第9話 軽い違和感を覚えることって、あとから振り返ってみるとめちゃくちゃ納得できる理由があったりするよね
「雪ち~ん!!朝だよ~!!!おきて~!!!!!スマプラやろ~!!」
「ぐえっ!!!!……ふわぁ、
「お~、なんか……寝起きって感じだね」
なんだそりゃ?
〈《》〉
「雪ち~ん!あれとって~!」
「はいよ、バターね」
「あっ……忘れてた、あれもおねが~い!」
「バターナイフなら食器入れの中に刺さってると思うぞ」
「ほんとだ!気づかなかったよ……ごめ~ん!あれもおねが~い!!!」
「おっと悪い悪い、ゆで卵なのに塩忘れてたわ」
「雪ちん……」
「どうした?コーヒーなら今淹れてるところだけど。ミルクと砂糖多めでよかったよな?」
「ありがと~、それであってるよ~……じゃなくて!!……なんであれで全部通じるの!!??」
え?あ~……特にこれといった理由があるわけではないんだけどなぁ……まぁ、強いて言うなら……
「勘?」
「えぇ……」
日曜から朝8時にたたき起こされたのち、そんな一幕がありつつ。
今日の朝食はトーストと焼いたベーコン、それからゆで卵とみずなはコーヒー、俺はおこちゃま舌なのでオレンジジュースだ。この体になってから甘いものと味が濃いものが美味いねんな……。
「雪ちんって普段からこういう感じの朝ご飯なの?」
「いや?いつもは菓子パンとか総菜パンだけど」
「……お昼は?」
「カップ麺とか袋麵とか?……あとたまにコンビニ弁当も食べるな」
「………………夜は……?」
「冷凍のから揚げとか餃子チンして、つまみながら酒」
「もうちょっとさ、健康的な食生活しよっか?」
え、ずっとそんな感じの生活だし、別に……ヒェッ!表情も声もいつもより優しいのに目が笑ってないんだけど!!!
「めんどく……ごめんなさいなんでもないです……健康的な食生活させていただきます……」
「作るのがめんどくさいなら、私が作ってあげるから、ね?」
「あ、アリガトウゴザイマス……」
ひええ……。
「まったくもう……ほら、ご飯食べるよ?冷めちゃう冷めちゃう」
ほっ、よかった。目がいつも通りの光を帯びてる。どうやら助かったらしい。
「そういえば聞いてなかったんだけどさ、雪ちんって一日にどれくらいお酒飲むの?お猪口とかだと何杯くらい?」
「え、えっと、し、四……」
「4杯かぁ~、体ちっちゃいのに結構飲むんだね?それともお酒飲んでる人たちの中だと全然少ないの?」
「お猪口じゃなくて、その……四合瓶一本くらい……」
あ、みずなの目がドス黒くなってる。わり、俺死んだわ……。
「ねぇ雪ちん」
「ハイ」
「明日からしばらくお酒禁止ね?」
「ハイ……」
「あと、一人暮らしさせるのが不安だからしばらくウチに住んで?」
「え」
「とりあえず一か月くらいね、返事は?」
「ハ、ハイ………………」
さようなら、俺のグーたら生活……。残念だけど、俺はお前よりも命の安全をとるよ……。
〈《》〉
その後なんとかみずなに機嫌を直してもらおうと必死に色々してみたものの全て不発に終わり。今までだったらどれかひとつくらいヒットしたはずなんだけどな……とか思いながら、既に晩飯の準備をする時間になってしまったため、作る旨をみずなに伝える。
「どれくらいかかるの?」
「だいたい1時間くらい……あ、です、はい」
「だったら、お風呂沸かしたら一緒に入ろっか。待ってる間に雪ちん用に空き部屋片付けとくね」
……これは……機嫌を直してくれた、ということでいいのだろうか……?
