コミック・ドラマ「孤独のグルメ」食を楽しめ!!!

 「井之頭 五郎」という名を聞いたことはあるでしょうか?


 松重豊氏が演じる個人営業の古物商。

 スーツ姿で街を闊歩する大柄の男は、見た目通りの大食漢。お酒はダメですけど。


 スタッフが厳選したお店で次々と完食していく様は、どんな人でも思わず涎を垂らしそうになるはずです。

 そんな「孤独のグルメ」は元々マンガでした。



 ドラマと違い、コミック版「孤独のグルメ」はそこまで『メシテロ』ではありません。


 僕らにとって、「食事」というのは当たり前のものです。

 しなければならないし、我々日本人はついつい「美味しい」を当たり前に享受しています。


 

 「孤独のグルメ」はそうした食事というシーンを切り取って、一喜一憂する井之頭五郎を見ることで『食事』という行為は楽しいものであるということを再確認することができるはずです。

 

 コミックは真の意味で「孤独」を楽しむものでした。

 好きなモノを食べ、味と食感、注文した品同士のコラボや比較、「食」という行為そのものを全力で楽しむのは変わりません。

 しかし、同じ飲食の場にいる他者や調理している店員に対して、半ば攻撃的……ちょっと冷たい視線を向けてしまうところが、原作の井之頭五郎でした。

 良い大人なのは間違いないのですが、想像力がありすぎるが故に孤独の方が楽になってしまう……食以外を純粋に楽しめない、そんなキャラクターでした。



 一方、ドラマ版の良いところは原作の「食にフォーカスし過ぎ」な点を解消したところです。

 前置きに営業や商談のシーンを入れることで、より井之頭五郎という人物の造形に深みが増し、人付き合いが上手だからこそ「孤独」に浸りたいというドラマ版「孤独のグルメ」の価値観を打ち出しています。


 ドラマは色々な試み、演出、遊びがたくさんあります。

 それが違和感無く、むしろ「孤独のグルメ」という世界にきっちりとハマって面白さに貢献しています。






 「孤独のグルメ」と言えば、名言がたくさんあります。

 焼肉を食べていて「俺は人間火力発電所だ」というフレーズが出てくる作品なんて、世界のどこを探しても『孤独のグルメ』しかないと思います。

 原作はセリフも面白いのですが、シチュエーションを重視している傾向がありますね。

 そういった部分では、ドラマ版は脳内独り言「モノローグ」で名言を連発するというパワープレイを展開していて、とても楽しいです。

 松重さんの演技、特に額に注目してもいたいです!



 ドラマ版の良い部分をもっと挙げるとすれば、僕はBGMを推したいです。

 食事シーンの最後、スパートを掛ける時の曲も素晴らしくカッコいいのですが、普通の日常シーンやなんでもないシーンに流れる曲もすごく良いと思います。

 ただの日常なのに、どこかワクワクそわそわ、そんな風に期待させてくれる楽曲に彩られながら街を歩くオッサンの姿。

 面白くないわけがありませんよね?



 そんなこんなでドラマ版「孤独のグルメ」はシーズン10、年末スペシャルと称して「大晦日を駆け抜ける井之頭五郎」の大動乱を描いてみたり……

 そういった意味では、ドラマはエンタメとして上手く整理した作品になっています。


 YouTubeでも配信していますので、良かったら観てみてください。

 特に焼肉回が面白いですよ。





追記


 グルメマンガというのは昔からあります。

 「美味しんぼ」「クッキングパパ」「味いちもんめ」……

 

 分類はいくらかありますが、食をエンタメとするのは今もなお続いています。

 そうした中で、本当に「食べる」のみにフォーカスした作品は少ないように思うんです。


 「美味しんぼ」のように説教や蘊蓄うんちく臭くなってしまったり、一緒に作って楽しもう的な内容にしてみたり……なかなか難しいですね。



 これからもグルメ作品はたくさん出てくると思います。

 漫画や映像作品が有利なのはわかってはいますが、小説も負けじと頑張って欲しいですね。




 

 

 

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