創作論「物書きならば料理をしろ」

 どうも、ようやく定職に就けて一段落した柏沢です。


 原稿や来年始動のプロジェクトのタスクも順調、今月から新作も書き始めました。

 直前まで『ワイはもう、おしまいでごわす……』と絶望しながらYoutubeを垂れ流しにしていましたが、今ではYoutube流しながら原稿出来てます。



 さて、需要がほとんど無い創作論をちょっと展開したいと思います。


 つい最近、公募で受賞したのにずっと放置されていたという事例がありましたね。

 そして、ずさんな対応にうんざりしてしまったと……



 僕は商業作家さんとお会いしてお話したことがあるので、こういった「編集の不始末」みたいなネタはたくさん聞かされてきました。

 業界の問題として、僕も気にしています。


 これはもう、時代というかですね……

 過去の「作家を育てる」という時代だったなら、まだわかるんです。

 作家に使われる時間とお金の量がきちんと意味があったからですね。


 しかし、現代では出版社にが足りず、外部から契約社員や個人事業主として雇い入れている状態だとよく聞きます。

 そんな状態で「売れる作品」を作れるのか? と消費者目線でも気になるところです。

 それを「作家がを書くのが悪い」とクリエイターにされてもなぁ……と、僕らは思うんですね。


 別に「作家を育てろ」なんて思いません。

 編集者だって経験を得る必要はあるし、僕ら物書きだって「初心者」から始まります。

 ですから、お互いにきちんと『人として恥ずかしくない』振る舞いをすればいいはずなんですよ。

  

 ――それが出来ないのも、人なんですが。




 僕は正直、商業作家になれるとは思ってません。

 

 これまで書いてきた結果を形にしたい、という目的で作家になる。という考えは持っています。

 それに、僕が尊敬している作家は小説1本ではなく、脚本や原作で幅広く活躍してます。

 僕は小説を書きたい以上に、物語を作っていきたいので、やれるなら小説以外でもなんでもいいのです。



 まぁ、僕は文章的な技巧に全く自信はありませんし、特別なアイデアもストーリー構成力もありません。

 過去に何度も「小説書くのなんか辞めちまえ」と言われてきました。

 恩師と慕う人からも言われたこともあるんです。


 じゃあ、なんで辞めなかったのか。

 どうして続けられているのか。


 今、たくさん評価を貰っているわけでも、読まれている実感があるわけでもありません。



 僕は以前、クラスタと外部から揶揄されていた集団に属していました。

 いや、集団というか……単に同じジャンルをこよなく愛する同志たち、仲間というよりライバルみたいなもんです。

 そんな人達に誘われて、今もカクヨムで書いています。


 僕はその人達に認められたかったんです。



 カクヨム以前はpixivで二次創作も含めて、いくつか作品を公開していました。

 今は公開していない完結作も含めてです。


 あくまで個人的な見解ですが、pixivにおいて純粋な一次創作や性描写の無い二次創作はほとんど読まれません。

 PVだって、ゲーム仲間の人が読んでくれたのがわかる程度でした。



 そこから誘われてカクヨムで書いた――つまり、自分を認識してくれる人がいる。

 それだけで嬉しかったんです。


 でも、僕はそれ以上を求めてしまいました。

 これまで孤独だった反動と言ってもいいでしょう。



 僕は自分が書いてるものが、きちんと小説になっていて、物語として楽しめるものだという自信が全くありません。

 カクヨムで書き始める前に初めて出した公募でも結果は出ませんでしたし、本当に不安だったのです。


 誘ってもらえたのに、このままことにされたくない。忘れられたくない。認められたい。

 そんな想いだけで作品を書いていました。


 事実、そんなメンタルで作品が書けるわけがありません。

 長編を書いては辞め、短編を書き、また長編を書き出して辞める――そんな感じでした。



 実際、その集団の中で僕の作品を最後まで読んでくれたのは……たった1人だけです。

 もしかしたら、他にも何人かいるかもしれませんが、PVや見える反応から、ちゃんとその人しかいなかったというデータは取れてます。


 でも、良かったんです。

 



