映画「ライ麦畑の反逆児」「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」

 映画はやっぱり映画館で観るのが1番です。

 音を全身で浴び、視界いっぱいに広がる映像、エンドクレジットが流れ終わってからの静寂と暗転……物語を堪能した余韻に浸れる時間。


 新しい映画はどんどん観に行きたいとは思うのですが、やっぱり映画館のチケット代はそれなりにします。

 ――というわけで、僕はサブスクの配信サービスをよく利用するんです。Netflix、AmazonPrime、バンダイチャンネル……



 しかし、配信サービスというのは常に膨大な量の作品を視聴できる状態で、いざ「何か観よう」と思っても作品がありすぎて、迷ってしまうこともあると思います。


 運良く、SNSで作品を紹介するアカウントと巡り会い、名作と出会うきっかけを得ることができました。

 「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」「シェフ 三ツ星フードトラックはじめました」「インターンシップ」と、面白い作品があるのに全く知らなくて、自分がいかに映画好きだったかを思い知らされましたね。



 さて、今回は「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」と「シェフ 三ツ星フードトラックはじめました」について語っていきましょう。



 「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」はタイトルに入っている通り、『ライ麦畑でつかまえて』を書いて有名になった〈J・D・サリンジャー〉という作家の半生を描き出した映画です。


 裕福な家庭のお坊ちゃまであるサリンジャーは小説家になるべく大学に進学、そこである作家先生との運命的な出会いによって、サリンジャーはとしての道を歩むことになります。

 

 この映画は特に、小説を書いている人には観て頂きたい作品ですね。

 作中では何度も創作で苦悩する姿が描かれ、タイプライターに向き合い続けるサリンジャーの姿に目が離せなくなるはずです。

 


 前半、サリンジャーが短編を出版社に持ち込み続けても掲載してもらえずに悩んでいるシーンがあります。

 いくら書いても不採用、何を書いても不採用、悩みに悩んだサリンジャーに先生はある言葉を突き付けます……!


 これは、今の僕たち――WEBで作品を書き続ける創作家にも通じる言葉であると、僕は思っています。

 現代では描くストーリーもドラマも、求められているキャラクターも大きく変わっているはずです。それでも、数十年前のクリエイターからのメッセージは今のにも絶対に響くはず。今も昔も、物語を紡ぐ人に通じる『道』へと繋がっていくのではないかと思います。







 「シェフ 三ツ星フードトラックはじめました」という映画は「ライ麦畑の反逆児」とは大きく異なる映画です。


 こちらはかつて、新進気鋭と期待されていたシェフ〈カール〉は一流レストランの厨房を任されていました。

 そこに有名評論家が来店することになり、カールはオリジナルの創作料理で出迎えようと意気込みます。

 しかし、それはレストランのオーナーに止められただけでなく、ブログで散々に扱き下ろされてしまうことになってしまうのです。



 そして、大きなトラブルを起こしてネットで晒し上げられてしまうだけでなく、解雇されてしまいます。

 それでも主人公は料理を辞められません。



 失意の中、元奥さんの都合で息子と一緒にマイアミに向かいます。

 そこで食べた本場のキューバサンドの味に感激し、フードトラックでキューバサンドを売り歩きながらロサンゼルスへと戻る旅を始めるのです。

 

 一緒に働いていた助手マーティンも合流し、息子のパーシー、カール、愉快な男3人旅が始まります。

 



 この映画の魅力はずばり、料理シーンです。

 調理作業の細かさ、食材の鮮やかさに気を使った色彩設定とカメラワーク。出来上がった料理の大胆な盛り付け……モニターから匂いがしないのが非常に残念でなりません。


 


 「シェフ 三ツ星フードトラックはじめました」と「ライ麦畑の反逆児」を一緒に語るのは理由があります。


 それはどちらも『道』を語っている映画だからです。





 僕が言う『道』というのは、求道者を指す言葉です。


 サリンジャーは物書き、カールは料理、それぞれがそれに殉じる想いで生きていました。

 そして、その『道』との向き合い方は大きく異なっています。


 

 サリンジャーは執筆に没頭し、家族とのふれあいは無く。ファンはもちろん外部との接触を断ちました。

 物書きという『道』のために、全てを切り捨てたのです。



 一方、カールは料理人。息子が厨房や仕入れを見学したいと言っても「仕事の邪魔だから」と断ってきました。

 それはサリンジャーのそれとほとんど変わりません。

 しかし、フードトラックでの旅では息子に自分達の仕事を手伝わせ、同じ料理人として扱います。一夏の思い出――それだけではなく、料理人という『道』を息子に見せることができた。これがサリンジャーと大きく違うところでした。



 

 また、「シェフ」という映画は物書きにとって学びのあるところもあります。

 それは前半のくだりです。


 自分の腕前、持ち味で勝負したい――クリエイティブな仕事をしている人間なら誰でも思うことです。

 しかし、レストランというブランド――出版社のレーベルカラー、そういったビジネスのしがらみからは逃れられません。

 だからこそ、『道』にすがりたくなることもあると思います。


 ――というわけで、「ライ麦畑の反逆児」と「シェフ」、この2つの映画を創作をやっている人は観てもらいたいんです。

 

 まずは「ライ麦畑の反逆児」、お口直しに「シェフ」――完璧なコースです。

 是非とも、ご堪能ください。



 

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