第16話 傾国の美少女

 その少女と再会したのはだいぶ後のことであった。 


その少女は陽葵といい、もぐらホールディングスの総裁だという。

その財力ざいりょくとレアメタル採掘力さいくつりょくをフル動員どういんしアダマンタイトやミスリル、オリハルコン等の希少素材きしょうそざいを独占、実物大フィギュアのキラキラ装飾そうしょくをグエンに依頼したのである。


 グエンはまたとない、自分の最高峰さいこうほうの技術を注ぎ込める、それも費用に糸目をつけないという。


 「気に入った!」


 陽葵の用意した山のような希少素材きしょうそざいの山と豊富な資金。


 それは数百年忘れていたグエンの意欲に火をつけた。

 

 陽葵の生成した72色フルカラー1/1実物大フィギュア12柱のもふもふはグエンのものに持ち込まれ、贅沢ぜいたくキラキラ装備を装着されることになる。

 偶然にもグエンが1000年かけて設計したドラゴンキラー装備は装飾品としても美しかった。グエンはこの話に乗っかり、設計図だけだったドラゴンキラー武具を現実のものにしてしまったのである。

 おかげで12カ国のフローラル連邦国の連合軍れんごうぐんと第13帝国軍は武器や防具などの素材が欠乏し、戦争準備に深刻な支障が発生して大規模な衝突しょうとつは当面の間無期限延期むきげんえんきとなってしまうことなどグエンには知る由もなかったが。


 

 陽葵は自分の最高峰さいこうほうのもふもふ愛を実現するための私利私欲しりしよくの結果であったのだが、それもグエンの知るところではなかった。


 もちろんもぐらホールディングスの内部でも財閥の私物化を批判する声が高まるが、貴族である男爵令嬢陽葵に面と向かって諌めるいさめることのできるものなどいない。

 


 おそらく数千億ディナール、いや1兆ディナールを超えるかもしれない陽葵の道楽どうらくはこうしてエスカレートしていった。

 このもふもふラウンズたちが一体何万人何十万人の人を胸キュン殺むねきゅんさつし、どれくらいの被害者が出るのか見当もつかない。


 「うわー!実物大フィギュアむっちゃ楽しみ〜、」


 度を超えた贅沢ぜいたくなストレス解消をはかる陽葵。


 この傾国けいこくの美少女、暴虐の陽葵ぼうぎゃくのひなの行動は全ての国家の根幹こんかんを揺るがすことになる。


 はたして。


 なお、後ほど明らかになるのだが、陽葵はコフェンのためにも可愛いキラキラ装備をグエンに依頼していた。


 その全貌ぜんぼうが明らかになるのはまた先の話で。

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