野鳥観察
私、工藤あやめ。還暦過ぎて娘と二人暮らし。私がその鳥を見かけたのは一昨年の秋の事だった。
ヤマガラに似た容姿なのだが、鳴き声が違いヤマガラではないことは解った。その時は遠くて結局なんという鳥か解らなかった。
昨年の秋、又その鳥がやってきた。近所のお宅の屋根に止まって美しくさえずっている。いろいろ調べてみたが・・・。
今年に入って、娘が偶然家のブロック塀に止まっているのを見かけた。娘が調べてやっと種類が解った。
『イソヒヨドリ』漢字は『磯鵯』と書く。『海岸の岩場などに生息してヒヨドリに似た鳥』というのが命名の理由らしい。近年住宅地で目撃されるようになったそうだ。
それにヒヨドリではなく、ヒバリに近い種類だ。
オスは頭から尾。翼も濃紺。腹部はレンガ色でとても美しい。『幸せの青い鳥』とも呼ばれている。
メスは多くの鳥類がそうだがグレー系の光沢のある色をしている。
春になるとオスは近所の家の屋根の上でしきりにさえずるようになった。そのさえずりはとても美しく、種類も多く私達の癒しになった。
4月半ば。私は「ケケケケケ」というカエルに似た鳴き声を聞いた。よく観察してみるとオスが電柱に止まってしきりに鳴いている。そしていつもさえずっていたお宅の屋根の隙間にメスが入っていくのを見かけた。どうやらオスの鳴き声は警戒音らしい。
メスが入るのを見かけて1週間ほど経ったろうか、「ピー!ピー!」と雛の鳴く声が聞こえるようになった。オスは巣の周りで警戒を続け、メスが餌を運んでくるのが見られるようになった。
5月の初め、ふと巣のある屋根を見上げると、屋根の上でバタバタしている雛を見かけた。羽ばたきの練習をしているらしい。だが屋根の上は危険地帯。オス鳥は警戒音で鳴き続けている。屋根か転げ落ちないか、他の鳥の襲われないかとはらはらしながら見守った。
それが数日続き、だんだん雛の羽ばたきも上手になったようだ。
それからしばらくは天気が悪かったりでなかなか会えなかった。
次に会ったのは向かいの家のベランダ。まだ羽が生えそろっていない雛と両親がいた。先に飛び去った両親が雛を呼ぶ。雛は両親の所に行こうとするがベランダのガラスにぶつかったりして苦戦していた。暫くして屋根伝いに親を追いかけた。「巣立ったんだね、バイバイ」私は娘とそう言って見送った。
ところが翌週、裏の様子を見に行ったら、ブロック塀に何かいる。相手もきょとんとした顔でこっちを見ていた。それがイソヒヨドリの雛だということに気づくのにしばらくかかった。雛はブロック塀を行ったり来たりしている。奥の方に行ったので、そこなら家の中から見えると思い家に入ってそっと窓を開けた。
雛がいた。見ているととても愛らしいしぐさをする。暫くするとオス鳥が餌を持って来て給餌をしていた。
イソヒヨドリは、巣立ってからもしばらくは親が餌を与え世話をする。長いと1ケ月にも及ぶそうだ。
裏の家は今は無人だし、私の家との境に大きな木がある。猛禽類に狙われることも無く安全なのだろう。それから何回か家のブロック塀にいるのを見かけた。
ブロック塀だけではなく、トタン屋根にもよくいて音を立てていた。裏の家は先日こちらに向かって伸びていた枝を切ったので、私の家からは枝ぶりがよく見える。その枝が止まり木になり、葉が上空から身を隠すのに適しているのだろう。
ある日の夕方、雛が隣の家の屋根にいた。メス鳥が餌を
ひな鳥はまだ加減が出来ないようだ。
ある日、朝食を食べていたら羽音がする。そっと台所の窓を開けてみるとひな鳥と、メス鳥、そしてもう一羽(ひな鳥かも)の三羽が枝を飛び回っていた。
私と娘は脅かさないように静かに見守った。途中でオス鳥も給餌に来て大変賑やか。
でもこんな近くで見れるなんて、めったにない経験に私も娘も興奮した。
午前中結構長い時間いたが、お昼ごろ飛び去ったようだ。
それから何度か親子でいるのを見かけたが、6月に入り、ホトトギスが鳴くようになると姿を見ることが少なくなってきた。
幼鳥の方は家のトタン屋根から飛び立ったり、近くの家を飛び回ったりすることを数回見たっきり、姿が見えなくなった。本当に独り立ちしたのだろう。
親の方も、近くまで来ることはなく遠くで鳴いているのが聞こえるくらい。姿が見えなくなったのは寂しいが季節が変わったのでしょうがないのだろう。
時々聞こえる鳴き声を聞きながら、いろいろな経験をさせてくれてありがとう。また来年ね。と心の中で呼びかけている。
※ イソヒヨドリは住宅地に入りだしてから日が浅いため人に対する警戒心が弱いそうです。野鳥は鳥インフルの問題もありますし、見かけても脅かしたり手を出したりしないように静かに見守りましょう。
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