断捨離

私、佐々木美奈子ささきみなこ28歳。主人と二人暮らし。個人事業主として在宅で仕事をしている。なぜって?それは主人のせい。籍を入れた途端、『仕事は辞めろ、家事は全部やれ、家に5万入れるが残りは俺が使う』とか勝手なことを言って本当に5万しか渡さなかった。今時そんな金額で暮らせるわけない。それで元務めていた会社に交渉して在宅で仕事の委託を受けるようになったわけ。今の目標は主人を断捨離すること。


そんなある日、沙織さおりから話したいことがあると連絡があった。沙織は大学の同級生で主人と同じ会社に勤めている。行きつけの喫茶店で会うことにした。

「沙織元気だった」

「元気よ、呼び出してごめんね。教えたいことがあって、これ見て」沙織はスマホの写真を見せた。そこには主人と若い女性がホテルに入るところが写っていた。

「ああ、やっぱり浮気していたのね」

「美奈子知ってたの」

「ええ、怪しいとは思っていたのよ。この女の人誰?」

「今年入った新入社員よ。名前は田辺理恵たなべりえ

「名前が解ればやりやすいわ。この写真送ってくれる」

「もちろん、役に立った?」

「ええ、これで主人有責で離婚できる。ありがとう。お礼にここの支払い持つね」


沙織と別れた後、私は興信所に二人のことを調べさせた。1週間後興信所からの報告書が送られてきた。私はその報告書を持って、離婚の依頼をしていた弁護士のところに向かった。


私が提出した書類を見ていた、辻弁護士は、

「これだけ証拠があれば、ご主人と浮気相手に慰謝料の請求ができますね、離婚の交渉はどうしますか?」

「これがありますから」私は主人の欄が自署押印している離婚届を出した「1年ほど前に主人が『何かあったら離婚だから』と脅しで書いて渡したものです」弁護士は離婚届を見ていたが、

「きちんと書いてありますね。奥様の欄を書けば離婚は可能です。では、これから私の言うとおりにしてくださいね」

弁護士は、新しく家を借り引っ越すこと。引っ越してから新しい住所を役所に提出して住民票を取ること。その後、離婚届に記入して提出し離婚することを提案した。

「前もって準備をしておいて、平日ご主人がいない日に実行すればご主人に知られないで離婚する事が出来ます。離婚が成立した段階で、私が内容証明郵便で慰謝料の請求を行います」

「解りました、日時が決まったら連絡しますね」

「お願いします。くれぐれもご主人に気づかれないように」


私は普段通りに過ごしながら、弁護士に言われた準備を始めた。沙織から『来週木曜日から金曜日出張の申請があった』と連絡があり、弁護士にも伝え、手順を確認。木曜日決行することになった。そして・・・・。


『おい!どうゆうことだ!!家に帰ったら不動産屋の張り紙があって契約が今月中で切れるから、退居しろと書いてあったんだ。お前勝手に解約したのか?』

「勝手も何も、私の名義で借りていたんだから、当然でしょ」

『俺の金で暮らしているくせになんだその言い草は!!』

「俺の金?あのね、そのマンション家賃10万よ。それに基本的な費用や、食費なども含めると最低でもひと月の生活費が20万はかかるの、あなたが渡していた5万円で足りるわけないじゃない。足りない分私が出していたのよ。そこに住みたかったらあなたが自分で契約したら?ま、払えないと思うけどね」

『なんだと!、俺の名義じゃなかったのか、お前と離婚して彼女と暮らそうと思ったのに!!それにお前、残り出していたっていうが外に出ずにどうやって稼いでいたんだ!』

「在宅ワーク。今はね、パソコンさえあれば自宅でも仕事のできる時代なの。それとご心配なく、もう私たち離婚しているから」

『なんだと、俺の意思の確認もなく離婚しただと!!!!』

「あなたが、1年ほど前に渡した記入済みの離婚届、私とっておいたのよね。それでそれに私の欄を記入して提出。正式に離婚が成立したわ。まあ、財産分与するだけの財産はないから、婚姻期間中に浮気したということでお二人に慰謝料を請求します。もうそろそろ彼女の家のほうに弁護士からの内容証明の郵便が届くはずよ、じゃ、頑張って払ってね。それとこれから私への連絡は弁護士を通してね」

『離婚、慰謝料・・・。美奈子!!俺が悪かった。慰謝料なんて払いきれない。彼女と別れるからよりを戻してくれ!!!』

「もう遅いわ。さよなら」

私は電話を切り、ブロックした。あの慌てぶりったら。思い出しただけでも笑いがこみあげてくる。さて、もう一手打ちますか。


数日後、元主人の会社は大騒ぎになっていた。佐々木浩太ささきひろたと田辺理恵の浮気現場の写真が会社に送り付けられ、二人の不貞が発覚。二人は部長に呼び出された。

経理から、出張と称して経費で不倫旅行していたことも報告された。

証拠が揃っていること、佐々木夫婦が離婚していること、会社の風紀を乱したと弁解の余地は無く、二人は懲戒解雇となった。

職を失った二人はすぐに分かれたらしい。理恵は親に慰謝料を立て替えてもらい実家に帰り、浩太は慰謝料の支払いのため借金したが、定職に就けず朝から晩まで返済のためバイトの掛け持ちをして働きづめの生活らしいと弁護士から聞いた。元主人はすべてを失ったわけだ。


それから数日後、私は沙織とあの喫茶店で会っていた。

「うまくいったわね」

「沙織が協力してくれたおかげよ」

「当然でしょ。私と美奈子が一緒にいるところを見られなければ沙織があんな男に捕まらなかったんだし。協力出来て私の心も晴れたのよ!」

「うん、そうね。ね、二人でバーッと旅行に行かない!離婚出来たお祝いに!」

「賛成!美奈子も独身に戻ったし、お祝いに旅行しよう!」

私達はそれから旅行の計画、これからの事を楽しく語り合った。


私は元の会社に再就職。仕事に励んだ。もうしばらく恋愛はいいな。今度付き合う人はお互いを思いやれるような関係が作れる人がいい。まだ人生長いんだから急ぐ必要はない。私の未来は明るいのだから。










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