メリーさんの色々

世羅

届かない感謝

プロローグ


 目が覚めた時、私は薄暗いところにいた。ここは何処?寒い…。

あ…そっか…。私、捨てられたんだ…。でも…仕方ないよね。あの人は十年間、大事に大事に私を扱ってくれた。でも私はモノ。いつかは薄汚れた気味の悪い人形になってしまうもの。あの人は悪くない…。


 私はずっとそこで楽しかった頃の思い出に浸っていた。でも、急に怖くなった。このままここにいたらどうなるんだろう。消えるのだろうか。ゴミと一緒に押し潰されてしまうのだろうか。嫌だ。死にたくない。人形が意思をもっただけの私。それでもこうして思考している。だったら私は”生きている”と言って良いはずだ。でも生きてどうする。答えは一つだ。


”彼女に感謝を伝えたい”


 することは一つ。あなたの居場所を探し出して、あなたにお礼を伝える。それまで私は絶対に死んでなんかやらない。

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メリーさんの色々 世羅 @towanante

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