 その人は、僕の恩師と呼べる人です。

 実際にお会いして、一緒にご飯を食べ、遊びに行きました。

 と呼ぶと嫌がりますが、本当に尊敬していますし、この方のおかげで小説を書き続けられています。感謝しかありません。




 その先生からの教えは何かと言うと――簡単です。





 ――完結させろ。




 僕は長編をたった1作だけ完結させ、短編で書いた気になっていただけでした。


 でも、それは違うぞ。と先生は仰ってくれたのです。

 それから僕は、とある作品を完結させるために尽力しました。

 おかげで、色んな人が言う「完結させる」ことの意味を実感しています。




 商業作家でもない僕の言葉なんて、大した力もありませんし、届くとも思っていないです。

 しかし、こうした話を発信している人がいて、僕もちょっとだけ伝えてみようかと思った次第なんですね。



 小説を書くのはマラソンと同じ。

 よく例えられる話です。


 僕もそれは正しいと思っています。

 ですが、これは完結させるまでの話。作品を書くための姿勢の話でしかありません。

 この話を要約するならば「目標はきちんと設けておけ! だが、途中の給水・休憩スポットは把握しろ!! お前は3000メートル完走するのと1000メートルを3回走るのを同じにするつもりか!? きちんと走り抜いてこその遠足だ!!!」ってことです。


 

 本当に必要なのはそこではなくて……


 僕らは、どうして物を書くのか。

 そこを切り開くことが必要なんじゃないかと思います。





 僕が小説を書き始めたのは学生時代。

 

 友達との激闘に青春を捧げた「アーマードコア」そのノベライズが出た時でした。

 僕とその友達はそのノベライズを手に取り、「こんなのACじゃねぇ!!」と勝手に憤慨していたんですね。


 アーマードコアについて簡単に説明しますと、未来の世界では国家ではなく、企業同士が大規模な軍隊を率いて衝突しています。

 国家ではなく、企業が完全に経済を掌握している世界観。

 そして、企業同士が利権や陰謀のために戦場に火を放つ。


 プレイヤー、つまり傭兵はそのような複雑かつ難局を極める状況で戦うのです。

 そこがアーマードコアらしさであり、魅力でもありました。


 しかし、ノベライズ作品は「世界は2つの国家に別れ……」という独自の設定が用いられています。

 今考えれば、仕方の無いことかもしれません。

 もしかしなくたって、ゲームの設定はゲームの中で運用することを想定しているので、小説に噛み合わない可能性が充分にあります。


 僕はそんなことも知らずに、勝手に怒って「じゃあ、ぼくが正しい『アーマードコアの小説』を書いてやる!」を書き始めたのですね。

 振り返ると、とても恥ずかしいのですが……

 当時は本気で商業化するつもりで書いていました。

 人に読ませられるクオリティか、本当に正しいアーマードコアが書けているか、ずっとそれを気にして書いていたのです。


 実際、作品読んだこともない〈そのジャンルでは有名な大先生〉が主催する小説家講座に参加して、そのアーマードコアの二次小説をテキストで出したこともあります。

 それくらい本気で書いていました。

 


 今思えば、あれは本当に情熱だけで書いていたんです。

 寝る間を惜しみ、冷やかす同級生や上級生を無視し、辛辣な言葉だけしか送ってこない友達(後に小説のことを忘れる)の指摘に耐え……完結には至りませんが、ずっと人に見せ続けてきました。

 でも、この経験は無駄じゃなかったと思います。

 戒め……いつか、本当に作家になった時に見返すように「小説家講座」で出したテキストは捨てずに残しているんですよ。


 この時も、今も、書くのはちっとも楽しくないです。

 苦しいです、辛いです。


 でも、物語を考えたり、形にするのは好きなんです。

 アイデアをまとめたり、残しておいたり、それを見直しながら改めて企画を練り直したり……



 小説という形にする、それは果てのない戦いで、どこまでいっても終わりは無いんです。

 どこで終わるか、それは自分で「ここだ」とゴールの旗を突き刺すしか終わる方法はありません。

 商業作家になれば「打ち切り」というものがありますので、僕の言っていることは間違っているんですが、僕にとって執筆というのは『自分で決めたゴールまで行く』ことだと思うんですね。




 


 長くなってしまいました。


 さて、本題の「物書きならば料理をしろ」に入りましょう。



 創作と料理、一見共通点は無いように思いますね。

 しかし、実際に色々料理を作ってみると……何か感じませんか?


 

 料理――調理の作業は、実は終わりは無いんです。


 例えば、フライパンでステーキ肉を焼くとしましょう。

 分厚いビーフのサーロイン。音を立てながら焼き目も付いて、脂が跳ね、香ばしい匂いが部屋中に染みつくほど広がります。

 さてさて、あなたはそのサーロインをどうします? 永遠にフライパンの上で焼き続けますか?


