第22話 ピーター・ローズアダルト13世

 話はついたって! じゃあ、特許を買ったのか?」

 ローズアダルト13世が慌てて訊く。

「ああ、そのとおり。買ったよ。なっ、ジュリー博士、まだ契約書は交わしてないけどね」

 ラッキースター7世は、そう言うとジュリーを見た。

 ジュリーは軽く頷く。

「いったい、いくらで買ったんだ」

「3億だよ」

「3億だと、安すぎるじゃないか。うちは、1000億出す。契約書交わしてないなら今からでも遅くはない。考え直してくれないか、ジュリー博士」

 ローズアダルト13世は必死だ。これをラッキースターに取られたら、ローズアダルト財閥の将来も危ういことをよく承知している。さすがに、ローズアダルト家希望の星と讃えられるだけのことはある。

「おい、1000億って凄いじゃないか。この旦那が言うように、今からでも遅くはない。ジュリー、考え直さないか。無理して気取ることはないぜ。俺の取り分1パーセントとしても10億円だ。焼き鳥何回行けるんだよ

 ジュリーが渡辺のの耳元で囁く。

「1000億てのは、1000億ドルのこと、つまり、1ドル150円として、15兆円てとこね。あんたの取り分は1%だから1500億円よ。あんたが扱える金額じゃないわ。焼き鳥だったら、1億5千万円の1%、150万円もあれば十分よ。毎日通って三年は心配ないわ」


「いいいいい・・せせせせせ・・んんん・・おおお・・・くくく・・・」


 渡辺は気を失って後ろに倒れそうになった。カレンがかろうじて支えた。

「カレン、無理しなくっていいわよ」

「はーい」

 カレンが手を放すと、そのまま仰向けに倒れて口から泡を吹いている。確かに、ジュリーの言う通り、金額を聞いただけで気を失うような奴に扱えるわけはない

「慌てなくてもいいぜ、ローズアダルトの若いの。特許は格安で譲ってもらったが、特許は独占しないってのが条件だ」

 ラッキースター7世は、そう言うと、片目をつむってウィンクした。

「どういうことだ?」

「要するに、あんたも自由に使っていいってことだよ」

「…………」

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