サムズアップ

 目覚めると,そこには病院の天井が......,

 ではなかった.目覚めると,視界には夜空の星が見えた.

 上半身を起こすと,メアリーと知らない男女2人組が立っていた.

 長髪の女の方は180cmくらいありそうな高身長で,前髪の長い男の方は160cm?くらいだった.女は”MERCURY”と単語が書かれたTシャツを丈の太い黒ズボンにインしている,右腕には団長の腕章をしていた.

 床に俺が放置されているのがやや不服であったが,今はメアリーが心配だ.

「なあ,メアリー! 体は大丈夫か?」

「え? あ,ホシロー君! 私より自分の心配してよ!」

 言われてみれば,あれだけ殴られたんだ.手当はしてくれていたが,まだまだ激烈痛い.

「あのねあのね,どっかから話せばいいか分からないけどね.私の傷はこちらの方が直してくれたの」

 2人組の女の方を俺に紹介してくれた.

「ありがとな」

「別にいいわよ,アンタ達に面倒事を押し付けちゃったし.むしろ,感謝しているわ」

 そう言いながら,俺の背中をバンバン押して来た.めちゃめちゃ痛い.

「アタシは,林原奈々はしばら なな.それで,あっちは三木信二みき しんじ.アンタの名前はいいわ,メアリーちゃんに聞いたから」

 三木は俺に向かって,少し会釈をした.顔をちらっと見るとかなり中性的な感じだ.もしかして,女?

「あの筋肉男は?」

「僕がアイツの記憶をいじってから,アイツは警察に連行されたよ」

 三木は平然とそう言った.トンデモナイことを言ってる.

「じゃあ,俺が通報した警察をさっきから見当たらないのは......」

 三木は林原の体に触れつつ、親指を立てて青い目でニヤリと笑い,ビルの屋上から出ていった.


「というか,なんで俺は殺されかけたんだ? なんで......」

「まあまあ,一旦落ち着いて.どうだ,あたし達の仲間にならないか? あたし達と同じ様に青い目を持った仲間を集めているんだ.グループ名は”OCEANオーシャン団”だ!」

 なんだその団体の名前? 変なの.

 俺だったら,” 瑠璃泉るりせん”にすんのに.

「OCEANには,今青い目の団員は3人いるんだ.アンタが加入すれば5人目」

 は? なんで? 4人目じゃないのか?

 メアリーが黒い目で微笑みながらこう言った.

「私が4人目.目は青くないけどね」

 

「拠点は神奈川の方にあるんだ.良いところよ、多摩川も近いし」

 多摩川近いと何が良いというのだろうか.

「アタシ達,青い目の情報集めてんだ.証拠に1つだけ教えてあげよう」

 林原はパンパンに膨れた俺の顔を触れた.激痛が走る.いってえ.

「アンタは,自分の能力が”他者の能力を無効化する”だと思っているだろ」

「ああ」

「さしずめ,40点って所かな」

 しばらくして何も起きなかったが,黒い目のメアリーが俺の手を握る.

「大丈夫,林原さん良い人だよ」

 その言葉を言われた瞬間,俺の顔の傷はじわじわと治癒していった.

 俺は信じられなかった.俺の仮定した能力と矛盾する.

「アンタはまだ自分の能力を,使いこなせていないだけだ」

 分かったことは,何か条件を満たせば,俺も誰かの能力の影響を受けてしまうことである.

 

「あのね,”信頼”が大事なんだって」

 メアリーは俺の手を握っていたことに気づき,赤い目になって,急いで手を離した.

 その瞬間,彼女の姿が見えなくなった.

「メアリーの能力と,アンタの能力は相性が悪いね」

 そういうことか.俺が彼女を信頼しているから.

「彼女の目が赤くならない様に,アンタが何とかすればいいじゃない」

 俺は再び手を握られた.握ってきた相手の姿は見えないけど.

 

 林原は俺の体の治療をし,傷を完治させた.その間,ずっと俺の片手は暇にならなかった.

 しばらくすると,メアリーの姿も見えるようになってきた.

 「それで? ホシローも林原さん達の仲間になるの?」

 この時の反応は,ここに書くまでもないだろう.

 

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SHE SEE SEA ラムネ @otamesi4869

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