 調理も目標とする段階で作業を完了しますよね。

 これは小説の執筆に似ていると、僕は思うんです。

 何かの区切り、明確な数字、そうした判断を持って、工程を終えているはずです。



 それに、アイデアをこねるのと料理のレシピを考えるのも類似点が多いです。

 昨今「いくら考えてもオリジナルになることはない」なんて言われていますよね。

 料理も同じく、ほとんど新しいものなんて出てきません。


 それに人の味覚というのは決まっています。

 味、食感、匂い、それらの要素は分類化されていて、答えが出ています。


 それでも、毎年何かしら面白いレシピや料理が出てきて、人々を楽しませるのはどうしてでしょう?


 色んな人の手垢だらけの創作物で、毎年毎月のように新作新刊が出るのはなんででしょう?




 パスタというものがありますよね。ええ、イタリアンのアレです。

 基本的には茹でてから、ソースに和えたりしますよね。


 しかし、「暗殺者のパスタ」は茹でずにフライパンで炒めて作ったりします。

 同じ素材でもアプローチを変えたり、組み合わせを変えることで大きく変貌するんです。

 これは創作でも全く同じで、大作家先生が仰る『ヒット作は○○×○○』みたいなアイデアの柔軟な組み替えや構造的な思考というのは、ほとんど料理みたいなものです。



 また、料理というのはほとんど計算と科学なんですよ。


 例えば、タンパク質の凝固温度は60°くらいと言われています。

 細かい分類がありますが……この際は無視してください。


 この凝固温度を上手くコントロールすることで、ラーメンのトッピングにあるような「黄身だけ半熟の卵」、スーパーで売っているような「トロトロな温泉卵」みたいなものもあります。

 砂糖を足せば甘くなりますし、唐辛子を入れれば辛くなります。常識ですね。


 でも、料理の味って……そもそも何でしょうか?


 肉焼いて、ご飯の上に乗っけて、それでも料理と言い張れるはずです。 

 別に塩コショウも、焼肉のタレも、本当は必要無いのです。

 どうして、美味しくしたいのか――それは、料理とは自分や誰かに向けて作るものだからです。



 創作はついつい、「自分が書きたいから」と進めてしまいがちです。

 しかし、作ったものは自分だけでなく、他人の目に触れることもあります。

 小説は「盛り付け」をいくら頑張っても、結局は中身のクオリティでしか戦うことはできません。

 独りよがりな小説は、誰のためにもならないんです。


 自分が食べないからと「醤油をびたびたにかけた目玉焼き」を相手に出すような人は……普通はいないと思います。

 

 自分が読めればいい、と思って作品を書くなら――それはもう、形にする必要は無いんです。

 アウトプットする、人が読める状態にある。それは「人様に1品お出ししている」状態なんですよ。




 結論、創作は「料理を作っているのと同じスタンスでやろう」と僕は言いたいです。

 色々考えて、作品以外のことも悩んで、労力も使って、苦しんでいる人は僕以外にもいるかと思います。

 でも、創作において重要なのは『続ける』ことにあります。

 全身全霊の瞬間風速、最大出力で書いたからといって、後世に残る傑作になったりなんかしません。


 料理は楽しいです。

 歴史、文化、続いてきた人々の営み、様々な工夫。

 そして、緻密な計算や手法がそこにはあります。


 そして、それは創作も同じです。

 どうすれば読者を動かせるか、どんな書き方や物語があるか。

 僕もまだまだ未熟者ですが、そうしたことを考えながら作品を考えるのは楽しいです。



 さて、長くなってしまいました。

 こんな内容できちんとしたものになっているかは自信ありません。


 ――いつも自信無いって、言ってしまってすみません。



 よく「自信を持って」と言われます。嬉しくもあり、恥ずかしくもあります。

 

 実は……自信が無いという現状が、楽しいんです。

 答えも出てないし、自由に色々実験できる。明確に「自信」と「答え」を得て、それだけ追求する……という楽しみもあります。

 


 僕はまだ、あれこれと明確に答えの出ないことを楽しんでいます。

 でも、それはきちんと理屈を立てた上でやってることです。

 

 ですから、みんなでたくさんの料理を作っていきましょう。








追記:


 オムライスの卵って、色々ありますよね。

 まずはそこで試してスタイルを確立しましょう!!


 ……えっ? オムライスを作るのが大変……?

 それはちょっと、僕にはどうにもできないですね。



 僕のオススメは「ドレスド」です。

 意外と簡単ですよ。

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