映画「トップガン」「トップガン マーベリック」

 世界で一番有名な戦闘機映画は? という質問に、皆さんはどう答えますか?



 それはやっぱり「トップガン」でしょう。



 主演のトム・クルーズがバイクに乗ったり、金髪美女とイチャイチャするアレです。

 F14がかっこいいアレです。



 「トップガン」はドッグファイト、ロマンス、音楽、友情……どの要素もしっかり噛み合って、ドラマチックな物語になっていますよね。


 無鉄砲パイロットの〈ピート・・ミッチェル〉が自分勝手な行為で同僚パイロットを落ち込ませ、代わりに「TOPGUN」のあるミラマー空軍基地への異動を命じられる……というあらすじです。


 相棒のグースと一緒に乗り込んでいった先で、ライバルになるアイスマン、戦闘機パイロットだった父親と組んでいたバイパー教官、ヒロインである民間技術者チャーリーと登場人物も多く、どの場面でもにぎやかです!




 ちなみに主人公のマーベリックの父親は、味方を守るために戦死したパイロットなんです。

 しかも、政治的事情によって戦死理由も伏せられていました。


 マーベリックの無鉄砲さというのは、憧れの父を美化しすぎた結果でもあり、血筋でもあったんです。

 実際、主人公は父親の戦死が理由で昇進することができませんでした。

※命令無視や違反もたくさんあったし、素行不良だったのが要因だと思いますw



 つまり、トップガンという物語は最初から「喪失」というところから始まっていたのです。


 そして、摸擬空戦の最中での事故。これによって、相棒であるグースを失ってしまいます。

 家族同然の親友、相棒を失ったマーベリックの失意は計り知れません。


 このF14の事故は実際に起きた事例で、ベテランパイロットでもあの横回転フラットスピンから回復するのは至難の業でした。

 ですから、ある意味では仕方ないのかもしれません。


 しかし、パイロットとして責任のある立場。操縦桿を握っていたという事実、それがマーベリックを蝕みます。

 戦死した戦闘機パイロットという英雄像を追い続けたマーベリックにとって、グースの死はただの喪失ではありません。


 ブレーキ役でもあり、戦闘機パイロットとして自分の命とほぼ同じくらい大切だった相手を死なせたのです。

 それはつまり、自分を死なせたのと同じと言ってもいいでしょう。


 その喪失から立ち直り、実際に戦闘に参加したマーベリックはライバルのアイスマンの窮地を救い、新たな友情と相棒を得ました。

 





 そして、「トップガン」から時が流れ……


 作中に登場していたグースの息子は戦闘機パイロットになり、トップガンを卒業していました。

 ベテランエースとして活躍したマーベリックはテストパイロットになり、超高速試作機の試験飛行の任務に就いています。

 同じように無茶苦茶をやらかしたマーベリックでしたが、一度は退いた教官職に復帰することになります。

 

 そして、グースの息子である〈ルースター〉と再会することになるのでした……



 「トップガン マーベリック」はただ単に前作を今風に作り直したということをしませんでした。

 冒頭の空母甲板で戦闘機が離発着するシーンを流しながらの『Danger Zone』

 前作ファンのみならず、その映像美とノリノリの楽曲で一気に戦闘機のかっこよさを浴びせてきます。


 もう、これだけでキモチイイです。最高です。

 場と胸が温まったところでようやく話がスタート。マーベリックの武勇伝が1つ増えるのを鑑賞してからの、本作の主題を語っていきます。



 前作が「TOPGUN」での青春を描いたとしたら、本作は「戦闘機乗りの姿」を描いたものだと言えます。

 作戦のためのブリーフィングから、その作戦を成功させるためのシミュレート、訓練、シミュレーション……


 艦隊を空の脅威から守るためのF14から、あらゆる任務に対応するF18に機体を変えたことによって、シチュエーションの複雑さが増しました。


 実際、F35を使えばあんなに苦戦するはずがないんですよ……

 でも、それじゃ画にならないから仕方ないね。




 つまり、「トップガン マーベリック」は話も面白いですが、ミッションを設定してその攻略と訓練に主眼を置いたことによって、「戦闘機映画」としてのクオリティとドラマ性をかなり高めているんですね。

 この「戦闘機パイロットのドラマ」という部分においては、前作の「色々あるけどドッグファイトしてます」という流れ以上に困難な状況や絶望感を感じられるので、映像も話も、数段面白いに貢献しているんです。


 あと、あの作戦なんですが……

 フラシムやってる人ならわかると思うんですけど、かなり難しいことやってます。普通にキツイと思います。



 本作、カメラワークにめちゃくちゃこだわってますし、本当に戦闘機が好きな人なら知ってる要素がたくさん出てきます。

 おまけにクスっと笑えるシーンを差し込んだりして、単なる戦闘機映画というところだけにフォーカスしてないところが良いんですよ。台詞回しも最高なんです。


 前半・中盤の理不尽な鬼教官、不器用過ぎて父親代わりにすらなれない、そんなマーベリックの姿に全身全霊の必死さを感じ、それでも恋愛をする余裕のあるお茶目さに笑い、絶望的な状況に絶句する――

 トム・クルーズの演技力全振りの画に、感情移入を超えた感覚を味わうことができます。


 前作を見て、マーベリックと登場人物の関係性を知っていると、より心を動かされる体験ができるはずです。




 終盤、実際の作戦。

 ドキドキハラハラ、訓練でシミュレートした内容を無事に成功――と思いきや、対空ミサイル陣地に絡めとられるマーベリックとパイロットたち。


 この絶望は戦闘機好きでなくたって、感じられるはずです。

 パイロット全員が絶えず交わす無線、警報、山岳地帯に描かれるミサイルスモーク、パイロットたちの苦悶の表情……画面越しに、僕らも息が詰まります。


 そこから、空爆された敵の基地に乗り込んで、敵のF14を奪って空へと逃げる……

 

 そして、あの映画史に残るような名ドッグファイトが展開されます。


 カメラワークや演出はF14に乗ってからが本当にすごいです。

 情報量、スピード感、マーベリックが繰り出す妙技の数々……世代差、性能を技量と経験で覆す名シーンです。

 それでも、敵のパイロットはやられ役ではなく、きちんと戦ってくる。

 そこもまた痺れます。


 良い戦いというのは、敵も味方も一級でなければなりません。

 どちらか一方が強くたって、それは「ムキムキマッチョマンの無双シーン」と何も変わらないのですから。





 「トップガン マーベリック」は単なる前作の続編というだけではありません。

 いくつかある戦闘機が登場する映画のオマージュシーンがいくつもあるのです。


 そういった意味では、「トップガン マーベリック」は今世紀の戦闘機映画のマスターピースのような作品でもあるわけです。

 実際、それだけの工夫と熱意が込められているのだから、当然ですけどね!





 とある大統領が歴史的な演説の後、戦いに赴く前にこんなセリフを残しています。


「空に帰るのさ」



 実際にライセンスを取って、操縦桿を握っていなくても、ゲームやデジタル空間で空を飛ぶ体験をすることはできます。

 それがどんなに偽物でも、空を飛ぶという経験に偽りはありません。

 

 空は自由で、果てしなく広くて、過酷です。

 高速で飛び交い、ミサイルや機銃を撃ち、思いのままにマニューバを描く……


 戦闘機映画も良いですが、戦闘機ゲームも遊んでみませんか?







 ――きっと、そらでつながっている。




 あっ、これは「ゆるキャン」でしたw

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る