第7話 龍宮城《ドラゴンパレス》
一行は3バラリほど逃げたが
冒険者ジルベールは慎重に様子を伺った後、魔洞窟に引き返した。
冒険者として王国と冒険者ギルドに報告しなければならないからだ。
ドラゴンたちは勝手気ままに暴れる様子はなく、統率された軍隊のように一糸乱れぬアリのような行列で一路魔境の中心部に向かって進んでいた。
冒険者ジルベールはこの世の創造主、アゼリア・シーフォールドの
単なるおとぎ話だと思っていた龍宮城に今、本物のドラゴンが向かっているのである。
ジルベールはブルっと悪寒を感じ、そしてあたかも遥か古代から決められていたかのようなドラゴンの行列を目にして戦慄が走った。
この事実を一刻も早く王都に伝えなければならない。
今も魔洞窟からは何百、何千になるか見当もつかない数のドラゴンが隊列を組み魔境の中心部に向かっている。
ドラゴンパレスとは、王国の水資源の湧き出す唯一の場所であり、ドラゴンパレスを源流とするヘブンズドラゴン川を通じて王都の住人数千万人の命を繋いでいる。
知的生命体であるドラゴンがドラゴンパレスを牛耳ってしまえばもはや王国民全員が人質にされたようなもの。
たとえ強大なドラゴンであっても怯むことなく撃退しなければならない。
恐ろしい事態に直面した冒険者ジルベールはその全てを受け止めることなどできずに王都に戻ることとなる。
探検隊は命からがら王都の北門に逃げ込んだ。
ただ、探検隊の中で王都に戻らなかった人間が二人いた。
サルバドールとグエンである。
サルバドールはこの機会を逃せば次に惑星大直列がおきるのはまた50年後の話だ、とうてい自分は生きていられないだろう。
サルバドールにとっては人生最後のチャンスなのである、ドラゴンごときでおめおめ逃げ帰ることなど出来はしなかった。
グエンは単に腰が抜けていた。
「いくらなんでもドラゴンの数は無限ではあるまい、ドラゴンが全員魔洞窟から出終わったらその機を逃さず入れば良い。
小石の代わりにドラゴンが安全を証明してくれたようなものだ。」
サルバドールはもう覚悟を決めていた。
「おい、グエン、怖かったらにげてもいいぞ、俺は一人でも大丈夫だ。」
「な、なにおう!あ,お前一人残してにげ、にげ、逃げられるもんか。」
グエンは完全に腰が引けていたが、親友のサルバドールを一人で行かせることもできなかった。
二人は物陰から魔洞窟を監視し、いつ終わるともわからない、ドラゴンが無限に湧き出してくる魔洞窟、その行列が途切れるのを待った。
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