第四夜
また今夜も、あのコンビニへと向かう。
深夜を過ごすことにも、仕事にも慣れてきた。唯一慣れていないとすれば——
「徹?どうした?」
「あ、いえ…行きましょう。お願いします」
「おう」
先輩が車を走らせる。先輩は気づかないのだろうか?この車の中にいる"ナニカ"に。
いつものようにコンビニに着く。相変わらず視線は途切れない。
ナニカの正体については全く分からない。容姿は女性に近いようだが、見える姿は人間ではない。
先輩はまるで気づかないようだ。それに夜勤の前に入っている夕勤の人達も、気づいている素振りは見せていない。
日に日に存在が大きくなっているナニカ。しかし、何もしてこない。ただこちらを見続けるのだ。そして時に、こちらに言葉のようなものを呟く。
ミテイ、ル…ミテイ、ル…と。ひたすらそう呟くのだ。
「どうした徹?さっきからボーッとして」
「い、いえ…なんでもないですよ」
「?そうか?なら…いいんだけど」
……最近は、コンビニだけでなく俺の生活にまで現れるようになった。
ナニカが現れ、気づけば俺の日常はナニカに脅かされつつあった。
だから俺は、この夜勤中にそのナニカに繋がる手掛かりを見つけることにした。
具体的に何が出来るかわからないが、やれることはやろうと思う。
「じゃあ俺裏で寝てくるから、後半頼むね~」
「オッケーです」
定刻になり、先輩と入れ替わりの時間になった。客が来た時には対応するが、午前2時半なのであまり来ないだろう。
ひとまず俺は店内を散策し始めた。一通り仕事内容や在庫の保管場所は分かるため、怪しそうな場所を見ることにした。
相変わらず視線を感じる。そして場所によってはナニカが顔を出していた。
壁の横から。天井から。床から。
慣れてしまえば、どうということはない。ただ、少し気持ち悪く不気味なだけだ。
「ここ…怪しそうだな」
目をつけたのは、在庫が積まれている部分。不自然に、何かを隠すように積まれた段ボールが怪しく見えた。
少し高い場所にあるが、脚立があったのでそれを使った。幸い段ボールの中身は菓子類だったため、あまり力を使うことなく降ろせた。
段ボールを全てどかすとそこには、天井裏?に繋がる扉があった。
「…なんだ、これ……」
どうやら扉には鍵が掛かっているようだ。
だがそれよりも気になったのは、その扉の近くにはいくつもの"絵"があったということだ。
まるで、小さな子がクレヨンで描いたような絵だ。頭足人のようなものが描かれている。
「なにしてんだ」
声を掛けてきたのは、先輩だった。
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