第8話 転送装置で危機脱出
テレビを見入っていた運転手たちが騒ぎ出した。
「おい、東北自動車道を北に向かってだってよ」
「俺たちと同じじゃねぇか。近くにいるんじゃないか」
「そうだな。子連れの男と外人女といや、さっき、そこでうどん食ってた・・・」
運転手たちは、一斉に振り返った。
三人は、忍び足で食堂の外に出ようとしている。
「おい、ちょっと待て」
後ろから声がかかる。
「逃げろ」
三人は一斉に走り始めた。運転手たちが追いかけてくる。一億五千万円とプラス150万円だ。みんな必死だ。迫力が違う。
とにもかくにも箱バンに飛び乗りサービスエリアから出た。だが、ほっとしたのもつかの間、数台のトラックが追いかけて来た。
「もっとスピード出ないの。追いついてきたわよ」
「これがフルだよ」
アクセルを全開にしても110キロが限界だ。二十年落ちの軽の箱バンなのだから仕方がない。
「ダメ、追いつかれたわ」
トラックは、前後左右を取り囲んでいる。もはや袋の鼠だ。
「早く、ワープしなさいよ」
ジュリーは叫ぶ。
「いや、充電が十分じゃないかもしれんのだ。電池のプリウスから早くリトル・サンに換えとくべきだったな」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。遠くへワープする訳じゃなし」
「それもそうだな」
渡辺は天井の装置をセットし始めた。
「いくぞ」
スバルサンバーは緑のプラズマに包まれ、そして消えた。
再び現れた所は、あたりが白い霧のようなものに包まれていた。
「此処どこよ?」
「慌ててたんでよく分からん」
心なしか身体がふわふわする。
「ママ、見晴らしいいよ」
カレンが外を見ながら言う。
白い霧が晴れてきたのだ。
「なによ、ここ、空の上よ。落ちているんだわ」
白い霧は雲の中にだったのだ。
「しまった。地上セットを忘れた」
どこへワープしても、地上にランディングできるようにする装置が付いているのだが、慌てていたのでセットを忘れてしまったのだ。
ものすごいスピードで落下している。車の中の三人は宇宙遊泳を始めた。
「早く、どこかにワープしなさいよ」
「分かってるよ」
渡辺は天井に張り付いた状態で何とかワープ装置を操作している。
「ダメ、ぶつかる、ギャーーーー」
ジュリーの目の前に地面が大きく広がった。
次の瞬間、三人を乗せた車は広い道路を走っていた。
~間に合った~
三人の顔は恐怖に凍り付いている。
「まさに、九死に一生だな」
と言った瞬間、前から車が突っ込んで来た。
慌ててハンドルを切った。間一髪だった。
「なんて奴だ、スピード違反にも程がある」
と言った瞬間、また、数台が突っ込んできた。
何とかかわし切ったが、またやって来る。
「高速道路逆走してるんじゃないのかな」
カレンが気が付いた。
「そうよ、早くワープよ。このままじゃ衝突するの時間の問題よ」
渡辺は言われるまでもなく、必死で天井の装置をセットしている。前は見ていない。
大型トラックが目前に迫ってきた。
「ああー、ダメー、来たーーーー」
ジュリーとカレンが叫ぶ。
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