第二夜

 違和感を感じつつ、二日目が近づく。


深夜帯は変な客が来ると聞いていたが、想像よりはマシだった。


 ただ、あの見られているような感覚……それだけが、ずっと心に引っかかっていた。




「お疲れ様~。じゃ、行くか」


「お願いします」




 気のせいだ。そう心に繰り返し言えど、何故か違和感は消えない。


 消えないどころかますますその違和感は大きくなり、やがて不安へと変異していった。


 













 コンビニに着き、仕事を始める。まだ完全に仕事を覚えたわけではないので、先輩と二人で仕事を進めていく。


 前回教わった仕事の仕方と照らし合わせながら、正しく仕事をこなしていた午前3時頃、異変が起きた。


 納品が来る前に陳列棚のフェイスアップをしていた時だ。この時は先輩と分かれて作業していた。


雑誌、カップラーメン、日用品……順番にフェイスアップしていく。


 棚の後ろから前へ……棚の後ろから前へ……棚のーー




 ガシッ






 突然、棚の後ろへと伸ばした手にナニカが掴み掛かった。凄まじい力で手を引いていく。


「ッ!!」




 驚いて思い切り引くと、まるで何も無かったかのようにスッと抜けた。


 棚の奥を見るが、何もない。




「どうした?」


「……いえ、なんでもないです」


「…?とりあえず、こっちの棚終わったから納品までのんびりしようぜ」


「はい……」




 あの、俺の手を掴んだのは一体ーー


 掴まれた手を確認すると、赤く"ヒトの手のような跡"が残っていた。















「お疲れ様でした!」


「お疲れ。どう?慣れそう?」


「今日でだいぶ慣れましたね。まあまだ宅急便とかは無理ですけど」


「宅急便は滅多に来ないから大丈夫よ。よし、帰るか」


「はい。お願いします」




 バイトが終わり、先輩の車に乗って帰る。


 その途中で、あのコンビニに抱いた違和感を質問してみた。


「あのコンビニって…なんかありました?」


「え?どゆこと?」


「いや、なんか……見られてる?感じがすると言うか……違和感があって」


「……特に感じたことないな。まあ気のせいじゃない?」


「です、よね。すみません…変な話しちゃって」


「疲れてればそんなこともあるよ。帰って沢山寝な~」




 先輩に家まで送ってもらい、マンションの自分の部屋へと帰る。




「ただいま……」




 返事はないが、家に帰れば言ってしまうセリフだ。




「おかえり」




「!?」


 突然、そんな声が後ろからした。


 当然そんなはずはない。この家には誰も待ち人など居ないはずだからだ。




 恐る恐る、後ろを振り返る。




 バッ!!


「……気のせい、か?」




 誰も居なかった。しかし、何故だろう?今も誰かに、"見られている"気がしてならないのは——。

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