第21話 リトル・サンの特許権
しばらくして、スバルサンバーは中庭に戻ってきた。
「どうでした、楽しんでいただけましたか」
ジュリーが聞く。
「なんか、まだ実感がないよ。夢を見ているようだ」
「夢ではございませんよ」
「ああ、分かってるよ」
ラッキースター7世は、そう言いながらも、これがラッキースター財閥の情報網に引っ掛かっていないという事は、このワープシステムを政府の完全管理下に置いているという事なのだろうと冷静に分析していた。そして、その措置は正しいとも判断した。この情報が漏れれば、世界は大混乱になる。ましてや、システムの設計図が明らかにされたりしたら、これを武器に戦争を仕掛けるような
“ジョンの奴、たまには、まともな事もしやがる”
ラッキースター7世は、かつての相棒、元大統領のジョン・F・ボキャナンを久しぶりに
「パーティーの準備ができました。そろそろ皆様方もおいでになる頃です。旦那様、奥様、お迎えの準備をお願いします」
メイドの一人がやって来て告げた。
「はい、分かったわ、そろそろ時刻ね」
パティー夫人が返事をした時だった。中庭に緑のプラズマが突然現れた。
そして、プラズマが消えた時、二人の人物がそこに立っていた。そして、すぐにプラズマとともにまた二人現れた。
「ハロー、皆さん、お元気そうで何よりです」
声の主は、ディック・スモーラー・ジュニアだった。元大統領のジョン・F・ボキャナンともう一人の男、それにディックの秘書らしい東洋系の女も一緒だ。このもう一人の男は、ラッキースター財閥と世界を二分するローズアダルト財閥の若き当主ローズアダルト13世だ。
「ディック、私たちが何処に居るか知ってて知らんぷりしてたわね。今頃、何がハローよ。逃げるの大変だったんだから」
ジュリーは怒っている。
「そうだそうだ。中国工作員、
渡辺も怒っている。
ディックの秘書の東洋系の女の顔が一瞬引きつった。渡辺もジュリーも気が付いていない。女は、完全に整形が施された元工作員林香琳。ディックは自分好みの顔にして秘書兼愛人として雇ったのだ。スケベ男のやりそうなことだ。だが、カレンの目だけは誤魔化せてはいない。
「いや、GPSが故障してまして、やっと回復したところなんでございますよ。不手際は謝ります。申し訳ございませんでした」
ディックは言い訳をした。嘘ではなさそうだ。
「やあ、ジョンにディック、それに、ローズアダルト13世まで、ワイフの誕生日にお越しくださるとは光栄ですな」
そう言うと、ラッキースター7世は三人に握手を求めた。
「そうか、今日はパティ―の誕生日だったのか。それはおめでとう。それにしてもジョン、我々の登場に驚かないのは、ローズアダルト財閥の情報網は、すでにワープシステムの存在を把握したと見ていいのかな?」
ラッキースター7世は、握手をしながら聞いた。
「ラッキースター財閥の情報網にはワープシステムの存在は無かったな。つい先ほど分かっただけだ。いや、驚いたのなんの、これは秘密にしとかなきゃだめだな。だが、貴様、ローズアダルトだけには知らせたか、相変わらず半端なことしやがる。しかし、なんだ、パティ―の誕生パーティーに来てくれたんじゃなかったのか」
「すまない、忘れてたよ。今日は他の用でなんだ」
ジョン・F・ボキャナンは、少々ばつが悪そうだ。
「分かってるよ。ずばり、リトル・サンの事だろう。すまないが話はすでについたよ。ちょっと遅かったな」
ラッキースター7世は、そう言うとにやりと笑った。
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