第14話 核爆発

 その時、鬼六の声がまた響いた。

「あと1分」

 ジュリーと渡辺はあわてて箱バンに飛び乗った。

「クソー、臨界には達したが、まだ電圧不足だ。あと5~6分はかかるな」

 渡辺は電圧計を見ながら焦っている。

 その時、

「踏み込め!」

 鬼六の号令がかかった。

 ガレージのシャッターがこじ開けられ、何人もの捜査員がなだれ込んできた。

「まだなの、早く」

 ジュリーが叫ぶ。

「おじさん、この車に爆弾しかけたなんてウソ言ったら」

 カレンが後ろの席からいたずらぽく言った。

「えらい、それで時間稼ぎだ。カレン、でかした。弟子にしてやるぞ」

「いやよ」

 なだれ込んできた捜査員は、あっという間に車を取り巻いた。捜査員の後方からゆっくりと鬼六が出て来た。刀を肩に担いでいる。刃紋がサーチライトを反射して白く不気味に光る。

 その時、渡辺は車の窓を開けて叫んだ。


「やいやいやいやい、てめーら、耳かっぽじってよーく聞きやがれ。この車には、小型核爆弾が仕掛けられてんだ。これ以上近づいたら、てめーら、車もろとも木端微こっぱみじんだ塵の地獄往きだぜ。分かったか、このすっとこどっこいのべらぼうめ」


 取り囲んでいた捜査員たちが後ずさりをする。

「やれやれ、今度は遠山の金さんかい」

 ジュリーがぼやく。

そのまま、数分間にらみ合いが続いた。

「張ったりだ、張ったりだ、爆弾なんかしかけてないぞ、かかれー」

 鬼六の声とともに、捜査員たちが輪を狭め始めたき時だった。三人の乗った箱バンは緑のプラズマに包まれ始めた。プラズマはだんだん濃くなり七色の閃光が交差する。


「核爆発だ!」


 誰かが叫んだ。

 捜査員たちは一斉に蜘蛛くものこの子を散らすように逃げ始めた。鬼六は逃げる捜査員たちに踏み倒され、その体の上を何人もが走った。鬼六はぼろ布のように伸びてしまった。

 箱バンは、緑のプラズマが消えると、もうそこにはいなかった。

 ガレージの外では、大パニックが起きていた。取り囲んだ数千人の捜査員たちが雪崩なだれを打ってわれ先に逃げている。周囲の住民も巻き込んで、翌日の明け方までパニックは続いた。 

  

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