただ雪ちんのパンツを被りたくて被っただけの変態という認識が雪ちんの中で固定されてしまう。


「ね、ねぇ雪ちん、まだ起きてる……?」


 恐怖とかすかな願いを込め、私はついに引き返せない場所まで進んでしまった。


「まだ起きてるけどどうかしたか?」


「よかった、じゃあさ…………いまから……えっち、しない?」


雪ちんが信じられないものを見るような目で私の顔を見つめた。それからしばらくして、あきれたような、それでいてどこか納得したような表情をして、私に答えを告げる。


「別にいいけど、ヤるなら配信止めてからな?」


「……よかったよかった!さすがにドッキリだって気づいてくれましたね!」


・さすがにねw

・正直ここまでの関係性見てると・・・って思ってたけど気づいてくれて安心した


配信用の機材と私を繋げていた魔法を雪ちんにもおすそ分けし、コメントが見えるようにする。


「ちなみにこれ、どこから配信してたんだ……?」


「え?雪ちんが昨日来た時から」


・最初から

・ずっと

・全部


「えぇ……」


「ではでは!今回の企画!白雪ちゃんは、少しずつ行動をエスカレートさせていったら、いつ配信中だと気づくのかドッキリは、夜のお誘いという結果になりました!二日間おつきあいしてくれた視聴者の皆様、ありがとうございました~!おやすみなさい!」


・おつ

・おつ

・おもろかった


「じゃ!雪ちんもお休み!」


「……ああ、おやすみ」




〈《》〉




「視聴者の皆様、おはようございま~す……!!」


・突発配信じゃん

・白雪ちゃんの寝顔でも盗撮するん?


「いまから、白雪ちゃんにとあるドッキリをしていこうと思いま~す」


洗面所まで行き、冷たい水で顔を洗って目を覚ます。


・まだやるんか・・・?

・寝起きドッキリだ!


その水を持ってきたペットボトルに汲んで……。


「白雪ちゃんっていつもクールだったりつかみどころがない感じじゃないですか、なので、今日はそんな白雪ちゃんがお泊り会でおねしょしちゃったらどんな反応をするか、検証しようとおもいま~す……!」


・大分気になる

・これはすごいドッキリだ・・・


できるだけ忍び足で、音をたてないように……!!雪ちんの寝顔を眺めながら水をかけていると、パチッと目が開いた。


そのあとたくさん怒られて、濡れた色々を片付けたことは語るまでもない。雪ちんごめんなさい、完全に私が悪いのに片付けまで手伝ってくれてありがとうございます、と言ったら、ドッキリなんてそんなもんだろ、言って許してくれた。


心が痛い……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る