第15話 グランドキャニオン
「キャーーー、空よ、空の上よ、落ちる~~~~~、また地上セット忘れたんでしょう!! 早くワープよ、ワープ!」
ジュリーが叫ぶ。
確かに窓の外には青空しか見えない。
「でも、落ちてなんかいないわよ」
カレンが落ち着いた声で云う。
「地上セットは確かにしたんだがな」
渡辺は、そう言って窓の外を見渡した。
「分かった。ここは断崖絶壁の上の岩場だぜ」
「断崖絶壁って、なによ、よくもまぁよりによって、あんたたち、よく落ち着いていられるわね」
ジュリーは苛立っている。やっとこさ鬼六の手から逃げられたと思ったら、今度は断崖絶壁なのだから苛立つのも当然と言えば当然である。
「此処、教科書に出てたよ。グランドキャニオンじゃないかな」
カレンが、外を見ながら云った。
「グランドキャニオンって……、何処でもいいから早くどうにかして!」
「また充電が必要だから、しばらく待ってくれ。いきなりグランドキャニオンじゃ、リトル・サンでも充電は必要だ」
「あたしね高いとこ苦手なのよ。もう~~~」
ジュリーのボヤキが続く。
「ほら、あそこ、岩にヒビが入ってるよ」
カレンが、リアガラスの向こうを指さしながら云った。
「何だって」
「ほら、あそこ」
確かにそこには岩を横切って走る割れ目が見て取れた。
「やばいわよ」
「もともと弱い岩場だったところに、この車が突然乗っかったんでヒビが入ったんだろう。でも、心配しなくていいぜ。岩場が早々簡単に崩れたりしないよ」
「あっ! ちょっと広がったよ」
カレンが無邪気に云う。
「心配した方が良いかもしれんな」
渡辺が広がった日々を見ながら云った時だった。ヒビと車との間に緑のプラズマが現れた。
緑のプラズマが徐々に晴れてきた。其処には、四人の人物が現れた。
「あら、ボキャナン元大統領、ディックさんも」
「しばらくのご無沙汰でした。やっと、あなたたちを捕まえることができました。今まで何処にいらっしゃったのですか」
ディックが・愛想笑いをしながら返事をする。
「で……、そこのお二人は?」
ジュリーが訊ねた時だった。
地面が揺れた。不気味が音もする。
「あっ! ヒビが!」
カレンが声を上げた。
ヒビが大きく裂け始めていた。砂埃も立っている。一度に四人分の体重が加わったため、ヒビの部分に大きな負荷が加わったのだ。
「今回は、また、ビジネスの話でやって来た訳でございまして……」
ディックが手もみをしながら近づいてくる。
「ダメ、ダメよダメダメ、動いちゃダメ!」
ジュリーが必死で声をかける。
その時だった。遂に音とともにヒビが裂け地盤が崩れた。スバルサンバー・トランスポーターは、コロラド河の谷底に吸い込まれていった。ボキャナン元大統領と四名も続いて落ちて行った。
「ギャ~~~~~~~~~」
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