創作談話「SFとロボット(メカ)」

 どうも、つい先日に初めて録音スペースで喋ったオッサンです。

 主催の方からは『及第点』だ、とコメントを頂き。とりあえずは納得してます。



 僕自身はなんとも思わないのですが、SFというジャンルとロボットが出てくる作品が噛み合わないと考えている人がいるということで、自分の考えをまとめようと思いました。


 僕は「ロボットが出てくる作品はSFと認識できる」と考えています。

 それはあくまで、「ロボットが主題ではない」という条件付きです。



 ではまず、ロボット=SFと断言できる場合の条件を考えて見ましょう。

 

 ちょっと前ならば、「人型ロボット」は現実・現代の技術では不可能だからと言い訳できました。

 しかも、人が乗り込む――搭乗型となればなおさらですね。

 

 「空想科学読本」というひたすらツッコミを入れていく考察本でさえ、搭乗型ロボットの問題点を指摘しています。それが正しいかどうかは置いておきますが。


 

 しかし、現在ではあちこちで非軍事という括りでなら搭乗型のロボットというのは複数出てきています。

 ファンメイドの二足歩行ロボット、量産を前提とした4脚型ロボット、強化外骨格としての搭乗型ロボット……検索すればいくらでも出てくるはずです。


 つまり、2023年現在においては「ロボット=SF」という短絡的な図式は存在しないのです。

 ぶっちゃけ、今のロボットに機関銃やロケット砲を付けるだけで戦闘用ロボットになりますし、コンセプトでデザインされたモノもあります。




 この「ロボット=SF」というのは、別にロボットである必要が無いわけなんですよね。


 ロボットの部分が「戦闘機」「戦車」「戦艦」「宇宙船」でも充分に成り立つわけで、つまり「ロボット=SF」をやりたい人というのは「ヴィークルが主題のSF」をやりたいわけなんですよ。(主語がデカイ)


 架空戦記をSFと称していいなら、「太平洋戦争で現代兵器が無双する」もSFになりますし、「ファンタジー世界で転生してロボットを作る」も同様です。



 「ロボット=SF」が問題視されるのは、つまり本題であるべきはずの「SF」がフレーバーになっているということだと思います。

 しかし、近年「SF」というジャンルは広義になって、多様化し、ある意味陳腐化してしまったようにも感じます。あくまで主観での話ですが。


 SFが好きでたまらない人でも「SFはこれだ」と明確に定義化できているわけではありません。

 なぜなら、SFというのは時代ごとに意味が変わってしまうものだからです。


 タイムマシン、ナノマシン、宇宙コロニー、ターミネーター、存在しないものを理屈で嘘をついて楽しむというのが「サイエンス・フィクション」であり、その理詰めをみんなで考え合うというのがSFでも醍醐味なわけです。





 しかし、「ロボット」が主題になってしまうと、既存作品の焼き直しやパッチワークでしかなくなってしまいます。

 それはつまり、物語の形式と同じく――やりつくされているからに他なりません。


 

 ロボットが大気圏に突入し、地上に降り立つシチュエーションがあったとして。

 その大気圏突入の際、機体を防護する装備や機能もしくは手段というのは有名なロボット作品でやり尽くされているわけです。

 保護バルーン、冷却ガス(笑)、耐熱フィルム(笑)、撃墜した敵機でサーフィン、大型デブリの陰に隠れる。と様々あります。

 これだけある中、もっともらしいSFっぽい新しい嘘を考えるのはなかなか骨が折れます。

※その中でも「マジェスティックプリンス」の案は凄かった!!



 まぁ、僕はそんなSFらしさやSF仕草というより、もっと重要なモノが必要だろ! と思うわけですが……ストーリーとかドラマとか、それは隅に置いときますがね。



 だから、「ロボットがいるからSF」と安直に書いてしまうのは、作品としても少々どうかな……とは思います。

 しかし、その気持ちも分かるのです。

 

 だって、「ロボット」を別のヴィークルに変換できると言われた時に、画にした時の魅力というものが無くなってしまいますからね。





 さて、ここで僕の結論としましては……

 小説としては「SF」も「ロボット」も、フレーバーでしかありません。 

 だから、「SFロボット」というのは――「塩キャラメル味」と何も変わらないのです。

 この「キャラメル」がどちらかなのかは、どっちが好きかという話でしかなく。

 「塩」と「キャラメル」が一緒になったものなんだー程度の話なんですよ。



 だからこそ、SFが好きな人にとってはキャラメルは「SF」であり、塩味のロボットが引き立ち過ぎてはキャラメルのおいしさが損なわれてしまうと思うわけなのですね。


 

