第2話 最終試験
稜線から射す陽の光が、
「朝か……」
むくっと起き上がり、水辺で顔を洗う。適当に朝食を済ませて、山を下り始めた。
麓に向かって歩を進める。
「バルコ」
声の方に顔を向ける。小麦色のチュニックを着た、父の姿があった。息子の帰りを待っていたようだ。傍らには赤い軍服を着た壮年が立っており、父の視線を追うようにこちらを向いた。
軍馬の騎手だろう。赤服は近衛師団の証で、朝日を弾く胸の
「父上、
二人に歩み寄ったバルコは、そう言って軽く頭を下げた。「うん」と頷いた父は、こちらを顎で指しながら傍らの男に言った。
「
「バルコ・デュッフェルです」
男に身体を向け、辞儀する。父の客人とあれば、こちらから挨拶するのが筋だ。
「サイモン・フリッグ。近衛師団第二連隊長だ」
差し出された手を、バルコは緊張しながら握り返した。第二連隊と言えば、王妃の親衛隊だ。
「話は父君から聞いているよ。何でも……」
「百聞は一見にしかず、だ」
片手を挙げて、父がサイモンの弁を遮った。素直に従う辺り、父を慕っているらしい。父も元軍人であるから、部下だったのかもしれない。
「道着に着替えてきなさい」
汚れたリネンの服を父は目で指した。道着というのは父が着ている小麦色のチュニックの事で、鍛錬の時は決まってこの服装だった。
屋敷に入る。二週間ぶりに再会した母、弟妹との挨拶もそこそこに、バルコは自室に向かって小麦色のチュニックに着替えた。父を待たせているので、足早に庭に戻る。
「よし。では始めよう」
五歩程度の距離を置き、正対する父が言った。脇で見ているサイモンを視界の外にして、バルコは、最終試験に集中した。
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