第4話 結婚しちゃダメな理由(カレン視点)

 竜族と契りを結んだ人間は寿命が延びると言い、さらにはその周りの人間も望めば寿命を延ばせると言う。

 っていうかそんな話今まで一度も聞いたことないんですけど?!


「竜族と契りを結ぶ人間の立場を考慮したことなんだろうね。もちろんこのことは門外不出のことらしい。他言すればその場で命を失う縛りもあるようだよ」


 こともなさげにレオンは言うけれど、そんな契約あっていいんだろうか。はちゃめちゃすぎて意味がわからない。けど、一番意味がわからないのはそれを良しとしているこの人間達だ。


「あなたはそれで良いわけ?」


 近くにいたレオンの側近だというゼイルに聞くと、こちらもなんら問題なさげに頷いてこう言った。


「問題ありません。私はレオン様が生きている限り、レオン様に御使いする身です」


 はぁ~、まじか〜。思わずため息が出る。


「これで君が懸念していたことは全てクリアしたよ。これで安心しただろ?ということで俺と結婚してください」


 私の両手を取ってレオンがそう言ってくる。っていうか待って、近い近い近い!今までで一番顔が近いから!!!!


 どんどん顔が熱くなってくる。ってなんで私はこんなに恥ずかしくなってるの?!

 たかが人間の男じゃない!それなのに、なのに……!



「ま、待ってよ。落ち着いて!契りと言っても男女の契りだけじゃないでしょう?えっと、ほら、師弟の契りとか、人間の間では色々な契りがあるんでしょ?」


 あまり無い知識を騒動員して何となく聞いたことのある言葉を言ってみる。そう、契りは男女間だけじゃ無いはず、よね?


 私の言葉を聞いて、レオンは片手を顎に乗せてうーんと首を捻った。


「師弟の契りという言葉は確かに聞いたことがあるけど……ここで言う契りとは意味が違うんじゃ無いかな?そもそも君と俺は師弟でも何でも無いわけだし」


 あっさり論破されてしまった。どうしよう、弁明の余地が無い。


「……そんなに俺と結婚するのが嫌?」

 レオンが不安そうにそう聞いてくる。さっきまでの自信満々な顔とは打って変わって悲壮感が漂っている。う、そんな顔しないでよ、何だか申し訳ない気持ちになるじゃない。


「別に、そういうわけじゃ無いけど……」

 ゴニョゴニョと小声で言えば、すぐにレオンの顔がパッと明るくなる。あぁ、だめだ、嘘でも嫌だって言うべきだったかしら。


「じゃあ、何が不満?何が君をそんなに足踏みさせてるの?教えてよ」

 じっと美しいサファイア色の瞳で見つめられると何も言えなくなってしまう。うぅ、レオンてばかなり端正な顔立ちをしているのよね。実は結構好みの顔だったりするし……。


 あ〜ダメダメ!そんなこと考えてたらまた顔が熱くなってきちゃう。なぜか解らないけど鼓動もいつもより早くなってるし。困ったな、この状況どうしたらいいのかわからない。


 そもそも懸念は二つともクリアしてるわけだし、別にレオンのことは嫌いではないし、というか顔も性格も結構タイプだし。国のために自分を犠牲にするなんて馬鹿げてると思ってたけど、でも国を思う気持ちは王子としてとても素晴らしいことだとも思う。なかなかできることじゃ無いわよね。そういうところは何だかかっこいいなとすら思えて……。



 ……あれ?結婚しちゃダメな理由って何?




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