映画「竜とそばかすの姫」
「何者にも成れる」と聞くと、僕はベセスダゲームスが作ったFPSRPGを思い出します。
それはつまり、ロールプレイ。あくまでのスタイルの話です。
「もうひとつの現実、もう1人の自分、新しい人生」と謳った仮想現実。
それは2023年に流行ワードの1つであるメタバースと言ってもいいでしょう。
「サマーウォーズ」に続いて、そうした仮想現実とリンクした世界観で展開される青春と人生を切り開く大きな出来事を描いたドラマ。
圧倒的規模のCGと透き通るような歌声で演出される物語は、作中の現実――田舎の光景さえも美しく描き出します。
僕は細田守監督作品はわりと好きで、大体観ています。
自分の家族は細田守と新海誠の違いが分からないようなトンチキですが、お二人の描く空模様とキャラクターに、僕は毎回驚愕と感動させられっぱなしです。
観るのが遅れたのは、純粋に前評判が気になっていたというのがあります。
でも、観られて良かったです。
「何者にも成れる」「成りたい自分になる」
これは似ているようで、全く違います。
オープンワールドRPGではよく、「何者にも成れる」というゲームシステムを作っています。
ベセスダゲームスの「TESシリーズ」「falloutシリーズ」はゲーム中に様々な選択肢と困難に対する豊富な手段を用意し、それに対してNPCや結末が様々なバリエーションの対応することで知られています。
しかし、これは「想定された『何者にも成れる』」でしかありません。
キャラクターを作る時、よく言われるのが「バックボーン」を作れというのが有名ですね。
過去、経歴、それを元にした信条やルール。それはキャラクターの行動の基準と規範を作り、説得力を持たせるものです。
しかし、現実に生きる僕たちは本当に「成りたい自分」になっているかと問いを投げたら、確実に「NO」という答えが返ってくることでしょう。
容姿、人間関係、環境、経済状況、トラウマ、あらゆる要素が僕らの行く手を阻むように、生き方を矯正してくるのです。
仮想世界「U」はそれらを取り払い、新たな顔と身体を与え、チャンスを与えてくれるというものですが……本当に、「何者にも成れる」のでしょうか?
僕らは現実で様々な問題と衝突しながらも、何かを磨いてきたはずです。
もちろん、そうじゃない人もいることも真実ではあります。
だから、「U」は何者にも成れるではなく、「成りたい自分」になるための世界だと言えるのです。
主人公の女子高生には歌唱能力もあったし、曲作りもしていた。
それを認める友達がいたから「U」という世界で歌姫になれたし、アバターを剥いでもなお、その歌声は人々も魅了しました。(僕も魅了された一人です)
この世の中には埋もれた才能を持つ人々がたくさんいます。
それはたくさんの原因、理由、もしくは諦観で輝けなかっただけなのかもしれません。
現代版「美女と野獣」。デジタルの中で起きた奇跡と魔法のファンタジーは閉じた世界だけでなく、現実まで伝播し、その物語としての在り方をより鮮烈なモノにしました。
人と繋がる。言葉にするのは簡単ですが、それを繋ぐのも、保つのも、とても難しいです。
そうして出来た絆のネットワークというのは、今も昔も普遍的で大切なモノであることは語るまでもありません。
残念ながら、僕にはそうした強固な絆を繋いだ相手というのは……いません。
それでも、相手から掛けられた架け橋はできるだけ長く繋ぎ続けたいと思います。
追記
友達の女の子、良いキャラしてますねぇ。
マネージャーとして良い仕事してるし、主人公の要望にもきっちり応えてます。
あんな風に頼れる相棒――欲しいですね。
僕はいつ頼られても対応できるように、いつも真摯に生きてます。
……嘘じゃないですよ、クソ真面目だけが取り柄の物書きです。
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