 しかし、このロボットを組織的に運用して、兵器として活躍させるという世界観や展開というのは限りなくSFの領域です。――とは言っても、SF=軍事ではないこともあって、「SF好き=ミリタリーオタク」じゃないというのも真実です。

 それでもSFの名作はミリタリー物も多いので、そういった括りにおいては「ロボット=SF」というのは何も間違ってはいないのです。





 これからは実際にメカやミリタリーを書いている人間としての見解なのですが。

 「SFミリタリー」というジャンルにおいては、読者に説明する内容がかなり多いです。

 実際、連載中の「Last Valkyrie」なんかはガンダムみたいに宇宙移民が行われた世界で、地球では紛争続きで環境破壊が進んだせいで地球人は宇宙移民から資源を奪わないと生きていけない状況である――という前提がありますが、これを全部説明するとなれば、膨大なナレーションもどきが必要になってしまうんですよね。


 そこにミリタリー的な知識、機関砲から発射される弾丸の中には曳光弾という威力の無い花火みたいな弾も入っているよ。とか、ドッグファイトで急旋回すると加速によるGで脳の血液が少なくなって気を失っちゃうよ。みたいなのを平然と盛り込んでしまうわけなんですね。


 この「作者が知ってる知識量」と「読者の前提知識」というものにギャップがあると、この「ロボット=SF?」論みたいに作品になってしまうのだと思います。


 これはSFやロボットに限らない話だと思いますが、こういった専門知識や世界観設定をどれだけストレス無く描写するか、説明できるか、といったところが問われるのではないでしょうか?!





 逆にSFの難しさの話をしてみましょう。


 「君の名は」という大ヒットした青春映画がありますね。

 普通の一般人は「君の名は」で展開された『3年のパラドックス』を理解できないのです。

 SFを嗜んでいる人なら平然と理解できている「パラレルワールド」や「タイムパラドックス」というのは一般大衆にとっては未知の単語――どころか、興味の対象外でしかなかった。


 まぁ、一般人が観たいのは自分が主人公に入れ替わって気持ちいい体験をしたい――ドラマチックな想いをしたい。というのが本音だと思います。


 

 マルチバースだって、本来はパラレルワールドやバタフライエフェクトの話でしかなく。

 スパイダーマンのアニメ作品である「スパイダーバース」だって、「こんなスパイディ居てもいいよね」って作られた作品を無理矢理繋げて『平行世界のスパイダーマン』と言い張ってるだけですし。そこにSF仕草やSFらしさは求められているかは一目瞭然です。





 SF、ロボット、それはあくまで作品のフレーバー。1つの要素に過ぎません。

 どちらも同列に語れない以上、僕ら書き手は「○○好きならわかるでしょ」と妥協せずに読み手をもっと意識していかなければなりません。

 そもそも、僕らはジャンルではなく。読者に向けて作品を書いているのですからね。


 

 あれこれ書いてしまいましたが、僕は誰にもケンカを売ってませんので、この内容で拳を振り上げてしまった人はどうか冷静になってください。

 SFも、ロボットも、自分達の領域だと思う人はたくさんいます。

 しかし、それをWEBで公開する以上はが想定していない人も読むことになるわけで、そこでというコメントをもらうのは、ジャンルでもフレーバーでも、ましてや読者のせいでもないんです。


 だからこそ、多くの人に読んでもらいたい。

 物語を伝えたいと思っている人は、もっと伝える力を伸ばしていきましょう。


 僕も、それに苦しんでいる1人なので……






追記:


 技術の部分を「SF」と言い張ることもできますが、それはある意味世界観の話にも繋がってくると思うので、それだけで「ロボット=SF」というのはちょっと弱いです。


 例えば、遅延無しの通信技術がある世界観だからロボット出しても問題無いだろ。と考えているなら、そこには『デスストラディング』という作品もありますし。 

 ロボットを遠隔操縦する作品はいくらでもあります。


 僕らはついつい、イメージに忠実に書こうとしてしまうところがあります。

 そのイメージが常に正しいとは限りません。色んな作品や情報を取り込んで、自分の理屈でもいいから『人に説明できる』くらいには練り込んでおきましょう。

 別に人を説き伏せたり、納得させられなくてもいいんです。


 重要なのは、SFは理屈で嘘をつく。その嘘をみんなで話し合って楽しむというジャンルであるということです。

 「ロボットSF」を書きたい人は、そこを意識してみるのはいかがでしょうか。



 あと、僕は「ロボット好き」ではありませんのでご注意ください。

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る