「お、おう……」
……気を取り直して、白雪、3×20分クッキング〜!本日作っていくのはじゃがいものポタージュ、フライドポテト、手ごねハンバーグです!昨日餃子の皮使い切ったら、何故か今日はひき肉売ってたよ。
ひとまず洗って皮を剥いたじゃがいもを5個くらい長方形のブロック状になるように切り落とし、そこから見慣れた形へと切っていく。
切り終えたら、余った端っこや形や大きさが微妙なものを少し細かくして、コンソメキューブを2つ投入し鍋でグズグズになるまで茹でる。
見慣れた形になったじゃがいもはボウルに張った水に晒しておき、その間にハンバーグのタネを作って、成型したタネの中心部分に氷を埋め込む。
ハンバーグを焼きながら、グズグズになったじゃがいもをミキサーにかけ、牛乳を加えてもう一度混ぜるとコンロからどかし使用済みの油の上澄み部分を鍋に大量に入れて、十分に温まるまで火にかける。
熱した油にポテトを入れて、水分が抜けて浮いてくるのを待つ間にハンバーグの3個目と4個目を投入、両方完成したら火を止め、フライドポテトに食塩、充分に冷ませたポタージュに刻んだパセリを乗せて完成だ。フライドポテトが少し多い気もするが、つまんで食べるにはちょうどいいだろう(昨日ぶり2回目)。
「みずな〜!!晩飯できたぞ〜!!!」
「わかった〜!!すぐ行くから先入ってて~!!」
「あいよ~!」
〈《》〉
「雪ち~ん!はいるよ~!」
風呂に入ってから二分程度して、そう声を掛けながらみずなが入ってきた。俺が座っていることもあって、初めて会ったころとは比べ物にならない程成長した胸部装甲がどーんと目に入ってくる。
……悲しいくらいいやらしい気持ちが湧いてこない。それがこんな体になったからか、それともみずなを妹みたいなものだと思っているからなのかはわからないが……いや、妹みたいなものだと思ってるって絶対そういう目で見てるな。じゃあこんな体になったのが原因か。
そのまま、みずなが椅子に座って頭を洗い始める。
「……」
ちょっとしたいたずら心が湧いてきて、泡を流し始めたみずなの頭におもむろにシャンプーをワンプッシュした。
「……??」
ちょっと首傾げてる。結構面白いなこれ、もうワンプッシュくらいしよう。
「…………???????」
ヤバいどうしよこれ滅茶苦茶面白い、もうワンプッシュくらいしてもバレないだろ。
「ねえ雪ちん!無限シャンプーしてるでしょ!!!」
あ、バレた。まぁいいや、俺も髪洗お。
男だった時よりは丁寧に髪を洗い、洗い流すタイミングになって上からシャワーと一緒に声が降ってきた。
「さっきのお返しだよっ!!!!」
その瞬間、10プッシュ分は超えていそうな大量のシャンプーが頭と手に降り注いだ。
「待ってみずな、出しすぎ出しすぎ!!」
「問答無用だよ!!!!」
その後、数分間にわたって泡を流そうとするたびに俺の頭を新たなシャンプーが襲い掛かるのだった。……悪かった、俺が悪かったから許してくれぇ!!
「まったくもう……次やったら手首しばりつけて湯船に沈めるからね!!」
ペナルティが重すぎる……!
そんなおふざけをしつつ、二人ほぼ同時に体を洗い終わって仲良く湯船につかる。
「あ”~……癒されるぅ~……」
「雪ちん……おじさんみたいだよ……?」
やばいクリティカルヒットした苦しい、苦しい…………うぅ…………
〈《》〉
「さて、さすがにそろそろ企画会議をしようと思うんだが」
「わかった!とりあえずカノレピス入れてくるね!…………はい、おまたせ!」
ちょうど風呂上がりでのど乾いてたからありがたい、さっそく一口…………
「げっほ!!ごほ!!ごっほ!!!……めっちゃ濃いしドロドロしてて喉に絡まるんだけど、これもしかして原液か!!??」
「あっはははは!!!ドッキリだいせいこ~う!!!!」
うえぇ、コップの中に噴き出したから周りは無事だが、その代わりに顔やら髪やら服の中まで入り込んでやがる……
「……とりあえず、もう一回風呂入ってくるわ……」
その後、風呂上がりで頭がぼーっとしてたせいでもう一度原液をのんでしまい、案の定また噴き出してもう一度風呂に入りなおしたり、悪ノリしたみずなに脱いだパンツを被っていい?と聞かれ、俺は気にしないけどみずなはホントにそれでいいんかと聞き返したらしばらく悩んだのちにほんとに被った姿をわざわざ扉を開けて見せられたりということがあったが———
いや、ほんとにそれでいいのか?酔っぱらった俺よりやばいことやってるぞ、お前?
———まぁ、そんな感じで今日も結局進展がないまま一日が終わってしまった。明日一日で企画会議が終わるか心配しながら眠りにつこうとした時のことだ。先程トイレに行ってくるといって部屋を出たみずなが、眠りかけていた俺にささやきかけてきた。
「雪ちん、まだ起きてる……?」
「まだ起きてるけどどうかしたか?」
「よかった、じゃあさ…………いまから……えっち、しない?」
????????????………………………………あ~、あ~!!!!そういうことか!!!!!なるほど、だから……。だとするなら、俺がここでするべき回答はこう……だよな?
いつの間にかベッドから降り、俺の両手首をつかんで布団に押し付けているみずなに答える。
「別にいいけど、ヤるなら配信止めてからな?」
「……よかったよかった!さすがにドッキリだって気づいてくれましたね!」
その言葉と同時に、みずなが配信と接続している魔法を俺にも繋げたのだろう、視界の端に慣れ親しんだコメントが映る。
・さすがにねw
・正直ここまでの関係性見てると・・・って思ってたけど気づいてくれて安心した
「ちなみにこれ、どこから配信してたんだ……?」
「え?雪ちんが昨日来た時から」
・最初から
・ずっと
・全部
「えぇ……」
「ではでは!今回の企画!白雪ちゃんは、少しずつ行動をエスカレートさせていったら、いつ配信中だと気づくのかドッキリは、夜のお誘いという結果になりました!二日間おつきあいしてくれた視聴者の皆様、ありがとうございました~!おやすみなさい!」
・おつ
・おつ
・おもろかった
「じゃ!雪ちんもお休み!」
「……ああ、おやすみ」
いろいろと聞きたい気持ちを抑えて一言それだけ返す。詳しいことは、別に明日聞ければいいだろう。
翌朝、布団が濡れている感触で目を覚ますと、みずなが俺の股のあたりにペットボトルに入れた水をドバドバとかけていた。
「あれ……起きちゃった……?……やばっ、ドッキリ失敗……!!…………おはよう雪ちん!あれ、おねしょしちゃったの?」
…………………………。
「おいこらなにしてくれとんねんみずなああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
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